人はそれぞれ持って生まれた善い面が必ずあります。思慮深い、親思い、親切、愛情深い等々の優れた善い面はその人物の個性といっていいでしょう。
しかし、人の個性には「クセ」という悪い面として取り扱われる部分があるのも事実です。そうした“クセ”は、積み重なることで強情になり、自分自身の行動力を鈍らせ、肉体を故障させ、人間関係を難しくしてしまう原因にもなります。
人が多く集まるグループやチーム、企業などの集団でも、人と人とのまとまりが発揮されず、伸びるべきものを伸ばすこともできない現象が起きることもあるでしょう。
冷静に考えることができれば、「非常に馬鹿げたことだ…」と考えてしまう人もいるかもしれませんが、本来の生まれたばかりの純粋な心を取り戻し、人として持っている素晴らしい個性を発揮していかれてはいかがでしょう。
今回は、人物の個性の中でも悪い方面に働いてしまう、困った“クセ”に着目して展開していきます。
1、クセの種々相
「癖」は一度取れば、見事な善い面が顔を出します。私たちを育んでいるこの世界の大自然は、非常に優れた芸術家として人間の癖の善い面と悪い面を紙一重で存在させています。さらに、心配は配慮と接し、善悪は表裏しています。
短所と長所に関しては、現れ方が違うだけで、わずかの違いで背中合わせになっています。だからこそ“クセ”は人の善い面を枯らしてしまう“虫”である以上、取り去ってしまえば、必ずより善い面が前面に現れてくるのです。
“クセ”と一口にいっても、その現れ方は様々とありますので、まずは、「肉体」「言葉」「日常生活」「性格」の4つの視点に絞って眺めてみたいと思います。
1)肉体上に現れるクセ
肉体上には、様々な癖が現れてきます。そうした癖は時として、周囲を不快にさせているものもあります。ノートの切れ端に文字や絵を描いてその場を紛らわし、キョロキョロして落ち着かない癖などは、周囲の空気をみだしかねません。
また、何かに失敗した時や言い訳をする時に「えーっと」と思わず発してみたり、「実は…」と話しながら頭を掻いたりする動作や、言ってはならないことを思わず話してしまい、誤魔化すために舌を出すことは決して快いものではないでしょう。
そして、人と話をしている時、知らず知らずのうちに貧乏ゆすりをしてしまうことや、じっとしていることが出来ずに、いつも何かをいじらずにはいられないようなことでは、いつしか自分自身の周りには、人が集まらなくなるだけでなく、助けてくれる人すらいなくなる現象を引き起こすことになってしまいます。
2)言葉の上に現れるクセ
私たちは、相手と話をする上で知らず知らずに多くの口癖を使っています。時には、癖というよりもその人の持ち味になっているものもあるでしょう。しかし、耳障りなものもあります。話の頭や途中に「いわゆる…」「いみじくも云々…」「あの…」「その…」「まあ…」「しかし…」「え〜」「あ〜」等の唸り声というものから、意味もなく繰り返される言葉には、聴くものにとって不快感を呼ぶばかりか、つられて身振り手振りも増えるので良いことはありません。口癖が多ければ多いほど、不要な音や言葉が増え、肝心な話は伝わらないようになってしまうので、口癖も大きな影響を出すといえるでしょう。
3)生活習慣に現れるクセ
代表的なものの中で“朝寝の癖”というものがあります。毎朝の出勤時に、スッキリと行動できず、「休日だから…」と気が抜けて、昼過ぎまで眠っているようでは、その癖は自分だけのものではなく、親子代々で影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。
ひどくなれば、“遅刻を繰り返す癖”というものにも繋がってしまいます。地域の集会や、仕事上の会議などに必ず遅刻してくる人がいたことはありませんか?注意すれば改善しそうに思えますが、これも生活習慣の癖といえます。そうなれば、自分自身にとって大変なことですし、新しいチャンスさえも取り逃がしてしまうことでしょう。
また、“物忘れの癖”はどうでしょうか。重要なことですら、自分にとって不都合なものは一切忘れてしまうことになります。
反対に、今更どうしようもない過去のことをいつまでもクヨクヨと胸に溜め、心を暗くしたり、責めたりしている癖もあることでしょう。
その他、“居眠りの癖”というものもあります。どこに行っても必ずといっていいほど、ウトウトしてしまう癖。この癖は周囲の人々にとってとても快くないばかりか、重要なところで必ずミスを犯してしまう恐れがあります。
テレビを見ながら居眠りをしたり、仕事中にかかわらず寝てしまったりと、日常をダラダラと過ごしてしまう癖に繋がってしまうので注意をしなければなりません。
“後始末が悪い癖”というものもあります。やることはやるのですが、最後の締めが悪いために何も片付かない状態のことです。こうした癖を持つ人の周辺は、散らかりっぱなしで収拾がつかない状態であることが多いため、欲しいものやチャンスを紙一重で取り逃がす人が多いようです。
4)性格に現れるクセ
「性格」を辞書で調べると“物の考え方・感じ方や行動によって特徴づけられる、その人独特の性質”とあります。性格にも心や考え方の癖が現れます。
良い方向に転じるものであれば、良い人間関係や成功を切り拓く力となるでしょう。しかし、ものごとを悪い方向へ導くものであれば、人間関係の悪化だけでなく何をやってもうまくいかない状況を作ってしまうことにもなるので注意が必要です。
代表されるものに「何かあるとすぐに人を責める」性格があります。これは、偉そうにふるまう人によく見られるものですが、実は、“根気がない”人や“自己卑下する”人に現れやすいものです。
一方で「何でも抱え込んでしまう」人や「先々のわからないことや過去の終わったことを心配しすぎる」人など、考えだすと色々とありますが、「偏ったものの見方をしてしまう」ことが悪影響となる特徴の共通点なのかもしれません。
2、癖を直す道
“癖”と一口に言っても、その現れ方は様々とあります。そのため、これまで展開してきた「肉体」「言葉」「日常生活」「性格」の4つの視点の他にも切り口はありますが、次は、一旦“癖”を取り払うための取り組みついて見ていきます。
そもそも、どうして癖は生じるのでしょうか。様々なことが考えられますが、そのひとつに両親や学校の教師の“押し付け”や“抑制”によって教育を受けてきた反発が影響している場合があります。
また、日常生活上でのワガママといわれるものが習慣化し、慢性化したことで“癖”となって現れることもあるでしょう。
こうした出来事を経験することで、もともと持っている“善い個性”を霞ませてしまうのです。ですから、自分自身に身についてしまった“癖”を自覚することから始めてみると良いでしょう。
まずは、その癖を取り除こうと決心することが大切になります。仮に強情な人であっても、今日1日どんなことにも「ハイっ!」と全てを引き受ける姿勢で生活してみると少なからず“癖”は取り除かれていくものです。
同時に、ひとりでも多くの人に喜んでもらおうと周囲に意識を向けて、行動することも有効でしょう。
はじめは非常に難しく感じるかもしれませんが、いざやり始めてしまえば、意外とできるものです。取り組みを継続的に行っていくことで、自分自身の心の中にある素晴らしい個性が顔を出すことでしょう。
これから、具体的な方法として“3ステップ”をご紹介します。ひとつずつ段階を踏みながら、癖を直す道を展開してみてください。
1)まず自分のクセを“正確”に自覚する。
普通の状態の人が、どのようなことであっても泥棒をしないのは、人のものを盗むことが悪いことだとはっきりと理解しているからでしょう。こうした理解ができない人や自覚の弱い人だと、自分自身が困ったり誘惑があったりする際に、フラフラと人のものを盗むようになってしまうようです。
そのため、自分自身の心の中にある“癖”がどんなに悪いのかについてハッキリと“正確”に知ることで、自然と癖は出てこないようになります。まずは、その癖を知るために、周囲の言葉に耳を傾けることから始めましょう。
①身近な人からの指摘(両親、子供、夫、妻、知人)
②自分自身の気づき(人のふり見て我がふりを直す、他人の失敗から学ぶ)
③自然などの緑に触れることで得る気づき(海、山など豊かな自然から身近な公園まで)
④他人に迷惑をかけたときの気づき(自分の失敗から学ぶ)
身についてしまった癖はこのような4つの入り口から知ることができます。
2)悪事でない限り、人の言うことは「スナオに受ける」こと
癖というのは、人がいつもそうしようとする習慣的動作や、個人的行動傾向の中で、好ましくないと受け取られるものを指しています。当人としては、相手が好ましくないと感じていることは理解することができないからこそ、人と人との交流の中で不具合が生じてしまうのです。
自分自身の経験から様々なことを判断し、行動している私たちです。表現を変えてしまえば、他者の意見を素直に聞くことができずに独断先行してしまうことも多いのではないでしょうか。
言われたことを素直にすべて「ハイっ!」と受けるべきとは言いません。ただ、明らかな悪事でない限りは、提示された内容に対して、善い悪い等の判断や評価をせずに、そのまま素直に受けてみてはどうでしょうか。
そして、これまで体験したことのないことを経験するチャンスとして、意識転換して取り組んでみましょう。
3)気づいたこと、せねばならぬと思ったらさっと気軽に実行する。
私たちの日常では、気がついたらすぐ行動して処理することを意識して生活している人も多いことでしょう。しかし、そうした中で「気がついても…後回し」にしていることはないでしょうか。
気がつくことができても、行動していかなければ変化はありません。しなければならないことは理解しているつもりでも、なかなか一歩踏み出すことができない現象には、どこかで善い悪い等の判断をしていることも多いのです。
先述した中にもあるように「そのまま素直に受けて」行動してみることが新たなチャンスの入り口となります。“気がついたことを即座に行動するクセ”を身につけるつもりで行動を起こしてみてはいかがでしょうか。
最後に
どんな人でも多少は癖があるものだという意味で“無くて七癖、有って四十八癖”といわれています。一般的には、癖は直すことはできずに、どうしようもないものだと思われているようです。だから「あの人の“癖”は死ななきゃ治らない」などといわれてしまうことがあります。
では、その癖の正体はなんでしょう。草木についた“虫”だとすれば、草木は枯れてしまうことがありますが、その虫を取り去れば草木はすくすくと育ち大きな花や緑をつけることができます。
人に置き換えても同じことが言えるのではないでしょうか。人は皆必ず善い面を持っているものです。その善い面を枯らしてしまう“虫”が、“癖”だとすれば取り去ることができると考えられないでしょうか。
自分の「クセ」害虫を取るには、先述してきた内容にあるように「ハイと受け」「スナオに引き受け」「にこやかに気づいたことを、身軽に、気軽に、行う」ことです。
日常生活では、私たちにできることはたくさんあると思います。“ハッ!”と気がついたことから行動を起こし、癖を取り去る生活に入ってみてはいかがでしょう。