最近ではインナーチャイルドという言葉をよく耳にするのでご存知の方も多いと思います。
インナーチャイルドとは生後3ヶ月くらいから高校生くらいまでの間にできた満たされなかった欲求と傷ついた経験によって形成される心の傷のことです。
正直、私が最初にこの言葉を聞いた時には「私にはインナーチャイルドなんてない」と思ってしまいました。
なぜなら、特に親から虐待された経験もなかったですし(むしろ愛されて育ったと思っていました)、学校でいじめに合うようなこともなかったからです。
しかしその後、自分にはそこそこたくさんのインナーチャイルドがあることが分かりました。
今回は親子関係を通してこの「隠れインナーチャイルド」を作る観念とその癒し方をご紹介します。
1.隠れインナーチャイルドを作る観念と癒し方
インナーチャイルドの原因は様々です。
前述したように、インナーチャイルドは「満たされなかった欲求と傷ついた経験」によるもので客観的事実ではなく本人がどう感じたかという主観的事実によるところが大きいからです。
例えば、子供のあなたが何か失敗した時に親は可愛いと思って「バカねぇ」と言っただけなのに、あなたが「親から否定された」と捉えたらインナーチャイルドになり得ます。
つまり、何でもインナーチャイルドになる可能性はあるのです。
しかし、そこにはインナーチャイルドを作りやすい観念があるようです。
そういった観念があると他の人から見たら大したことがない事象でも本人にとっては重大な心の傷を作る原因になってしまいます。
余計な観念があることでどうでもいいことを大袈裟に問題視してしまい隠れインナーチャイルドはできてしまうのです。
①親子関係で特に問題がなかったという観念
この世の中には色々な人達が一緒に生活しています。
社会で暮らす以上、人と関わっていくことは避けられません。
人間関係では良いこともあれば、当然、意見や価値観の違いから衝突も起こります。
表面的には衝突していなくても苦手な人やちょっと嫌いな人がいるのが普通です。
親子関係も同じです。
いくら良好な親子関係でも24時間、365日いつも良い関係でいることの方が難しいです。
それが親の保護の元にいる子供時代なら尚更です。
例えば、こんな体験はありませんか?
・大好きなテレビ番組を見ていたら「夕飯の時間だからテレビを消しなさい」と言われた。
・学校で面白いことがあったので親に話したら聞き流された。
・「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」と我慢を強いられた。
などなど。
こうした一見大したことがない経験や体験は少し時間が経つとすぐに記憶から消えてしまうので知らない間に積み重なり隠れインナーチャイルドの原因になりやすいのです。
しかも衝撃的な体験ではないので全般的に「私は親子関係では特に問題がない」という認識になってしまいます。
この観念からできたインナーチャイルドを癒すには、まず、自分の親子関係を疑ってみることです。
すると長い間感じないようにしていた親に対するネガティブな感情が沸き上がってきます。
その感情を素直に感じてみましょう。
感情をきちんと感じてあげるだけでもかなり心が軽くなり、隠れインナーチャイルドが癒される方向に進んでいきます。
②親は正しいという観念
親がきちんとした人であればあるほど「親は正しい」という観念になりやすいようです。
更に、親の言うことを聞いていたら物事がスムーズに進むなどの体験が重なれば重なるほどその観念は強化されます。
親がどんなにきちんとした人であっても、それはあくまで親の考え方です。
大切なのはそれがあなた自身にとって正しいかどうかです。
あなたにとって正しくないことであれば不一致感を感じて心がモヤモヤしてきます。
しかし、表面的にはスムーズに進んでいるので否定の仕様がなく親の言うことに従い続けているとやがて隠れインナーチャイルドになってしまいます。
これが俗に言う「親の敷いたレールの上を歩く」という状態です。
この観念を覆すには敢えて親から言われたことと真逆のことをしてみるのが有効です。
しかし、これを実行するには注意が必要です。
なぜなら、あなたの中には今まで親の言うことを聞いていたから正しく進んでこられたという観念が出来上がっているので、真逆のことをして失敗したら逆にその観念を強化してしまう可能性があるからです。
まずは差支えのない範囲から始めていくといいでしょう。
③親を批判してはいけないという観念
どの年代にも多かれ少なかれ親を批判してはいけないという観念はあるのかもしれません。
それは学校で「お父さんやお母さんを大切にしましょう」と教育されるからだと思います。
もちろん、この教育自体は悪いことではありません。
しかし、親も人間なので間違えることもありますし、ちょっと悪いことだってするかもしれません。
そんな時、小さい子供がそれを指摘すると「親に向かって口答えするんじゃないの!」と言われたことはありませんか?
私の家では小さい頃はその風潮がありました。
親が触れて欲しくない事を子供が指摘すると「親に向かって~するんじゃないの!」「大人の事に子供が首を突っ込むんじゃないの!」と言われたことが多々ありました。
子供にとっては親が絶対的な存在ですから、こうした体験が積み重なれば親を批判してはいけないという観念になってしまいます。
そして、親が間違っていると思っていても何も言えなくなってしまいます。
この観念の強い人は親と対等な立ち位置で話すことを意識すると良いと思います。
真向から親を批判するのではなく、親の意見と同じレベルで自分の意見を言うように意識するのです。
実は、対等な立ち位置はあなただけではなく親にとっても一番楽な状態なのです。
人間関係をシーソーに例えるならちょうど真ん中でバランスが取れている状態なので、親も自然体で心が開きやすくなります。
最初はお互いに違和感を持つかもしれませんが、少しずつ対等な立ち位置で話す時間を増やしていくことで「親を批判してはいけない」という観念が緩み、それが原因でできたインナーチャイルドも解消されやすくなってくると思います。
④日本人特有の自己犠牲の精神
他人のために自分を犠牲にするという話は美談になりやすいようです。
特に日本ではその傾向があり、それがインナーチャイルドを作る原因にもなっているようです。
私が子供のころの母親の口癖が「私が我慢すれば」でした。
小さい頃はお母さんが我慢してくれているのだから感謝しなければと思いましたが、成長するにつれて腹が立つようになってきました(笑)
高校生の時、家族で食事に出かけることになって何を食べに行くか散々話し合ったあげくにあるレストランに行くことが決まりました。
さあ、美味しいものを食べに行こう!と出かけようとした直前に母がこう言いました。
「私はそれはあまり好きじゃないけど皆が食べたいならいいわ。私さえ我慢すれば」
この時ばかりは弟達と一緒にブチ切れたのを覚えています(笑)
それぞれ食べたいものを話し合ったはずの時間が全く無駄になったし、「好きじゃない」という言葉を聞いてしまったのでそのレストランに行く楽しみが激減してしまったのです。
本当の自己犠牲とは、我慢している感覚がなく心から人のためになることしている時に結果的に周りからはそう見える状態のことです。
我慢強い日本人の社会では日々生活しているだけで我慢を強いられているかもしれません。
家庭や生活の中で我慢することでできたインナーチャイルドを癒す方法はシンプルです。
ワガママになればいいのです。
ワガママというと自分勝手という良くないイメージがあるかもしれませんが、ワガママと自分勝手は違います。
自分勝手は、他人のことを考えず自己都合だけで発言したり行動したりすることです。
ワガママは、文字通り「私のありのまま」という意味です。
本当にワガママな人というのは自然体で自分のやりたいことを素直に言ったり行動できる人なので周りの人達も楽しくさせます。
最近、今まで積み重ねてきた我慢が飽和状態になった母から相談を受けることが増えてきました。
そんな時には必ずこう言うようにしています。
「家族や他人の心配はもうしなくていいから、もっとワガママになって」
2.隠れインナーチャイルドは宝探しゲームのようなもの
今まで当たり前だったことがインナーチャイルドという心の傷を作っていたという事実を知ると最初はとてもショックを受けます。
その原因を作った両親を恨むこともあります。
しかし、ほんの少しの勇気を出してインナーチャイルドと向き合って乗り越えた時、今まで気づかなかった自分の長所や才能が見つかることが多いのです。
私も自分が隠れインナーチャイルドであることを知った時は落ち込みましたが、それから少しずつインナーチャイルドを解消していくことで素晴らしいギフトをたくさん受け取ってきました。
それはまるで親が私のために人生のあちこちに隠してくれた宝物を探す楽しいゲームをしているようです。
皆さんもぜひゲーム感覚でインナーチャイルドと遊んでみてください。