「あの人はいいなぁ」
「やりたい仕事をしていて、みんなに好かれていて、楽しそう」
「私もそんなふうになれたらなぁ」って思うけど、なれるわけなんてなくて、落ち込んでしまう
理想と現実のギャップが苦しい時、苦しさの理由は、理想とは違う自分が原因だと思っていませんか。
本当はギャップがあるかどうかも、そのギャップの大きさも関係ありません。
「もうちょっと痩せてたら」「あと数センチ背が高かったら」など
その少しの体重や身長、ギャップが小さくても苦しさは変わらずにあります。
ギャップを小さくしても苦しみがなくならないなら、何をしたらいいのでしょうか。
今日は理想と現実のギャップが生む、苦しさの根本的な原因と解決の糸口を探ってみたいと思います。
理想に近づけそうもなくて苦しい
理想の自分が今の自分とあまりにも違いすぎると、そのギャップに苦しくなりますよね。
私は理想と現実のギャップが大きくて、悩んでいる期間が長かったです。
「もっとやりたいことを仕事にしたいけど、何がやりたいのかわからない」
って思ったり
「本当はもっと上手に人と関わりたいけど、今の自分はそうじゃない」
なんて、いつになったらゴールが見えるのかわからない道を歩いているような気分でした。
そんなときに自分の理想に近い人を見ると、あまりの果てしなさに気が滅入りました。
悲しくて、自分が消えていくようでした。
当時は、理想の自分になることがゴールで、ゴールに辿り着けば苦しみは消えると思っていました。
ギャップがあるから辛いのであって、ギャップがなくなることが解決策でした。
だから理想を追いかけて、頑張りました。
でも意外なことに苦しみの原因は、理想と現実のギャップにはありませんでした。
苦しみの本当の原因はなんだったと思いますか。
苦しみの本当の原因は否定感
私が苦しかった本当の原因は「理想の自分になれない自分がダメだ」と自分を否定する気持ちでした。
やりたいことが見つかっていない自分はダメで、上手に人と付き合えない自分はダメだと思っていたことです。
もしやりたいことが見つからなかったとしても、見つけられない自分をダメだと感じなければ、そんなに苦しくないはずでした。
上手に人と付き合えなくても「そういう自分でもいい」と思えていれば理想と現実とのギャップはなんの問題もありませんでした。
苦しみは、ギャップに感じているものではなく、自分への否定感です。
だから苦しみの大きさを左右するのは、ギャップの大きさではなく否定感の強さです。
この否定感をなんとかしないと、ギャップがなくなったとしても、理想と現実とのギャップに感じる苦しさを軽減することは難しいです。
たとえ人付き合いが上手になったとしても、またダメな部分を見つけて、自分を否定してしまいます。
苦しみの原因1 理想とは違う自分を否定していること
否定の構造
理想と現実のギャップに苦しむとき、理想って自分を認める基準みたいなものです。
このくらいになったら自分のことを認められるという基準です。
「やりたいことが見つかったら、自分で自分のことを認められる」
「人付き合いがもっとうまくなったら自分は一人前になれる」
私の中にはそんな感覚がありました。
理想が自分を認めるための基準であり、自分を否定する理由でした。
苦しみの原因2 理想によっていつも判断・否定されるから
「やらなきゃ」が原動力
もし、この理想が自分を評価するものではなく、内発的な動機だったら話は別です。
人付き合いが上手くなって、友達が増えたら楽しそうだとか、やりたいことをやっている自分は楽しそうだから仕事の内容を変えてみたいとか、そんな動機なら苦しくはなかったと思います。
そこに向かっていくこと自体が楽しかったかもしれません。
でも、私の内発的動機は、否定感でよく聞こえませんでした。
やりたいことを仕事にできたら楽しそうとか、そういう状態になりたいとか、そんな気持ちよりも、今そうなれていないことに焦る気持ちの方が大きかったです。
理想の自分にならなきゃいけなくて、なっているかどうかを常に評価されているような気分でした。
理想の自分になることは、やりたいことというよりも、やらなきゃいけないことでした。
これだと、苦しくて当たり前でした。
苦しみの原因3 「やらなきゃ」「そうあらねば」って思っているから
苦しい理想は与えられた原動力
やりたいかやりたくないかって、苦しいか苦しくないかに直結すると思いませんか。
やりたいことだと楽しくできるけど、やらなきゃいけないことってつまらないし、辛いものです。
中高生だとイメージしやすいかもしれません。
将来英語を使った仕事をしたいから英語を得意科目にする、と自分で決めた学生と、親や先生に怒られて嫌々英語を勉強している学生だとどちらが苦しそうでしょうか。
前者は「やりたい」が原動力、後者は「やらなきゃ」で動いている人です。
誰かに言われて嫌々やっている人の方が苦しいのは簡単に想像できます。
やりたくもないのに頑張らなきゃいけない時間って苦痛そのものですよね。
自分の内側から発生した「やりたい」だと辛さはないけど、外から与えられた「やらなきゃ」「こうあらねば」は自分を苦しめます。
理想の自分を目指すのが苦しい時は、もしかしたら嫌々英語を勉強するのと同じで、本当はやりたくないけど、やらなきゃいけないと思ってやっているのかもしれません。
将来役に立つとか、テストのため、進学のため、みたいにもっともらしい理由があるから正当化されてしまって、やりたくない気持ちに気がつかない可能性もあります。
私の人付き合いが上手になるという理想は、実はあんまり興味のないことでした。
私の考える人付き合いが上手になるっていうのは、どんな人とも楽しく話せて、誰にでも好かれる人になることでした。
人間関係は広く浅く、というイメージです。
でも私は、実際は狭く深く関わる方が好きです。
ただ、母が「人とうまくやっていけることは大切」ってよく言っていたので、そうしなきゃって思ってしまったんですよね。
人といい関係を築きたい気持ちはあったので、私の場合は「やりたい」という内的動機と外から与えられた「やらなきゃ」「そうあらねば」が混じっている状態でした。
自分のやりたい気持ちが全くゼロではないから、苦しみの原因に気がつきにくかったです。
苦しみの原因4 実は、理想は外から与えられたものだから
頑張っている自分を認めない
この理想はあくまでも評価基準の役割しか満たさないので、プロセスを無かったことにしてしまうのも苦しみを拡大させました。
理想の状態になっていなかったら、いくら頑張ってもその頑張りは認められませんでした。
スポーツで言うと、試合で勝たなかったら、それまで費やした練習時間や努力は意味がないって感じのとらえ方です。
ゴールに到達していない自分は隠したかったです。
存在する価値がない気がしたからです。
大袈裟ですよね。
でも、ほんとにそんな気分だったんです。
苦しみの原因5 今までのプロセスが否定されてしまうから
苦しさを軽減するためにすべきこと
理想と現実のギャップに悩んでいた時、その苦しさを軽減させてくれた出来事がありました。
やりたいこともわからないし、自分の将来も決まらなくて悩んでいた時のことです。
理想とは程遠い現実に苦しむ私に、こんな言葉をかけてくれた人がいました。
「とにかく人と比べないことだよ」
「あなたはあなたのままでいいのよ」
その言葉がくれた嬉しさを今でも覚えています。
「私は私のままでいいんだ」と思えたあの瞬間は、理想と現実にいくらギャップがあっても苦しくありませんでした。
もちろんやりたいことをやる人生がいいし、それがわかることは理想に変わりないんだけど、その状態になっていなくても辛くなかったです。
あの言葉を聞いた時は、他の誰かが私を認めてくれたから、自分のことを否定するのをやめられました。
理想と現実のギャップの苦しさを手放すためには、理想の自分になれるかなれないかが問題なのではなくて、自分で自分を認められるかどうかが問題なんだと思います。
「理想の状態になれていない自分はダメだ」と自分を否定してしまう時、理想に向かっていくことは苦しいことです。
理想に向かおうとすればするほど、自分を否定してしまうからです。
だから、苦しい時にすべきことは、自分を否定するのをやめることです。
今のままの自分を認めることができたら、理想がどんなに高くても苦しむことはありません。
「じゃあ、今の自分を認めよう」と思ってもすぐにできるわけではないかもしれません。
どうやって認めればいいのかわからなかったり、自分のいいところや認められる部分なんてないように感じるかもしれません。
でも、いいところは、誰でもみんなあるものです。
今まで理想の自分という基準で自分のことを評価してきたから、すぐにわからないだけです。
まずは、自分を苦しめる理想ではなく、自分で自分を認めてあげることを一緒に目指してみませんか。
自分を認めて見えてきた自分の良さこそ、本当にやりたいことのヒントやあなただけの魅力になるかもしれません。