何か問題が起こった時、アダルトチルドレンは「自分のせいだ」「自分が悪かったからだ」と過剰に自分を責めてしまいがちです。
また逆に自分の落ち度などは一切見ることなく、「あの人が悪い」「この状況が悪い」と過剰に人や状況ばかりを責めてしまう場合もあります。
どちらも過剰になればなるほど、事態が解決しにくくなったり、周りの人と上手くいかなくなりがちです。
今回はアダルトチルドレンが陥りやすい「自責過剰」「他責過剰」についてみていきましょう。
1.「自責過剰」「他責過剰」とは
自責(self condemnation)とは「自分で自分の過ちをとがめること。また自分に責任があると考えること。」です。
他責(to other condemnation)とは「自分以外の人や状況に責任があるとして、とがめること。自分以外の人や状況に責任があると考えること。」です。
この記事では過剰に自分を責めてしまうことを「自責過剰」。
過剰に他人を責めてしまうことを「他責過剰」としています。
アダルトチルドレンは自責過剰の方が強いように思われがちですが、そうとも限りません。
仕事などで自分と同等か立場の強い人に対しては「自責過剰」になるが、自分より力が無い(と思った)配偶者や恋人、自分の子どもに対しては「他責過剰」となる場合もあります。
また逆に普段から「他責過剰」が極端に強い人もいます。
こういった人は自分自身の問題をあまり考えないため、自覚がないことも多いですが実はアダルトチルドレンである可能性は結構高いのです。
2.自責過剰・他責過剰の影響
自責過剰・他責過剰はどんな影響があるのか、少し詳しくみていきましょう。
感情に飲み込まれやすい
自責過剰・他責過剰、その大きな特徴は実は強い感情を伴いやすいことです。
自分自身、または他人・状況に対する顕在的、もしくは潜在的に強い怒り・悲しみなどが付随することが多く、その感情に飲み込まれやすくなっています。
また大きな感情を伴うため、疲弊しやすくなります。
目の前の状況が見えにくい
問題が起こった時、本人が思っている以上に感情的になり、冷静でいられないことが多い。
そのため、目の前の状況を客観的・多角的に見ることが難しくなりがちです。
問題解決が遠回りになりやすい
感情的になって、状況が把握しにくいうえに、自責過剰の場合は他人や周りの状況の課題・問題点を掴みにくく、他責過剰は自分自身の課題・問題点から目をそむけがち。
そのため結果的に問題解決が遠回りになりやすい。
失敗経験が次に活きにくい
「他人・周りの状況の問題」「自分自身の問題」を見ることを心理的に避けているため、失敗を通じて表面化した問題点からも目をそむけがち。
そのため失敗経験が活かしにくく、同様のことを繰り返してしまう可能性が高い。
自己否定・他者否定を強化しやすい
自責過剰の場合、潜在的に「何か問題が起きたら、それは自分が悪いからだ」といった自己否定的な観念を持っていることが多い。
そのため目の前で問題が起こった時に「やっぱりそうだ、自分が悪いんだ」と考えてしまい、問題が起こったという現実を目の前にしたことで、更に自己否定の観念を強化しやすい。
また逆に他責過剰の場合、「何か問題が起きたら、それは他人・状況が悪いからだ(自分は悪くない)」といった他者否定的な思考パターン・観念を持っていることが多い。
そのため目の前で問題が起こった時に「やっぱりそうだ、他人はあてにならない」「やはり世の中はひどいところだ」などとと考えてしまい、問題が起こったという現実を目の前にしたことで、更に他者否定の観念を強化しやすい。
3.自責過剰・他責過剰の原因
ではなぜアダルトチルドレンは自責過剰・他責過剰になってしまうのでしょうか。
自己重要感の低さ
自己重要感とは自分で自分のことを大事だと思えること、価値があると思えることです。
しかしアダルトチルドレンは機能不全家族で育ったため、自分に対してあまり自信がありません。
そのため弱い印象を受けがちですが、逆に自信がないために、それを見ないようにする内に自分の感情に鈍感だったり、虚勢を張って強がったりするする場合もあります。
心理的な存在基盤が弱いため、客観的・多角的に物事を見ることが苦手で、極端に自責過剰・他責過剰に振れてしまいがちです。
親から責め続けられてきた
責め続ける親元で育ったこどもは、人からの叱責に敏感になってしまいます。
また「お前が悪い」と繰り返し言葉や親の否定的な態度を受けることによって、何か問題があればすぐに自分が悪いと考える思考パターン・観念が身に付くようになってしまいます。
親が子どもの失敗を見守ってくれなかった
子どもが成長するにあたって、いろんな失敗を経験するもことも通じて、様々なことを学び成長していきます。
しかし親が失敗を見守る姿勢が極端に少なく、過剰な叱責やまったくケアせずに放置を繰り返していると、心理的に失敗に向き合いにくくなり、自責過剰・他責過剰に振れてしまいやすくなってしまいます。
親から「罪悪感」でコントロールされてきた
親が子どもをコントロールする方法の一つとして罪悪感があります。
子ども自身が「自分が悪いんだ」と思い、言動を起こすこと自体が悪いわけではありません。
しかし親が子どもを過剰に罪悪感でコントロールすると、子どもはいつも「何か自分が悪いんじゃないか」と常に不安を抱えるようになってしまいます。
そうすると何か問題が起こった時、「自分のせいだ」と過剰に考えるようになってしまうのです。
親から自立に向けたサポートを十分に受けていない
他人とトラブルが起こった時、問題を抱えた時などにどうすれば良いのか。
子どもは親から助言やサポートをしてもらったり、親自身が問題を解決する姿勢を見ることで、問題解決の姿勢や仕方を少しづつに学んでいきます。
しかし虐待や育児放棄の家庭で育った子どもは親からの支援を十分に受けていないため、問題が起こった時に対処の仕方が分からず右往左往しがちです。
そして上手く乗り越えた経験が少なければ少ないほど、問題が起こった時に一種のパニックに陥りやすく、自責過剰・他責過剰に振れてしまいやすくなってしうのです。
忘れられない大きな失敗体験がある
幼少期にとても恥ずかしかったり、悲しい思いをしたなど、忘れられない大きな失敗体験が原因となることがあります。
実際に起こった出来事の大きさには関係なく、小さな子どもにとって心理的・感情的に大きなインパクトがあったネガティブな体験が一つの起点となって、「自分はダメだ」「自分が悪い」と考えるクセ・思考パターンが出来てしまうのです。
アイデンティティの確立が十分ではない
アイデンティティ(identity)とは,自己同一性とも呼ばれ,「自分が自分であるという感覚」のことを言います。
そして自分が自分であるという感覚をもっている人は,アイデンティティが「確立」していると言います。
逆に確固たる「自分が自分であるという感覚」があまり強くなく,自分は自分だと感じられない人は,アイデンティティが「拡散(混乱)」していると言われます。
アダルトチルドレンは自分が歩んできた過去の人生を肯定的に見ることが難しい。
また中には幼少期の記憶が曖昧だったり、一時期の記憶がない場合もあります。
そうすると、過去の歩みがあってこそ存在する「現在の自分」に対して、受け入れ難かったり、実感が乏しくなることになってしまうのです。
自分が確立していないため主張が弱く、他人からいいように使われてしまい、面倒な問題を押し付けられてしまうこともあるでしょう。
そのため「自分が悪い」と自責過剰になるか、いいように使われながらも他人への怒りが大きい場合は、すべてを周りのせいにする「他責過剰」に極端に振られやすくなってしまうのです。
4.どうすれば 「自責過剰」「他責過剰」から抜けられるか
自分の傾向・パターンに気付くこと・認めること
自分が陥っていることに気付く。
これは上手くいっていない自分を認めることになるため、場合によっては心理的なダメージがあるかもしれません。
しかし、まずは自分が「自責過剰」「他責過剰」になっていることに気付くこと、そしてそんな自分を認めることが、改善の第一歩になるのです。
過去の心の痛みを受けた体験・満たされなかった体験に光を当てる
なぜ自分は「自責過剰」「他責過剰」になっているのか、その原因を探ります。
その人が持って生まれた性質が影響することもありますが、大きな要因は幼少期の過ごし方・体験に起因することが大半といっていいでしょう。
幼少期、どんな環境で育ったのでしょうか。
幼少期、両親はどんな態度で子どもと接していたでしょうか。 など
振り返ってみると、原因となりそうなものを既にご自身で分かっていることも多いと思います。
ただ心理的な抵抗が大きい時は、親しい人に話しをじっくり聞いてもらうのも有効です。
また信頼できるカウンセラーやセラピストの力を借りるのも良いでしょう。
いづれにしても、「自責過剰」「他責過剰」の原点となる体験に意識を向けることは、大事なステップになります。
心の傷・満たされなかった想いを癒す
この思考パターン・反応パターンに陥った原因(状況・出来事)には、幼少期の傷ついた体験や満たされなかった想いが強く付随していることが多いと思います。
痛みの軽いものだと、すっかり忘れていた出来事を「そういうえば昔、こんなことがあった」などと思い出すだけで、スッと解消したように感じるものもあるでしょう。
ものによっては、自分で思いだしたものを文章にしたり、人に話しを聞いてもらい・受け止めてもらうことで、解消するものもあるでしょう。
ハードなものは、何らかのトラウマケアを使った方が圧倒的に早いこともあるでしょう。
いづれにしてもこの心の痛みを軽減させることが、過去のパターンを変える大事な素地を作ることになります。
新しいパターンを試みる、定着させていく
(1)「自責過剰」が強かった人
自分自身の課題・問題点だけでなく、他人、周りの環境に関わる課題・問題点もバランスを取りながら考えていきましょう。
アダルトチルドレンは問題にぶつかった時、親から適切なサポートを受けた体験が少なく、他人に助けを求めたり、サポートしてもらうことが苦手になりがちです。
そのため一人で問題を抱えこんで、苦しんでいたのです。
「自責過剰」が強かった人が、目の前の問題をバランス良く見れるようになった時に変わること。
その一つは解決に向けて「自分が出来ること」「他人にやってもらうこと」の双方が見れて、行動できることです。
最初は慣れないかもしれませんが、繰り返すことで新しいパターン(バランスを持った見方・行動)が定着してくるようになります。
(2)「他責過剰」が強かった人
他人、周りの環境に関わる課題・問題点だけでなく、自分自身の課題・問題点もバランスを取りながら考えていきましょう。
自分が自分自身の問題に目を向けてこれなかったのは、幼少期の心の痛みがあまりにも大きすぎて自分で抱えることができず、周りに責任転嫁するしかなかったからなのです。
そのため周りを責めてばかりで、自分自身も苦しかったのです。
「他責過剰」が強かった人が、目の前の問題をバランス良く見れるようになった時に変わること。
その一つは「他人や周りへの怒り」だけでなく、問題の責任を自分自身で受け入れる静かな覚悟が解決に向けた行動エネルギーになることです。
最初は慣れないかもしれませんが、繰り返すことで新しいパターン(バランスを持った見方・行動)が定着してくるようになります。
5.まとめ
アダルトチルドレンは幼少期に受けた心の大きな痛みを抱えたまま、現在を生きています。
そのため現実の目の前で起こっている問題をキチンと把握したり、解決に向けて行動することが苦手なことも多いのです。
その一つの要因が今回取り上げた「自責過剰」「他責過剰」です。
ここに変化が生まれることが、アダルトチルドレンが持つ生きづらさを軽減することにつながるのです。