どんな人にでも多かれ少なかれ「トラウマ」と呼ばれるような、過去における心の傷があるのではないでしょうか。
トラウマのきっかけとなる出来事が起きた時に、出てくる感情をその場で完全に感じることができなかった場合、その感情のエネルギーは自然な流れをせき止められた形で固着し、その人の潜在意識の領域に保存されます
潜在意識に保存された感情は、普段はその存在を忘れていることができたとしても、外的な刺激(その出来事を彷彿させる何か)によって顔を出し、心の何らかの反応や苦しい感情を永続的に生み出し続けます。
その人が心の深い部分に沈んでいる心の傷の存在を認めて、浄化する(癒す)ための適切な処理が完了するまで、本人も気づかないうちに人生に制限をかけて幸せを遠ざけるなど、願わない影響を及ぼし続けるのが、トラウマです。
トラウマを癒すには、当時感じることができずに流れを止めてしまった悲しみや怒り、悔しさや恐れ、不安などの感情のエネルギーを、もう一度健全な形で流して「解放する」プロセスが必要となります。
この記事では、自分で取り組める「トラウマを癒す」方法について、いくつかのステップに分けてご紹介します。
自分でトラウマを癒す作業を進める際には、比較的軽いものから少しずつ扱うことをお勧めします。
step1.軽く目を閉じて、自分の中心を感じる
1人になれる静かな場所を確保しましょう。
メディテーションをするように、軽く目を閉じて腹式呼吸を続けながらリラックスした状態を作ります。
外の世界に向いている意識を、自分の中心に戻していき、自分を内観しやすい状態を作ります。
色々な思考や雑念が出てくるようなら、自分の呼吸に集中してみましょう。
体のどこかに緊張が残っているのを感じたら緩めましょう。
おへその少し下にある下丹田から足を通って地球の中心へとエネルギーが循環するよう、グラウンディングを意識します。
リラックスしつつ頭から足先まで体の状態を順に感じるようにするなど、今この瞬間にある自分の状態にフォーカスします。
step2.感情が揺さぶられた時のことを思い出す
この一週間くらいの間に感情が揺れたり、何かしらストレスを感じた時のことを思い出してみましょう。
感情が強く動いたり、心が反応したり、逆に感情が出てきたのに押し込めたりやり過ごしたりしたようなことはありませんでしたか?
その時の出来事をもう一度思い出し、イメージの中で再体験してみましょう。
体験しながらそのときの「自分の体の感覚」をよく感じてみます。
イメージの中でそのときのことを再体験していく中で、何らかの感覚や感情が出てきたら次のステップに進みましょう。
step3.その時の体の感覚を感じてみる
感情が出てきたら、深い呼吸を意識し続けてなるべくリラックスした状態を保つように心がけてください。
感情とともに体の感覚が変化することを観察しながら、その変化について心の中で言語化してみましょう。
例えば
「胸が締め付けられるような感じがしている」
「血が頭に登ってきて、顔が熱くなってきた」
「手足の力が抜けていくような感じ」
などというような感じです。
物理的に起きていることを自分自身に説明するように、なるべく詳しく言語化していきます。
step4.体の感覚を、感情に分類する
感じている「体の感覚」を、言葉にできる感情に分類します。
この胸の緊張は「悲しみ」だな、この顔に感じる熱は「怒り」だな、というような感じです。
例えばわかりやすく表現しやすい感情としては、「怒り」「不安」「悲しみ」「悔しさ」「恐れ」などがあるでしょう。
また、「怒り」と「悲しみ」など、複数の感情が混じっている場合もあると思います。
うまく言葉にできないような感覚でも、例えば「自分を責める感情」など、自分なりに名前をつけてみましょう。
step5.感情の存在を認めて受け容れる
トラウマを癒すプロセスのためには、どんな感情が出てきたとしてもその存在を認めて受け容れることがとても大切です。
思考で「これは良いこと、これは悪いこと」と判断することなく、悲しみ、不安、怒り、嫉妬、恨み、後悔などどんな感情でも「自分の中にあっても良い」と自分自身に許可を出すようなイメージです。
感情の存在を否定して「ないもの」として抑圧したり感じることを避け続けていると、その影響力はかえって大きくなり、些細な刺激でも顔を出すようになったり、人生を自分が望む方向に進むことに対して、足を引っ張るようにもなっていきます。
また、ひどい場合には本人も気づかないうちに健康に害を及ぼすことになりかねません。
受け容れ難いと感じる感情ほど、意識を向け「この感情を受け容れます」と宣言してみてください。
step6.感情を感じることで流す
感情を受け入れる準備ができたら、湧き上がる感情や感覚を捉えたまま感じ続けて下さい。
古く固着した感情でも、感じようと意識することで、再び「流れ」始めることができます。その流れを止めようとしたり、再び抑えこもうとしないで、少し耐えながら感情を感じ続けてください。
体感覚で痛みや圧力、こわばりのようなものを感じるとしたら、うまく行っているサインです。
感情がうまく流れて解放に向かうと、ある程度感情を感じ続けている中で圧力がなくなる感じがあります。できればその感覚が出てくるまで続けて下さい。
このステップは無理のない範囲で、少しずつ行うことをお勧めします。
繰り返しますが、最初から大きなトラウマを扱うのではなく、比較的軽めのものからワークしつつ慣れていきましょう。
またここでは体の反応に対して抵抗しないようにしましょう。
たとえば涙が流れたら、流れるままにしておきます。
もし感情に飲み込まれて、衝動的な行動(暴れたい、叫びたいなど)に出そうになったら、一旦ストップしてください。
その場合は捉えていた感情を一旦手放し、深い呼吸でまずは自分の状態を整えましょう。(水を多めに飲むこともおすすめします。)
体に感じていた圧力がなくなり感情が軽くなったら、次のステップに進みます。
もし途中で中断した場合は、プロセスが進んだところまでは感情の浄化はできているので、失敗だった訳でなく、浄化プロセスの途中で一時停止したと考えて下さい。
その場合は日を改めて、何度かに分けて同じことを繰り返すことでプロセスは確実に進むはずです。
step7.その感情が伝えてきているメッセージに気づく
ここまでのステップで取り扱った感情が、過去の何らかの出来事に紐づいている可能性について考えてみましょう。
自分の中の古い体験の中に、似たようなストレスや痛みを感じた出来事が何かありますか?
最近感じたその感情が、もし心の深い部分に眠らせていた過去のトラウマや、すでに不要となった観念についてのメッセージをあなたに送ってきているとしたら、それはどんなものでしょうか?
もし何も出てこないようなら、当てずっぽうでもでっち上げでも構わないので(笑)、紙やパソコンに思いつくままに、その感情のルーツと思えるものを自由に箇条書きで出してみましょう。
いくつか出してみるうちに、その感情や感覚があなたに伝えようとしているメッセージをなんとなくでも掴めたら、次のステップに進みます。
step8.出てきたメッセージを書き出す
step7で捉えられた「メッセージ」を、あらためて書き出しておきましょう。
家族や友人など、信頼できる人にシェアをするのも良いかもしれません。
傷ついた出来事が起きたときに自分がどう感じたのか、それが「感じ直す」という癒しのプロセスを経てどう変化したのか、その両方を言語化しておくことで、起こった浄化や癒しのプロセスを安定させることができます。
できるようなら自分を傷つけた相手や過去の自分自身に手紙を書いたり(相手に渡す前提ではなく、自分の中でその出来事を終わらせて、浄化のプロセスを完了するために)、イメージの中で相手または過去の自分自身と和解することも、過去のトラウマを手放し前に進むために効果が望める方法です。
まとめ
この記事では自分でできるトラウマを癒す方法について、ステップごとに見てきました。
実際には、人生に大きな影響を与え続けているトラウマ、深い心の傷に向き合う場合は決して無理をせず、医師や信頼できるカウンセラーのサポートを受けることをお勧めします。
トラウマのエネルギーを解放することで、無意識に人生を縛っているものから自由になり、安心を感じながらよりリラックスして生きることができるようになっていきます。
自分の心にしっかり向きあって、ネガティブな感情の存在を認めて感じることは、辛く面倒な作業に感じることでもありますが、人生に戻ってくるリターンは思った以上に大きなものです。
過去の体験を一つ一つ掘り起こして癒し、完了させていくことで、生きる幸せや人生の真の豊かさを感じられる人生へと、確実に近づいていくことができるのです。