年間を通して各企業による新作発表や取扱商品の見本市が頻繁に開かれていることは、自分自身のアンテナを高く張っていれば目にすることが多いようです。このようなイベントごとは、商品や新製品に対する経営者・関係各社の苦心の現れと見ることもできそうです。
しかし、こうしたイベントに参加して内容を拝見すると、各社の格差がはっきりと伺えるものです。また、現在市場に出回っている商品でも、需要の不振が続く一方で好調な売れ行きを示す商品は少なく、商品に対しても格差を感じずにはいられません。
そうした違いを感じながら、消費者の求める要求の変化にうまく対応していく企業が、継続的な発展を重ねていると観て、間違いがないようです。では、その変化にうまく対応する鍵はどこにあるのでしょうか。それは、企画中心者の“長年の経験”と“カン”というよりほかありません。
“長年の経験”と言われてしまうと、経験年数の若い方々には、打つ手がないと見限り、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。しかし、“カン”については、長年の経験がなくても磨くことができます。さらに、その磨かれた“カン”によって掴む情報が変化していきます。すると、これまで経験したことのない体験を積むことができますし、これまでにない成功を掴むことができるのです。
今回は、“カンと情報”について考えていこうと思います。もしかしたら、先述の内容から「経営者ではないから必要ない」と切り捨てる方がいるかもしれません。しかし、各々の立場に置き換えて読み進めていただきたい内容としました。
私たちは、会社というコミュニティだけで生活しているわけではありません。少数や多数のチーム、グループを構成して行動していることが、少なからずあることでしょう。そして、身近なコミュニティといえば、家庭・家族となります。
現在、自分自身の身を置いているコミュニティ、家庭、会社、企業、地域等々に置き換えて、それぞれに考えることができるような内容に努めたつもりです。
読み進めながら、自分自身の置かれている“場所”に置き換えていただき、参考にしていただければ幸いです。
1、決断に必要なカン
どのような場面であっても、絶妙なタイミングで次の手を打つ経営者の“カン”というものは、どういったものなのでしょう。また、それはどうしたら培われるのでしょうか。ここで“カン”について考えを深めて見ましょう。
「経営」という枠組みを外してみても、私たち人間にとって“カン”を発揮させたい場面は、いろいろとあるようです。
職場や取引先といった仕事に関わる場面もあれば、競輪競馬競艇のようなギャンブルをしている場面であっても、「右にするか、左にするか」「黒にするか、白にするか」等々、決断を迫られる場面が様々とあることが浮かんできます。
そうした“決断を迫られる場面”に発動してもらいたいのが“カン”なのです。しかし、「その“カン”は正確に働いているのか」と問われたら疑問が残る場面もありそうです。
“カン”が働くままに動いたら失敗した。ということがあるように、正しく“カン”が働かないと感じてしまう場面もあります。そして、このような結果になってしまったのは、「思い込みによって突き進んでしまった」ということが、後々に失敗の原因とされるようです。
しかし、本当に大切なポイントは他にあるのです。それは「決断に必要な情報を的確に収集できていない」点です。それには、“カン”を働かす人の情報収集能力が問われます。つまり、「カン=優れた情報収集能力」ということが定義できるのではないでしょうか。
どこに行けば、必要な情報が手に入るのか。どこに情報源が眠っているのか。等々の考えは尽きませんが、優れた情報収集能力がなければその時その場に応じた必要な“カン”を働かすことは困難と言えるでしょう。
2、情報の収集
情報の収集には、「内外両面から収集せよ」とよく言われるところです。より具体的に提示すると、新聞、雑誌、PR雑誌、週刊誌、書籍、テレビ、ラジオ、カタログ、インターネット等々の外から得られる情報を、偏ることなく収集していきます。これは定期的に自分の方に向かってやってくるものですから、求めればすぐにでも集まる情報と言えるでしょう。
また、内から得られる情報は、二つに分類することができます。それは、社内情報と社外情報です。さらに突き詰めていくと、上司、同僚、部下からの情報。そして社内における友人関係(同級、同窓、県人会等々)、他部門からの情報、社内各所にある資料から得る情報、社内報、社内PR雑誌等々から得られる情報が社内から得られる情報と言えます。
そして、外から得られる情報には、官公庁で発行している情報、販売店や取引先から得る情報、消費者から得る情報、同業他者から得る情報、異業種企業の知人から得る情報、外部で開催される種々の会合から得る情報、各種文献、研究資料から得る情報、海外から得る情報等々が挙げられます。
ここまで多くの情報源を列挙してわかることは、良い情報を得るためには時間と金銭を惜しんではならないという点です。ある出来事が発生した時には、物的証拠だけ揃えていても不十分な場合、裏付けに必要な情報が欲しいもの。そうしたことから情報を売買している方々もいることでしょう。
また、定期的に情報をもたらしてくれる友人知人といった仲間との交流を親密にしておくことで、より良い情報が必要な時に、必要な内容が集まってくるようです。これに関しては、時間とお金を惜しんでいては情報の質が変化してしまうので注意しなければならないことでしょう。
次に良い情報を得るために必要なことは、人の言葉によく耳を傾けることです。歴史上の人物でいえば、江戸時代の将軍徳川家康は、よく人の話や意見をじっと聞いていたといいます。さらに、大勢の人のそれぞれの意見を聞き、情勢の判断と人の心の動きをよく捉え、最後に自分の意思を決定し、決断を下したといわれ、誤りがないのはそのためであったとも言われています。
聞く耳を持たない、というのは、勝手気ままな振る舞いをする人の例えとしてよく使われる“暴君の思想”です。なまじ能力がある自信家の人は、人の言葉を聞くことを面倒がってよく聞きません。さらに周囲の意見を軽視して、「文句を言わずについて来い」といったように決断を下してしまいがちです。
その結果、周囲の人間からは見放され、いつしか一人きりとなってしまうことは多くあるようです。入社したばかりの男性であっても、女性であっても、彼らにしか思いつかない考えややり方、発想や閃きがあります。
自分は有能な上司、先輩であるかもしれません。しかし、彼らのような年齢には戻ることはきませんし、男性が女性に化けることはできないのです。素直に聴く謙虚さがないと、彼らの良さを決断の材料にすることなど到底できないということを頭の片隅に置いておくようにしたいものです。
3、カンの重要性
良質な情報を得るためには、「内外両面から収集せよ」ということを意識しながら、「人の言葉に、よく耳を傾ける」努力をはらうことが大切だと触れてきました。おそらく、そうして集まった情報は膨大な情報量となったことでしょう。
このまま情報を精査せずに放っておいては、何もしないことと同じことですので、この場面で重要なものが、情報を分別する“決断力”になります。
ひとことで「決断力」と言われたところで、一朝一夕に培うものではありません。他の人から「決断力をつけなさい」と助言をもらったとしても、どうしたらいいのか困惑してしまうものです。そこで注目することが「決断力の付け方」です。
すこし分解して考えてみると、決断力には“ひらめき”と“カン”の要素が含まれていますので、意識は“ひらめき”と“カン”を働かす方法に向けていくと行動しやすくなります。
その具体的な方法は、日頃から「気づいたことは、すぐに行う」ことを意識して生活していくことが効果的です。しかし、「気が付いたからすぐに行動した」では、極端すぎて失敗の元にもなりがちです。ここで「気づき」にも種類があることを掴んでおきましょう。
「すぐすべきこと」「時間をかけて、あらゆる可能性を考慮すること」「バラバラな情報の一部であること」など、すぐに行動するには情報が足りないこともあるので、しっかりと“考える”ことも忘れずに、「気づいたことは、すぐに行う」との意識を積み重ね、決断力を養っていかれてはいかがでしょう。
近年は経済的にも低成長といわれ、多くの不確定要因が存在する中で、新商品の開発、販路の開拓、事業転換等々と経営者はもちろん従業員も含めて、厳しい決断に迫られるケースも増えてきていると聞こえてきます。
そういった意味もあり、カンが重用される時代になってきたと考えられるのではないでしょうか。さらにその裏付けをつけるためにも、情報収集能力の充実が一段と求められていると言えるでしょう。
最後に
今回は“カンと情報”について取り上げてきました。冒頭で物事の判断には「長年の経験」と「カン」が必要としましたが、両方が揃っていなくても「カン」を磨く事によって、これまでにない成功をつかむことができます。
また、「カン=情報収集能力」と記しました「カン」というカタカナを漢字に置き換えると「勘」という言葉が浮かんでくると思います。「勘」という漢字には“調べる”や“考える”との意味があり、勘案、勘考、勘定というように活用されています。
私たちの日常に“調べる”や“考える”ことを日常の一コマに落とし込んで、「勘」を磨くのも有効なこととして意識することができそうです。ただ、気をつけなければならないのは、「○○しすぎる」ことによる、目的、目標の喪失です。
調べ、考え尽くすことに“○○しすぎ”はありません。しかし、原点を見失っては本末転倒です。しっかりとした目的、目標を見据えた上で、情報収集に努め、“カン”をとき澄ましてみてはいかがでしょうか。