ジュラ紀は、三畳紀の後、約1億9960万年前から約1億4550万年前までの中生代の中心の時代を指します。
この時代は、名前から予想されるように恐竜の時代です。
『ジュラシック・パーク』という恐竜を現代によみがえらせた映画や『ジュラシック・パーク・ザ・ライト』というユニバーサルスタジオジャパンのアトラクションのおかげで何となく親しみがある感じがします。
ジュラという名前のもともとの由来は、フランス東部からスイス西部にかけて広がるジュラ山脈です。
ここに広範囲に広がっている石灰岩を主体とした堆積層が、この時代を代表するにふさわしい学術的価値を持つことからきています。
概要
ジュラ紀は、地球上の生物の半分以上が絶滅したといわれる三畳紀末の大量絶滅から始まります。
急速に起こった大気中の二酸化炭素の増加、気温の上昇や海水の酸性化という厳しい環境の中を生き延びた恐竜が繁栄していました。
この時代の地球環境に目を向ければ、一続きになっていたパンゲア超大陸という陸地が再び分裂を始めました。
大陸の間には海水が流れ込み、海水準が次第に上昇したのです。
その結果として気候も、乾燥した状態から湿度の高い熱帯気候へと変化しました。
この気候の変化は生物相をさらに豊富にし、さまざまな動物や植物が誕生することになったのです。
地形
ジュラ紀前期を通して、一続きの陸地であったパンゲア超大陸は、北と南へと分裂しました。北がローラシア大陸、南がゴンドワナ大陸です。
そして、ローラシア大陸は、後にユーラシア大陸と北アメリカ大陸に分裂していきます。
ちなみにゴンドワナ大陸は、現在のアフリカ大陸、南アメリカ大陸、インド亜大陸、南極大陸、オーストラリア大陸、アラビア半島、マダガスカル島を含んでいます。
この南北2つの大陸、ローラシア大陸とゴンドワナ大陸の間にあったのがテチス海です。
3億9000万年ほど前のデヴォン紀に古テチス海が出現し、パンゲア超大陸形成時代には内海となっていました。
それがパンゲア超大陸分裂するときに連結する形で新たなテチス海が誕生したのです。
2013年と最近になっても新たな発見がありました。
太平洋の海底に巨大なタム山塊が発見されたのです。
これは、ジュラ紀後期~白亜紀前期に形成されたと考えられています。
単体では地球最大級の火山で、日本の東方沖約1600kmの太平洋北西部に位置しています。
水深6400m付近を底面とするドーム状の作りで、面積は約30万平方キロ、頂点は水深約200mもの大きさだそうです。
ジュラ紀の動物
ジュラ紀は現在よりも暖かく、降水量も多く、湿度も高かったとされています。
そのため、動物、植物ともに種類が増え、大型化していきました。
この時代の陸上は、恐竜が多種多様な進化を遂げた恐竜全盛の時代でした。
しかし、ジュラ紀中期に食物連鎖の頂点にいたのは、恐竜ではなく、巨大なワニだったようです。
食物連鎖の頂点「ラザナ」
食物連鎖の頂点に立っていたとされるこのワニは「ラザナ」という名前で知られています。
体長は約7メートル、体重は800~1000キロもあったそうです。
2006年と比較的最近になって、アフリカのマダガスカルでイタリアの古生物学者によって発見されました。
ラザナは今でこそワニの仲間として認知されていますが、発見された当初は、ティラノサウルスに似た恐竜なのか、それともワニの仲間なのかは明らかになってはいませんでした。
それが、判明したのが2017年。
新たに化石が見つかったことで、この論争に決着がつくことになりました。
とはいえ、ラザナは現代のワニとはずいぶん違っていたようです。
その相違点の1つが、歯。
現代のワニの歯が円錐形なのに対して、ラザナの歯の表面にはティラノザウルスのようなのこぎり状の切り込みがあり、大きさも肉食恐竜の歯を上回っていました。
顎の前には、のみのような形をした門歯があり、獲物の肉を骨からそぎ取るのに役立っていたと考えられています。
そして、頭の形も今のワニとは違っていました。
現代のワニの頭部が平らであるのに対し、ラザナの頭蓋骨は奥行きがあったのです。
更には、4本の力強い脚部があり、まっすぐに伸ばして体を持ち上げることができたと推測されています。
始祖鳥 アーケオプテリクスの誕生
ジュラ紀には、「古代の翼」という意味を持つアーケオプテリクスも誕生しています。
アーケオプテリクスは、長い間、現生の鳥類の祖先と思われていました。
しかし、現在は、現生の鳥類の祖先に近いものの直接の祖先ではないと考えられています。
アーケオプテリクスの最初の化石が発見されたのが1864年。
ドイツのバイエルン州ソルンホーフェン地域のジュラ紀後期の地層です。
発見された当初は細かい羽毛の跡がはっきりとみられたことから、恐竜との関係性はないと考えられていました。
ところが、その後の発掘調査で、多くの恐竜の化石から羽毛の跡がみつかり、アーケオプテリクスと恐竜に因果関係があるとみなされるようになったのです。
アーケオプテリクスの大きさや概形はカササギに近いとされています。
その特徴はよく発達した風切羽(かざきりばね、かざきりば)のような羽です。
ちなみに、風切羽とは鳥類の翼広報に整列している一連の羽のことをいいます。
現在の鳥類に似た特徴を持っていますが、鋭い歯を備えた顎や鉤爪のある3本の指、長い尾部にある骨といった明らかな違いがあることが分かっています。
海洋生物
ジュラ紀の海に目を向けてみると、この時代にはアンモナイトやプランクトンが繁栄していました。
また、ジュラ紀に最も進化した生命は、魚類と海洋で暮らす爬虫類(魚竜、首長竜など)であるといわれるほど海の生物たちも大きな変化を遂げています。
アンモナイト
アンモナイトは、約4億2000万年前、シルル紀から存在していたとされ、見かけによらず肉食です。
比較的動きの遅いエビやカニなどの甲殻類やクラゲなどを食べていました。
世界中の海で生息していたようで、北海道の中央部もアンモナイトの一大産地として世界的に有名です。
アンモナイトは、雌雄で大きさが違っています。
同一種でも、大型の殻を持つのはメス。
オスはその3分の1ほどの大きさとされています。
メスが大きいのは、繁殖期に生殖腺が大きくなって、大量の成熟卵を持つようになるからだと考えられています。
この時代を代表する海洋生物であるアンモナイトですが、ジュラ紀の次に来る白亜紀に恐竜の絶滅とともに絶滅したといわれています。
プランクトン
遊泳能力が低く、水中に浮かんでいる生物プランクトン。
ジュラ紀の海洋表層では、石灰質の殻を持つプランクトンが繁栄し始めました。
中でもサッココーマと呼ばれるウミユリの仲間は、ジュラ紀にのみ生息していたとされています。
古くは先カンブリア時代から生息しいた放散虫も時代とともに形態を変え、示準化石としての役割を果たしています。
ジュラ紀末の放散虫は、Mirifusus dianae baileyiという「岐阜ちょうちん」のような特徴ある形と骨格構造をしています。
1977年にカリフォルニアで発見されたこの化石は、その数年後に岐阜県の飛騨高山からも発見され、日本列島の古生代から中生代の歴史が大きく書き替えられることになります。
魚類
ジュラ紀後期には、史上最大の魚類と知られる古代魚、リードシクティス・プロブレマティカスが生息していました。
以前は、体長は現存するジンベイザメをも大きく上回る最大27mあったとされていましたが、最近はもっと小さかったのではないかと考えられるようになってきました。
その巨大な体格に似あわず、性格は温厚でプランクトンや小魚、小エビなど小さな生き物を海水とともに吸い込んで食べていたとされています。
また、ジュラ紀後期~白亜紀前期にかけてギロドゥスが生息していました。
横から見るとまんまるで、体長は20cm~1m。
歯の形状から、硬い殻のある生物を捕食していたと考えられています。
他にも、シーラカンス目であるウンディナ、コエラカントゥス、リビスなどがいました。
魚竜
陸生の爬虫類から進化し、なぜかまた海へと戻ったとされる魚竜は、実に80種類以上いたとされています。
成体でも人の腕ほどのものから体長15mにも及ぶものまで、その大きさはさまざまでした。
これら魚竜が最も栄えたのがジュラ紀。
次の白亜紀になると水棲捕食者の頂点の地位を首長竜やモササウルス類に明け渡すことになります。
姿形や大きさがハンドウイルカに似ているとされるイクチオサウルスは、卵胎生であったことが分かっています。
卵を産み、それを胎内で孵化させてから海中へと生み出すのでしていたのです。
首長竜
三畳紀に出現したとされる首長竜は、大量絶滅の危機を生き延び、ジュラ紀に最も栄えました。
首長竜は三畳紀にすでに内温性を獲得しており、それがこの危機を生き延びられた理由ではないかと考えられています。
というのも、首長竜の骨組織には密に放射状に発達した血管の痕跡が見られていたのです。
これは、哺乳類や鳥類など成長速度の速い動物にみられる特徴であり、成長速度の速さは体内発生した熱により体温を調整できる内温性動物だけにみられています。
三畳紀後期からジュラ紀前期に生息していたとされるプレシオサウルスなどが首長竜にあたります。
ジュラ紀の植物
ジュラ紀は、ソテツの時代と呼ばれています。
イチョウ、ソテツなどの裸子植物が大きく繁栄し、それまで植物がなかった内陸部まで生育域を広げました。
ジュラ紀後半、約1億4000万年前に、最初の被子植物(子房の中に胚珠がある植物)とされるアルカエフルクトゥスが現れました。
ただ、2015年になってモントセキア・ビダリがこれよりもさらに古い可能性があることが分かりました。
まとめ
すでに絶滅した生物たちが全盛をふるっていた時代であるジュラ紀についてまとめてみました。
現在では、その生物たちの様子は化石からしか垣間見ることはできません。
だからこそ、私たちの想像力をかきたててくれるのかもしれません。