- 周りの人の気持ちに敏感
- 新しい環境に自分からすぐには入れない
- 少しでも服が濡れたり砂がついたりするとすぐ着替えたがる
- 匂いや大きな音に敏感でびっくりしやすい
- 何かを選んだり決めたりするのに時間がかかる
HSC/HSP (Highly Sensitive Child/Person) =非常に敏感な子ども、と言われるお子さんは全体の20%(5人に1人)ほどいると言われます。
他のお子さんとの違いに、戸惑ってしまう、扱いにくいと感じる、イライラするなど、親の方も子どもの性質が理解できていないと、困惑したり悩んだりすることが多くなってしまいます。
(私の三番目の娘もHSCの性質がありますが、その言葉を知らなかった時には「どうしてこの子は・・」と上の子たちとは異なる言動に、よく疑問を感じていました。)
HSCは以前はよく発達障害(アスペルガー症候群、自閉症スペクトラム、ADHD)と混同されていたようですが、今は発達障害とは明らかに別のものとして知られるようになってきています。
発達障害の子どもが「社会的な事柄に対する理解が困難」であることに対して、HSCの子どもは他者への共感性が高く、社会的な理解はむしろ他の子どもより良いというのが、わかりやすい違いです。
HSC/HSP*はアメリカのエイレン・N・アーロン博士が提唱した概念で、病気や障がいではなく、とても敏感で感受性が強く、かつ繊細さを持った生まれつきの気質です。
*HSPは年齢に関係なく一般的に使われ、その中で年齢の低い子どものことを差してHSCと呼んでいます
この記事では、子どもの扱いに悩む親がHSCの特徴について理解を深め、繊細で傷つきやすい性質を持ったHSCのお子さんが、その個性を生かしてのびのびと育つために、親が気づいておきたい子育てのエッセンスについてまとめてみます。
HSC/HSPの特徴
性質1:感覚が鋭く、かすかな刺激をキャッチする
五感が鋭く、他の子が気にならないようなかすかな匂いや音、視覚でも絵や模様などの細かなディテールまでをキャッチしています。
食品に含まれる添加物などの微妙な風味を感じとって嫌がったり、着ているものの窮屈さやタグなどのチクチク、濡れたものや砂がついた気持ち悪さに我慢ができないなどの特徴が、多くのお子さんに見られます。
性質2:刺激に圧倒されて疲れやすい
同じ場所にいてもその感受性の高さから、人より「たくさんの情報」を拾ってしまうため、強い刺激にさらされるようなことがあると、普通の子ども以上に「休息」を必要とします。
(三女の場合、休日に家族で買い物に出かけた時など「早く家に帰ろう」と訴えることが多いように思います。出かけた先では楽しそうにしているのですが、いくつもの場所で用事を済まさなければならないことが続くと「早く帰りたい」を連発し始めるのです・・^^;)
たとえ同じ刺激を受けても、そこにいる他のメンバーが受け取っていない多くの情報をHSCの子は拾っているため、本人にとっては負担が大きく疲れやすいようです。
HSPが刺激を過剰に受けやすいというデータとして、ドイツの学者フリードリヒ・ゲルステンベルクによる研究があります。
この研究では、コンピューター画面にさまざまな向きのLの文字が並ぶ中に、Tの文字が紛れているかどうかを判断するという、いささか厄介な認知作業をさせて比較を行う実験がなされました。
HSPは、そうでない人に比べて短時間で正確にできましたが、作業後の疲労も強く感じていました。
引用:「ひといちばい敏感な子」エレイン・N・アーロン
性質3:高い共感力をもつ
HSCは周囲の人の感情に敏感です。
たとえ自分と関係がなくても、誰かが怒っているシーンを見るのは耐えられないほど辛いものとなってしまうようです。
また相手がどう感じているのかを敏感に察するため、兄弟間や友達との関係の中でも相手の意向に自分を合わせてしまったりすることが多かったりします。
(三女の場合は、幼稚園の頃からテレビや映画で「誰かが怒る場面」が近づくと、急いで別の部屋に逃げ込んで耳を塞ぎます。
また、親や先生に注意されたり叱られることに対しても常に不安を感じています。・・自分が強く叱られたという経験は、人生においてほとんどないにも関わらずです)
人の気持ちがわかるという性質は、スムースな人間関係を作りやすいというメリットにもなり得ますが、他の人のネガティブな感情に翻弄されてしまうしんどさも同時に持ち合わせています。
大人でも多く見られる「人の感情でしんどくなる」共感の仕組みについては、こちらの記事も参考にして下さい。
性質4:情報の処理のプロセスが深い
HSCの子は、ものごとの本質的な部分が自然とわかる鋭い洞察力に優れています。
例えば、私が考え事などをしながら子どものおしゃべりに相槌をうっているときなど、次女は自分の話に夢中になって喋り続けていますが、三女の場合は3歳ぐらいから「聞いてないでしょ」とすかさず突っ込みます^^;
HSCのお子さんは年齢の割に難しい言葉を使って大人びたことを言ったり、大人の嘘にどこかで気づきながら、空気を読んで何も言わない、ということもあるようです。
また、処理が深くなるぶん様々な可能性を考えて慎重になるため、決断したり選択することに時間がかかります。
新しい環境に慣れるのにも時間がかかるため、「引っ込み思案」「神経質」「臆病」などのレッテルを貼られてしまいがちですが、情報を処理するプロセスが人より深いという生まれ持っての性質が原因で、そうなってしまうのです。
HSCの子どもが輝ける、子育てに大切な5つのエッセンス
このような特徴を持ったHSCのお子さんの子育てにおいて、親が知っておくべき大切なことを5つのポイントにまとめておきます。
1、敏感すぎることは問題ではないことを、あなた自身が知っておく
HSCは生まれ持った個性です。たとえあなたにとって都合が悪いことが多少あったとしても(よくわかります^^)、なるべく子どものそのままの状態を認めて受け入れるようにしましょう。
それによって、子ども自身が自分を認められるようになっていきます。
ありのままの自分を肯定できることは(どんなお子さんにとってもですが)人生を生きる上で何にも変えがたい土台となります。
2、専門家の意見より、あなたの直感を大事にする
HSCについてはまだあまり知られていないため、医師や専門家に相談することで治療が必要と言われたり薬を出されることもあるかもしれません。
また学校の先生方がHSCについての理解がなく、子どもにとって無用な指摘やアドバイスを受けることもあるかもしれません。
あなた自身が子どもの性質を理解し、周囲の余計な声から子どもを守りましょう。
3、子どもに、自分と外界との境界線を持つことを教える
外界の情報を多く拾いすぎてしまう子どもにとって、「自分自身」を理解し保つことを教えることはとても重要です。
ある意味「自分本位」で良いということを教え、子どもがいつも「自分が感じていること」「自分の本音」を言葉で表現できるようサポートしましょう。
また、子どもがそう望んでいるときは「1人でいること」を見守りましょう。
敏感すぎるお子さんにとって、静かな場所で1人で過ごすことは必要なエネルギーチャージとなります。
4、学校生活や集団行動に苦労することがあることを理解しておく
HSCのお子さんが学校や幼稚園に行けなくなるケースも少なくありません。また小さなお子さんであればあるほど、その理由を明確に話せることは稀のようです。
敏感すぎるお子さんにとって自分のペースで動くことも、自分だけの場所を確保することも難しい学校などでの集団生活は、とてもしんどいものになりがちだということを知っておきましょう。
子どもが集団から離れて家で1人で過ごすことを必要としていることをまずは受け入れましょう。
その子にとって必要な充電の時間がどれだけかかるかはわからないため、不登校が続くと親の不安も大きくなりがちです。不登校が長引く場合の対処についてはこちらの記事にもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
5、何かを言い聞かせようとするより、子どもの小さな声に耳を傾ける
不登校に限らずですが、子どもに何かを言い聞かせたりアドバイスをしたくなるときは、まずは子どもの声に耳を傾けましょう。
親が自分の価値観を押し付けるのでなく、子どもが感じていることをどんなことでも受け止められる姿勢でいることで、子どもは安心して自分の本当の気持ちを話すことができます。
繊細で傷つきやすいHSCに特に必要なのは、「自分を理解して助けてくれる人がいる」と信じられることです。
まとめ
世界は素敵に成長したHSPを必要としています。慎重に考え、深く感じ、ささいなことに気づき、最終的には大局を見ることができる人材を、今ほど必要としている時代はありません。これからもっと必要となるでしょう。
でも、そうした人は、そうでない人の考えや思考、注意力の及ばない点について、声を上げ、主張していく勇気を持たなくてはなりません。
引用:「ひといちばい敏感な子」あとがきより
HSCを育てるのは大きな喜びです、と上の著者でありHSCの概念を提唱したアーロン氏は言います。
ひといちばい敏感な子ども持った親が、子どもの「繊細さ」を深く理解し、少しでも楽しんで子育てができることを願います。