はじめに《違いを受け入れる大切さ》
私が初めて海外旅行に行ったのは7歳の時でした。
当時、ニューヨークに住んでいた叔父家族を祖父母と共に訪ねたのです。
今はたくさんの人達が気軽に世界中を旅行していますが、私が子供の頃は海外旅行がまだまだ珍しい時代でした。
私の父は高校の英語教師をしていたため我が家には頻繁に外国人が来ていました。
そのため何となく外国の雰囲気には触れることができましたが、実際にアメリカに行ってみると衝撃的なことばかりでした。
叔父にフロリダにあるディズニーワールドに連れて行ってもらった時は「この世の中に天国はあったんだ!」と真剣に信じてしまうほど楽しかったです(笑)
テレビや絵本の中でしか見たことがなかったディズニーのキャラクターたちがハグしてくれて、一緒に写真も撮ってくれて本当に幸せな日々でした。
この時の海外での楽しかった体験が忘れられず、大学卒業後にはアメリカに留学し、結婚後はエジプトにも住むことになりました。
そして、世界へ出て色々な文化を知ることが大きな喜びになっていきました。
しかし、異文化の人達と触れるのは難しいことでもありました。
こちらが当たり前と思っていることが相手にとってはそうではなく、当然、その逆もあります。
イスラム教徒の友人にモスクに連れて行ってもらった時にスカーフで髪を隠していたのですが、スカーフからちょっと髪の毛が出ていただけで他のイスラム教徒の女性に注意されたり。
ユダヤ教徒の友人のお宅に祝日のお祝いに呼ばれた時に当時小さかった私の子供が電気をつけたり消したりしてヒヤヒヤしたり。
※ユダヤ教の祝日には労働をすることが禁止されていて、電気のオンオフも労働とみなされます。
それぞれの国がそれぞれの異なる文化を持っているので、それを全てご紹介することはとてもできません。
しかし今回は、この3つを知っておけば異文化の人と上手くお付き合いができるという方法をお伝えしたいと思います。
最近では日本に来る外国人観光客も毎年増加しています。
2020年の東京オリンピックの開催が決まり、益々外国の人達と交流する機会も増えていきます。
異文化の人と上手く付き合う3つの方法を知って、ぜひ世界にたくさんのお友達を作ってください。
1.相手の国の食事を何でも食べる
まず間違いなく言えるのは、どこの国に行っても食はとても重要な文化だということです。
だからまずその国の文化を体験しようと思ったら、食べることが一番早い方法だと思います。
その国でとれたモノを、その国の調理方法で食べると不思議とその国のことがよく分かるようになっていきます。
食卓は友達を作る最適の場所でもあります。
例えば、誰かのお家に呼ばれた時に出された料理を「美味しい、美味しい」と言って喜んで何でも食べたら、その家の人達はあなたのことをいっぺんに好きになってくれると思います。
今は渡航禁止になってしまったので訪れることができませんが、20年以上前にシリアに行った時にあるご家庭にお世話になったことがありました。
そこでたくさんのお料理をご馳走になったのですが、あまりに量が多かったのでお腹がいっぱいになり半分以上残すことになってしまいました。
すると、私の隣に座っていた日本人の男性から「お皿に取ったものは全部食べなきゃ失礼ですよ」と言われてしまいました。
確かに、もし自分が心を込めて作った料理を残されたら良い気分ではありません。
それ以来、出された料理は全部食べるようになりました。
そして私にとって食事の場はとても大切な社交の場にもなりました。
しかし、外国の料理は量が半端なく多いので本当に食べられなくなった時の相手の気分を損ねない言い訳もいくつか考えておくと良いと思います(笑)
2.相手の文化や習慣を体験してみる
今はインターネットなどで世界中のことが調べられますが、やはり、実際に体験してみるのとそうでないのとでは外国文化への理解の深さは全く違います。
エジプトには2回住んだことがあるのですが、つい最近までヒジャーブ(イスラム教徒の女性が髪を隠すためのスカーフ)はイスラム教徒の女性しか被ってはいけないものだと思っていました。
しかし、エジプト人の大学生達がヒジャーブについてこう言っていたので驚きました。
「昔はヒジャーブには宗教的な意味がありましたが、今は習慣で被っているんです。だから、イスラム教徒以外の女性がヒジャーブを被ってくれると自分達の文化を楽しんでくれている感じがして嬉しいんですよ」
せっかくなので、その場で私もヒジャーブを初体験してみました。
スカーフ1枚被っただけなのですが、ちょっと違う自分になったようで嬉しくなりました。
すると大学生の女の子達もとても喜んでくれて、たくさん写真を撮ってfacebookに投稿してくれたのです(笑)
私も若返ったつもりで彼女たちとはしゃいでしまいました。
大学生の友達もたくさんできてとても楽しい時間でした。
ただこの時、私は着物を着ていたのでfacebookの投稿を見た日本の友人からは「くのいちみたい(笑)」と大笑いされてしまいましたが、、、
3.相手の宗教的な習慣を理解しようとする
文化や習慣は宗教を基礎にできていると言ってもいいと思います。
外国に行くと日本人にとっては直ぐに受け入れられない宗教的な行事を目の当たりにすることもあります。
イードというイスラム教のお祭りがあります。
このお祭りは食物に感謝するために各家庭で羊を一頭食べる習慣があります。
私の住むカイロではイードの前になると街のあちらこちらで羊が売買されている光景をよく見かけます。
そして4日間続く祝日の最初の日に自宅の庭先などで屠って、解体して、家族・親戚・友人に羊肉を振る舞います。
イードの早朝に私の住んでいる家のすぐそばから羊の鳴き声が聞こえてきました。
その悲しげな、運命を悟ったような鳴き声を聞いてこれから何が起きるのかすぐに分かりました。
やがて羊の声がしなくなったので恐る恐る外を見ると隣の家の庭で男性が二人がかりで羊を解体していました。
初めてこの光景を見た時はかなりショックでしたが、落ち着いて考えてみると、私達の食べているお肉ももともとは生きた動物だったことを改めて思い出しました。
そして、これはとても恥ずかしいことだと思いました。
私はお肉を食べますが、動物がお肉になっていくプロセスは実際に見たことがありません。
庭先で羊を屠殺する光景は衝撃的でしたが、その場面を見ることで本当の意味で命をいただくことへの感謝が湧いてきた気がします。
おわりに《異文化を知ることは、自分を知ること》
他の国の文化を体験すると、感動することもあれば、驚くこともあれば、拒否したくなることもあります。
しかし実は、異文化を体験することは自分の外から自分を見つめ直す良い機会でもあります。
人は自分の周りで起きていることが全てであると思いがちですが、外国の文化に触れることでその枠が壊れます。
当たり前だと思っていたことが当たり前ではなくなることが新しい自分、本当の自分に近づくチャンスになります。
日本に来る外国の人達の多くは日本が好きで、興味を持っているのでとても友好的です。
しかし、外国に行くと必ずしもそうでないことがあります。
日本のことを良く思っていない人達と遭遇した時の緊張感は実際に体験してみないと分からないかもしれません。
決して気持ちの良いことではありませんが、こうした体験は自分を改めて知るチャンスでもあるのです。
ぜひ日本国内や外国で異文化に触れて心の世界を広げてみてください。
きっと新しい発見がたくさんあると思います。