年末調整と確定申告

あっという間に今年も11月になりそうです。年末調整や来年の確定申告の話題やhow to本も出版されはじめるころでしょうか。最近は働き方の多様性が進む中で確定申告をする人が増えているのかもしれません。そんな変化の中で、よく耳にする年末調整と確定申告、この意味するところと相違点をまとめてみようと思います。

(1)国の個人所得税に対する基本的な考え方

個人の所得税に関して、日本の税務行政では基本的なモデルとして、「夫がサラリーマン、妻は専業主婦、子供二人という家族」を想定しています。そのため、多くの税務や社会保険のしくみがこのパターンを想定しており、このパターンでの個人のメリットと国家としてのやりくりをバランスがとれるように日々の政治で運用をきめていると言えます。

そのため、巷にあふれる公的な情報やみんながよく知っている制度というのは上記のパターンの人むけのものが多いのです。つまり、このパターンにそぐわない状況の人は少しデメリットともとれるような条件がついていることもあります。

わかりやすい条件でいうと配偶者控除の制度でしようか。2018年度から少しこの制度も見直しがされ従来ほどのメリットがなくなりつつあるとはいえ、単身の世帯からすればメリットはあるように感じるでしょう。

このように、サラリーマン世帯を基本パターンとしているので、国としては、いかにそのマジョリティから確実に税収入をあげるかを考えています。その確実性をあげるためのものが源泉徴収制度と年末調整制度なのです。

源泉徴収制度とは、われわれ国民が給料を会社からもらう際に、あらかじめ一定の所得税を会社に預けて勤務先から国に納税する制度です。つまり、給料を支給する会社に源泉徴収する義務を負わせて、各個人に納税しないでいい代わりに、代わりに会社に納税代行をさせているのです。この仕組みに従うことは法人または給料を支払う個人の義務なのです。

国内にある法人で給料を払う必要のある者は全員もれなく、この源泉徴収の義務を負わせられています。つまり、お給料を誰かに払うさいには、必ず一定の所得税を源泉徴収という概念のもとに差し引いて残りを本人に支払う、一方で差し引いて預かったその人の税金を税務署に会社が納税するのです。これをしていないことが、税務調査で指摘されると徴収義務違反ということで、徴収していなかった分を法人等が納税させるのが現状です。

会社はあるいみ、個人と国の仲介業者のような役割を担っているのです。これだけみても、法人というのはあれこれ見えないところで責任を持たされていて、事務の負担が多いものなのです。

(2)給料と報酬

誰しも何かしらのお金を誰かから受け取ってそのお金を生活費として使っているはずです。自分でもらっているか家計を同じくする誰かがお金をもらっている場合も含みます。

ここでは税務上の取り扱いを見てみようと思います。

会社からお金をもらっているとして、実はそのお金のもらいかたには何通りかのもらい方があるのです。給料とは、税務上の呼び方では給与所得などと言われますが、その会社に勤務し会社又は派遣会社と雇用契約という契約を結んで勤務に対してもらう対価のことです。

前提は雇用契約です。書面である場合がたいていですが、場合によっては書類で残っていないこともあるのが実態でしょうか。契約の内容次第で、働く人の自由度や保証される条件が異なってきます。

つまり、正社員、契約社員、派遣社員、パート、アルバイト呼び方はさまざまですが、結局はどういう契約を会社と結んでいるかで待遇が変わるわけです。

では、報酬とは税務上で言うと何なんでしょうか。イメージの通り、給与とはちょっと異なる種類の労働に対する対価です。給与ではないければもらう労働の対価で、源泉徴収税額の計算方法等が給与とは異なるのです。個人事業主と呼ばれる人がもらう対価とも言えます。

つまり、自分でなにかビジネスや事業をしていてその内容が物を売ったりする以外のサービスの提供の場合に報酬という扱いになります。

わかり易いのが、個人で仕事をしている弁護士や税理士が会社などからもう労働対価は報酬です。デザインや翻訳、コンサルティング、コピーライターなどの仕事をして会社などから対価をもらうものを報酬と呼ばれます。

税務上、給料と報酬の一番の違いは、年末調整してくれるかどうか、です。報酬をもらっいる人は会社が年末調整という処理をしてくれません。しかし、給料をもらっている人は、会社の人事部が12月に年末調整といってその年の給料総額から正確な税金負担額を計算してくれるのです。そのため、12月はなんだかしらないけどいつもより手取りが増える人もいるのではないでしょうか。報酬をもらっている人は、年末調整がないので、確定申告をしなければいけないことになっています。

 

(3)年末調整

では、年末調整って何なのでしょうか。どこかにお勤めされて毎月給与をもらっている人は毎年11月ごろになると、会社から扶養控除申告書などの提出に関する案内をもらっているのではないのでしょうか。

所得税に関して、国は、お給料のもらい方によっていくつかの源泉徴収のパターンをつくっています。そのあてはまるパターンに従って、会社は個人の源泉徴収税額を計算しそれを差し引いて個人に手取り金額を振込処理しています。しかし、この源泉徴収税額の計算は実は概算の計算なのです。

所得税は、最終的にはどんな人でも所得が同じであれば年間の所得税の金額は同じです。つまり給与をもらっていても、報酬をもらっていても、諸条件が同じであれば年末調整と確定申告をすれば負担額は同じになるのです。

つまり、毎月会社に天引きされている税金は仮の金額なのです、それも最終的な負担額より少し多めに前払いしているケースが多いのです。それを毎年12月の給与計算において、確定した税額の計算をし直すのが年末調整です。

簡単な例を挙げると、毎月例えば、25万円の給料に対して、源泉徴収税額が3万円であったとします。年間でいうと3万円×12か月で36万円の源泉徴収税額が発生し会社に預けて納税しています。しかし、12月に生命保険控除などの計算要素を組み込んで再計算すると年間の所得税の負担が32万円となった場合、12月の給与ふりこみの際に4万円会社から返金、よく言われる還付を受けることになるのです。

年末調整は、国が国民の大多数を占めるサラリーマン、つまり給与所得者の所得税の確定作業を会社に押し付けている制度ともいえるのです。会社がこれをしてくれることで、国は確定申告をする人を一定数に抑えて、税務署が対処する件数を圧縮しているのです。会社は国の税金徴収事務を一部担っているのです。

給与をもらっている人からしても、このおかげで確定申告をしなくてもある程度正確な所得税の計算がしてもらえて還付をうけられるので国と給与所得者はwinwinなのです。この場合は会社で一手に負担をになっているので会社はwinwinにはならないのです。

(4)確定申告

では、2月ごろから世の中でなんとなく耳にする確定申告とは何なのでしょうか。これはある条件に該当する人がやらねばならない税金の申告ともいえるし、やったら税金が返ってくることもある美味しい申告ともいえるものです。

まず絶対に対象となるのが先に書いた報酬をもらっている人です。報酬をもらっている人はもらった報酬と諸経費を相殺して自分のもうけた利益を計算してその金額に応じて税金を納めなければいけません。場合によっては還付になることもありますし、納税することにもなります。これも報酬をもらうときに一定の源泉徴収税額を差し引かれているのでその差し引かれた金額とのバランスで還付になったり納税になったりするわけです。トータルでの税金の金額はかわらないのですが、期中の前払が多かったのか少なかったのかという状況次第で3月の納税還付状況がかわってくるのです。

ややこしいのが、確定申告は場合によっては給与をもらって年末調整をしていてもやらなければならない場合があることでしょうか。よく耳にすることでは、住宅を購入した1年目に住宅ローン控除をうけるために確定申告をするというものや、医療費が一定金額以上かかった場合に税金の軽減をうけるために確定申告するといった感じでしょうか。

これらはいくら年末調整をしてもらっていても確定申告をしなければメリットを得られないパターンです。あとは、不動産を所有していて給料と別に賃貸収入があったり、株式に関して所得がある場合も確定申告が必要になります。

 

(5)年末調整をしてもらってから、さらに確定申告をする

先にかいたように、給料をもらっていて会社で年末調整をしてもらったのに、さらに3月までに確定申告をする場合、なんだか二重に税金をとられたりしないのかと思う人もいるようです。

しかし、もちろんそんなことはありません。年末調整済みでかつ確定申告をする人は、会社でやってもらった年末調整の結果を反映した源泉徴収票が会社から交付されますのでその交付された源泉徴収票の内容を確定申告の申告書に転記することになっています。

したがって年末調整の結果をベースにさらに追加する要素を加味して確定申告書類を作成するのです。万が一、年末調整済みの給与所得を加味せずに確定申告するとおそらく税務署またはお住いの市町村から翌年の5月ごろに問合せが来るかと思います。理由は、会社は各税務署や地方自治体にみなさんに渡している源泉徴収票と同様の情報を提出しているので各市町村では照合作業がなされるためです。つまり、少しタイミングは遅いものの、間違いは発見される可能性が高いのです。

また、不動産所得や、事業に関する所得、株式に関する所得など複数の所得がある場合も、必ず確定申告書は1種類を作成しすべての所得を1つの確定申告書にまとめることになっています。一人の人が、この所得はこの申告書、あの所得はあっちの申告書という風にはつくりません。必ず一人1種類の申告書をお住いの税務署に提出することになります。

(6)まとめ

よくある質問で、給料以外の収入をどうあつかったらいいのかというものがあります。時代の流れとともに、給料だけの収入ではない人がずいぶん増えているのでしょう。国も副業をすすめるような時代になってきています。そうなると、国が想定している世帯のモデルもずいぶん実態と乖離がでてきているように感じています。

そのような流れの中で、ここに書いたような基本的な税務の仕組みを理解していないとうっかり納税漏れがでてしまったり、過大に納税することにもなりかねないでしょう。国が想定しているパターン以外の人が着実にふえているのです。

これは自由な時代、自分のやりようによって自分の収入を変化させやすくなった、多様性が認められているとも言えますし、昔のように会社にまかせっきりでなんだかよくわからないけれど会社がやってくれているからという立ち位置が通用しなくなっているとも言えます。

自由の対として、会社に任せているばかりではなく自分の置かれている環境に適応していくためにも、絶対必要なお金の基本的な仕組みや流れを把握していくのは、自己成長のためにも重要な要素であると思います。

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この記事を書いた人

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