人は、どのような方法で対処するにしても、困難な境遇や立場に追い込まれると、恐れ、嫌がり、逃げたいという心が働くものです。それらの現実と向き合うことが難しいことであることは多くの人が経験しているものでしょう。
しかし、こういった苦境を逆に利用してみるのはいかがでしょうか。人生において、困難は付きものです。その困難な出来事、いわゆる“苦境”を利用できるようになればさらに豊かな人生となるでしょう。
解決することが難しくて、苦しんだり、悩んだりさせられることを“困難”といいます。困難な出来事を利用するといわれても、実際にその渦中となるとなかなか動けないものですし、解決には時間のかかることだと思われるでしょう。
確かに時間はかかりますが、その出来事にどのくらい向き合うことができるかで、その後の人生の展開が大きく変わるのです。
この機会に、“困難な出来事”との付き合い方を少しでも掴み、それを活かす方向に持っていけるようなイメージを持っていただけると本望です。
これからの生活で「苦境を活かす」ことによって、これまで思いつかなかった楽しい生活に恵まれたり、奇跡を引き寄せるきっかけになったりする要素を含んでいますので、過去の苦境だった場面と照らし合わせながら読み進めていただければ思います。
1、自分の悩みは自分で解決
家庭内には、必ず何かしらの問題があると思います。なかには、どうしようもない無理難題にぶつかり、どのような方法で対処するにしても、困難な境遇や立場的な要素が邪魔となり、どうにも動きが取れない状態になることも少なくないでしょう。
ある人は、こうした出来事は「業」であるとか、「祟り」であるといって諦めてしまいます。また、ある人は「運命」などと決めて、考えることをやめてしまうこともあります。さらに逆らいがたい勢いで変動する時代の流れのせいにしたり、政治や天候気候のせいにしたりして自分以外の何かを責めたてる人もあるようです。
しかし、どれだけ大声で叫び続けてみても、すぐに世の中が変わることはありません。また、政治経済や教育体制に対しても一朝一夕にしてよくなることもありません。ましてや、他者の助けを求めたところで誰かが手を貸してくれるわけでもないのです。
そうなってくると、自分以外の何かに責任を求めるのではなく、「自分で解決する道を見つけるより他ない」ということになるでしょう。
2、苦境を活かす
人々の多くは、集団で生活を送っています。家庭や職場、広く地域社会や国家の一員として職業や役割を持ち、それぞれの立場で生活をしています。一人だけで生活をしている人は、存在しないと言ってもいいでしょう。
こうした集団の中で生活をしてくためには、ルールというものが存在していることを認識しておかなくてはなりません。しかし、このルールを守ることなく破ったり、無視をしたりするとどういったことが起こるでしょうか。おそらく、身近で近しい人が迷惑を被ることになるでしょう。
また、迷惑をかけていることに気づかないまま生活を続けていると、次第に周囲の人間関係にも悪い影響がではじめます。最終的には、巡り巡って自分自身の生活において、不便なことが発生することさえ出てくるようです。
世の中は、自分ひとりの想いで動いているわけではありません。そこにひしめく多くの人々の影響を受けて成立しています。
これらの想いや行動が積み重なって、我々の目の前に現象として姿をあらわすのです。
だからこそ、共同・集団生活の弊害となりうるような心を持ったり、人と調和せずに仲良くもしようとしなかったりするようでは、「そんな生活を続けていたら、いつか痛い目にあうよ」「今のうちに、方向転換したほうがいいよ」という形で、自己中心的な生活をする人に対して警告が苦境となって現象化すると言えるでしょう。
つまり、生活を送るうえで起きる“苦しいこと”や“嫌なこと”は、実のところ我々は気がつくことのできる“自然”からの警告として受け取ることができるのです。
3、喜んで、朗らかに迎える
喜ぶということは、目の前に起こったことに対して、明るい心の光を投げかけることです。出会うことのできた人に、暖かい心の潤いを注ぎかけることです。
暖かい光と豊かな潤いに触れると、たとえどんなに干からびたものでも、ピンと生き返り、伸びきってしまったものも、しっかりと引き締まってくるものです。
人の喜びに出会うと、なんとも言えない気持ちになることがあります。それは、相手の心の光と潤いに包まれるからではないでしょうか。例えば、暗い部屋にいてパッと電気がついたような感覚で、電気の明るさに包まれるようなものと言えるでしょう。だから私たちの気持ちも和み、暖かな想いになれるのです。
喜んで仕事に取り組むと、ちょうど機械に油を注したように、物事はスムーズに運ぶようになります。さらに、喜んで人を応援すると、たとえ難しいことであっても、案外軽々と片付いていくものですし、人から仕事を頼まれた時でも、明るく「ハイ」と引き受けてやってみると、手に負えないと感じていた仕事までも、案外あっさりとできてしまうことだってあるのです。
ですから、どんなに困ったことに出会っても、苦しいことに直面しても、これを明るく喜んで迎えることが大切になります。朗らかな心が全てを産み、育て、育み、伸ばし、進め、成就させてくれるのです。
4、苦境の本質
どのような方法で対処するにしても、困難な境遇や立場になったとしても、その本質は人を苦しめ、困らせ、殺すためにあるのではありません。本来の姿は、人をより善くし、一歩前進させようと向上させてくれる出来事です。
人間は、日常の生活を乱す事件などなく、何も変わらない毎日が続いていては、なかなか自分の生活を振り返ることがなく、反省する機会もなくなってしまうのではないでしょうか。
しかし、苦境に直面すると、苦しく、辛くて、痛いことが起こるから、それを避けようという心が働いて、いやでも反省する機会がやってきます。こうした時を過ごすことによって、日常の生活を振り返り、反省すべきことを改め、努力をしていくという流れになります。
「苦境の本質」は、このように、不自然な心遣いで間違った生活を送っている時に現れる警告として受け止めることができるのではないでしょうか。
「このまま進むと、とんでもないことになるぞ」
「このまま行くと、どん底に落ちてしまうぞ」
というような警告として受け取り、これまでの生活を振り返ったなかにある反省点を改善し、歩き出すことができる分岐点としてみることができます。
そうして、その改善点を改善した結果、苦しめられていた出来事の“根本原因”が取り除かれるので、苦境は自然と消え去ります。当然の結果と言えるでしょう。
さらに、私たちは苦境を乗り越えたことで、人間的にも成長します。なぜなら、苦しい出来事から学ぶことはもちろん、これを契機に新しいチャンスを掴みとる可能性もあるからです。
私たちの日常には、必ずと言っていいほど苦境といえる場面が多くあります。そうした場面場面にいちいち嘆くよりも、「苦境は私たちを成長させてくれている」と見方をかえてみてはいかがでしょう。その発想の転換ができた時、必ず新しい発見をする機会がやってくることでしょう。
5、苦境突破の策
1)今が最高と意識する。
常に今いるところを、最上であると意識しましょう。困難な出来事に出会ったら「…仕方がない」と諦めそうになりますが、こうした考え方を捨てることから取り組みましょう。そして、いつでもどこでも「仕方はある」と意識し直して、様々な選択肢を持ってみはいかがでしょうか。
まずは、深呼吸をして心を落ちつかせましょう。すると次第に冷静な思考を巡らせる力が戻ってくることでしょう。
2)目の前のことに集中する。
冷静な思考を巡らせることで、いろいろな“仕方”が出てきたことでしょう。ここでは、その“いろいろな仕方”を精査していきます。細かい点にまで目を向けることで、それぞれの優先順位が明確になるはずです。
《すべてを同時に処理してしまいたい》との心が働いたりするものですが、まずは目の前にあるものの優先順位を決めて、重要度の高いものから順に、真心を込めて取り組みましょう。急ぎ、慌てることなく、ひとつずつに真心を尽くしていくことに集中していきましょう。
3)“まごころ”を尽くす。
一人一人が“まごころ”を尽くして動き出すと、同時にその“まごころ”は周囲に伝播していきます。
行動を起こした時点では、たった一人の行動かもしれません。しかし、“まごころ”を尽くした行動には、周囲の人を感動させる不思議な力が潜んでいるものです。
ただただ“まごころ”を注いだ行動を意識して、取り組んでいきましょう。
4)継続的に行動する。
「これだ!」と決意して、真心を込めた働きを継続することで、奇跡といわれるような物事も引き寄せます。ことわざに「人事を尽くして天命を待つ」といったものがありますが、“人事を尽くして”こその“天命”です。何もせずに待っていても物事は動き出しません。
「天命を信じて人事を尽くす」くらいの意識で、継続的に行動を起こし続けていきましょう。こうした取り組みが、一歩も引かないという決心の強さや覚悟を補強してくれることでしょう。
最後に
「最近の若者は根性に欠けている」という言葉をよく耳にすることがありますが、実際は“若者”に限られた言葉ではないかもしれません。人間は物事の安易な方へ走りやすいものです。端的に言ってしまえば、直面している問題から逃げようとしてしまうものと表現もできます。
人々の多くは日常の生活や仕事を通して自分自身を向上させていきたいと願っていますが、先述したような心持ちでは、自己向上にはほど遠いものとなるでしょう。今こそ、どんな困難な事象も打破していく勇気と信念を持つ時ではないでようか。
自分の人生を誰かに決められてしまったかのように、時勢や環境のせいにして、できない理由を他のものになすりつけているようでは、なかなか改善されません。
また、性格や知能、技能についてもともと生まれつきのものだから自分には適さないと決めつけ、行動も起こさないまま「無理だから」の一言で済ませてしまうようであれば、本当の意味で成功を味わったことがない人なのかもしれません。
“できない”と決めてかかる原因は人それぞれにありますが、常に難しいことに挑戦しようとする人たちには、“できない”から“できる”に心の転換を上手に行っている人たちであるのは確かです。
なにもすべてを転換させて取り組むことはありません。「5、苦境突破の策」を参考に、ひとつひとつを自分自身のペースで取り組んでみてはいかがでしょうか。
こうしたことの積み重ねによってできることを増やしていくことで、“苦境”と感じてきた物事が、いつしか喜んで迎えられるようになってくるものです。
なぜなら、喜んで苦境を活かす方向に心が転換した瞬間が、自分自身が成長をした時だからです。このような実感を得ながら、次のステップに進むための指標と捉えて、苦境を活かしてみてはいかがでしょうか。