- 夏の疲れが残っていると秋冬の免疫力が下がる
- 冬の乾燥対策は秋から始まる
- 秋は白い食べ物、旬の物を使った薬膳で養生しよう
- 呼吸法で肺や胸郭をストレッチするのもいい
暑い夏を過ぎて、寒暖差の大きな秋がやってくると何を食べますか。
夏バテが続いた方にとっては秋にしっかり養生することが冬を健康で過ごす準備となります。
漢方や中医学、薬膳では秋は肺の季節とされています。
肺の養生を薬膳と呼吸法からご紹介します。
夏の疲れた胃が秋の体調不良の原因
漢方・薬膳の基礎理論「五行説」では、木火土金水のちう5つの要素を体の部位や季節、感情などと結びつけて考えます。
木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生じ…という変化を自然の中に見ていきます。
「土」は「脾・胃」に当たり、「土」を母として「金」という子が生じます。
「金」というのは、臓腑は「肺・大腸」、季節は「秋」を意味します。
夏に冷たい物を飲み過ぎたり夏バテをしてお母さんである胃の調子が崩れると、子どもである肺が弱ってしまいます。
病がちなお母さんから健康な子どもは生まれないと考えるとわかりやすいですね。
肺は鼻や気管支などの呼吸器系につながっています。
「肺」の不調が、秋冬に流行する風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスの感染につながります。
免疫力を上げるためには、呼吸器の主役である「肺」の養生がとても大切になってきます。
秋は、肺、大腸、金、辛味、白色、悲しみの季節
肌の乾燥は秋から始まっている
秋は、夏の熱を含んだ湿気の多い風からさわやかな湿気の少ない風に変わり、冷気や寒気を感じます。
体の水は夏には体表に移動してきて汗をかきやすくなっていました。
秋になると、今度は、体表の水が体の奥深くに潜り込んでいきます。
同時に、秋風によって乾燥と冷えがやってきます。
その結果、体は燥(かわ)いていき、冬の肌の乾燥になります。
潤いは秋から足りなくなっているのです。
漢方では「乾く」は「燥く」と書きます。
肺は皮毛を主る
漢方の「肺」は、呼吸器系、鼻、咽喉、皮膚、粘膜などに相当します。
古来から肺は皮毛(ひもう)を主る(つかさどる)といわれています。
皮毛とは皮膚、粘膜、体毛(産毛)などをいいます。
「肺」が不調な時は次のような症状が出ます。
- 肌が乾燥する
- 気管支炎になる
- 咳が出る
- 鼻炎になる
ご存じのように風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスは目、口、鼻の粘膜から体に侵入してきます。
「肺」が整えば、肌や粘膜が潤い、病原菌やウイルスの侵入を防ぐはたらきが高まります。
秋は、肺を整えて病原体の侵入に備える季節なのです。
肺を潤す白い食べ物
五行説では、秋・肺に白色を当てはめ、白い食べ物を食べると肺が潤うと考えます。
薬膳では秋には次の食べ物を使います。
- 大根
- 白菜
- 白ねぎ
- れんこん
- じゃがいも
- 山芋
⇒乾燥させたものは漢方では山薬(さんやく)という - かぶ
- 梨
- もち米
- 百合根
⇒漢方では百合(びゃくごう)といいます。 - くわい
- 白キクラゲ
- 白ゴマ
- 牛乳
- はちみつ
- 豆腐、豆乳
- あんずの種
⇒漢方では杏仁(きょうにん)という - 鶏肉
- 白身魚
- いか など
秋の白い薬膳料理
薬膳料理の一例です。
これらを普段の食事に取り入れるとよいでしょう。
【主菜】筑前煮、白身魚や鶏肉の鍋
【副菜】青菜のおひたしに白ごま、青菜の白和え、いかとわけぎのぬた
【スイーツ】杏仁豆腐、牛乳寒天、梨のコンポート
【お茶】はちみつ豆乳ティー(生姜入り)
辛味は食べ過ぎない
肺に配当する味は辛味です。
辛味の食べ物は次の通りです。
- 大根
- ねぎ
- 玉ねぎ
- にんにく
- 紫蘇
- 生姜
- 山椒
- 唐辛子
- わさび
- シナモン など
辛味の食べ物は「肺」にお勧めではありますが、食べ過ぎは逆効果になります。
例えば、「肺」が弱い人が、辛味のものを食べ過ぎると、逆に「肺」を傷つけて咳が出たりします。
色白で肺が弱い私は、大根おろしの辛味は頭の毛が逆立つような、針が刺さるような痛みを感じて苦手です。
例えば、唐辛子は赤色ですが、辛味のものです。
唐辛子は食べても消化せずに大腸まできて、大便にそのまま出ます。
そのため、食べ過ぎると大腸粘膜が炎症を起こしてしまいます。
健康のため、免疫力アップのためと聞くとつい食べ過ぎてしまいがちですが、ほどほどが良いのです。
けれど、ほどほどがどれくらいの量かは個人差もあって大変難しいです。
個人的には風味を感じる程度、味に少しアクセントが出る程度が良いのではと思っています。
旬のものをプラス
体に良いといわれる食べ物も、過ぎたるは及ばざるがごとし。
極端にならないようにしましょう。
日常生活で白い食べ物ばかりを食べるのも続くものではありません。
そこで、白い食べ物を食卓に取り入れながら、旬のものもしっかり食べることです。
旬のものは多くは栄養価が高く、値段も安くなります。
旬のものは天からの恵みです。
季節のものを食べること自体が体のケアになります。
秋のイチ押し薬膳料理は?
ここで夏に疲れた体にぜひ食べたい秋の薬膳料理をご紹介しましょう。
参鶏湯(サムゲタン)です。
熱いスープで体を温める冬の薬膳料理と思われがちですが、韓国では夏バテからの回復に食べられています。
参鶏湯は、鶏、高麗人参、もち米、大棗(なつめ)、栗、松の実、にんにくなどから作られています。
秋の白い食べ物:鶏、もち米、にんにくが入っていますね。
鶏のコラーゲンは、女性に人気のお肌プルプル成分です。
呼吸法:肺と胸郭をストレッチ
免疫力をアップする食べ物のほかにおススメしておきたいのが呼吸法。
猛暑で体力が消耗した夏は、呼吸が浅くなっています。
呼吸が浅い状態が続くと、肋骨まわりの筋肉や横隔膜が固まってしまいます。
そうすると、呼吸した時の肋骨の開きも悪くなります。
深く呼吸することが難しくなり、ますます浅い呼吸になってしまいます。
次にあげる呼吸法を取り入れ、呼吸を深くして全身の血流アップ、酸素量アップしたいものです。
腹式呼吸、胸式呼吸のどちらでも構いません。
鼻からゆっくりと吸いましょう。
肺に息が入ったら一旦止めます。
あと少しだけ息を吸って、背中や胸の筋肉を内側からストレッチします。
肩の力を抜いて、あごの力も抜いてリラックスします。
あと一呼吸の時、人によっては背中や胸を引き伸ばされるような痛みを感じるかもしれません。
固まった筋肉が引き延ばされるからです。
無理に続けないようにしてください。
肺疾患など肺に既往歴がある方、高齢者は、肺を鍛えるぞ!と頑張らずに、いつもよりほんの少し多めの息、ほんの少し深く呼吸することを心がけてください。
まずは1日5分からやってみませんか。
しっかり呼吸できるようになると、体が活性化して温まってきます。
冷え性対策にも良いです。
まとめ:秋の体調管理のために
秋は夏に疲れた体を休ませ、冬に向けて体調を整える季節です。
秋の養生で冬の体調が決まるといっていいくらいです。
薬膳では白い食べ物や辛味のものを使います。
夏の暑さで呼吸は浅くなっているので、いつもより一息多く呼吸して胸郭や背中の筋肉にストレッチをかけていきましょう。