はじめに
経済的利潤の追求を第一として活動する人を批判した言葉として「エコノミック・アニマル(経済動物)」という言葉があります。昭和40年(1965)に、当時のパキスタン外相が日本の経済進出のあり方について語った言葉として知られています。
天然資源の乏しい日本にとって経済的な豊かさは国を成り立たせる上で重要なことであるのは確かでしょう。そして、私たち個々人の生活にとっても、衣食住などの物財の生産、流通、消費に関わるものとして重要視されているのが“経済”といえます。そのため、金銭にまつわる問題は、私たちの生活に密着しているといえる状況です。
これほど身近な金銭問題ですが、金銭に対する“意識”はいかがでしょうか。目先の出費や収入は常に気になるものですが、金銭の存在そのものに対する意識と言われるとピンとこない人も多いのではないでしょうか。
今回は、その“金銭”に対する“意識”について、重要なポイントをご紹介したいと思います。
1、お金に好かれる人?嫌われる人?
私たちは意識の有無に関係なく、それぞれに幸福を求めて生活をしていると思います。しかし、健康を求めて健康を得ることもなく、富を求めても得られずに、働いても働いただけの成果がない、というように欲しいものを手にすることができない日常の方が多いのかもしれません。
金銭についても同様に、得たいけども得られないということも多いでしょう。しかし、周囲をよくよく観察してみると、あるところにはあるが、ないところにはない、というように見えないでしょうか?
こうしたことを目の当たりにすると、この世は不平等だと言いたくなるようなことが多々あるかもしれませんが、注意深く観てみると金銭に恵まれる人(好かれる人)と恵まれない人(嫌われる人)がいることがわかります。この両者の間には、生活や考えに大きな溝があるようです。
端的なことをいえば、金銭に恵まれない人には、支払うべきものを支払わない、何事につけても後始末ができない、小額の金銭を粗末にする、妥協ばかりを繰り返している、いつも不足不満を吐露している、優柔不断な傾向等が観られます。
反対に、金銭に恵まれる人は、支払いを守る、物事に始末(区切り)をする、小額の金銭も大切にする、物事に妥協がない、喜んで働いている、決断力が高い等の傾向が観られます。
そして、根本的な違いが「その人の心の持ち方」です。モノには、それぞれにおいて役割があり、それぞれに使命があって存在しています。決して言葉を発することはありませんが、モノを生かして活用する人のところには、必要なモノ(金銭)が集まるようになっているのです。
《実例》
関西に住むK夫人は、ご主人の青果販売店の仕事を手伝っています。仕入れや店番の手伝いをする中で、自身が担当する事務会計処理をしている時に頭を抱えるほどに悩んでしまうことがあるそうです。
その悩みは、“お得意様に恵まれない”というものでした。というのも、店に買いに来るお客さんのほとんどが、値切ってくるのです。
「奥さん◯◯円にしときなよ。全部買っていくからよ」
「奥さん、あちらの店は◯◯円だったよ。少しぐらいまけなよ!なあ‼︎」
という具合に、毎日のように値切られ…対応するしかない日々が続きます。
ある日のこと、お客さんに値切られるのなら、仕入れ先にまけてもらおうと行動に起こしますが、全くまけてくれないのです。
「まけてください」と言おうものなら、「他の店で仕入れにいったらどう」と返されてしまいます。時には、「無理だ」と怒鳴られることもあったそうです。
「仕入れは高いし、売値は値切られるし本当に儲かりゃしない。一回で100円ずつ値切られても、100回で1万円になってしまうんだから…頭が痛い。」と、毎日商売をしながら不足不満を吐露する日々が続いたのです。
ある時、「まけろ!と値切られている人は、まけてくださいと値切っている人だ」ということを耳にして、夫人はこれまでの対応を振り返りました。
〈商売をしても儲からず、金銭に恵まれない理由は「まけてください」と値切っている、私自身の心持ちが悪かったかもしれない〉さらに、〈必要以上に物やお金を惜しむような生活をしてきたかもしれない〉と反省したのです。
その後、仕入れ先を値切ることを止めたK夫人の周りでも変化がやってきました。店舗に買いに来るお客さん(得意先)が徐々に変わり始め、「ウチの商いのお客様は、本当によいお客様ばかり」というほどに変わっていったといいます。
そして、その後に3人の子宝にも恵まれ、堂々たる店舗を構えるまでになり、地域に愛される商売を展開することが叶ったそうです。
2、人見知りの激しい、お金の性(本)質を観てみよう
私たちの生活における、衣食住といった“家庭経済”には、金銭にまつわる問題が密着しています。物価や地価、税金等の上昇等に関わる情報は多く目にしますが、その割に給料は上がらないといった悩みを持つ人は多いのではないでしょうか。
家庭経済の責任者は苦労の絶え間がありません。だからといって、手をこまぬいているわけにもいきません。そこで、家庭経済を豊かにする条件を具体的な方法から考えていきましょう。
私たちは「お金…お金…」といいながら、お金の性質を案外知らない人も多いようです。また、お金を粗末に扱うがために、お金に困っている人もいるのです。では、お金の性質や本質とはなんなのでしょうか。
1)大切にされれば喜ぶ
お金に限らず、生き物は大切にされれば必ず喜びます。また、大切にする人のところに集まってくるものです。ですから、大切に扱う心がけから行動してみてはいかがでしょうか。
具体的な方法として、「①財布などの置き場所を必ず決めておく。②お札はシワを伸ばして綺麗に揃えて入れる。③家計簿などをきっちりとつけて、残高の確認をする。」などが考えられます。
なかでも「①財布などの置き場所を必ず決めておく。」では、鞄ごと床に置きっぱなしにしたり、買い物かごに入れっぱなしにしたりしないことです。
“置き場所を必ず決める”とは、財布等がゆっくり休息をとれる場所に休ませるイメージです。そして、決められた場所に収めることで、「財布がない」「鞄がない」「〇〇がない」と大騒ぎすることもなくなり、上手に大切にすることができるようになるでしょう。
2)妥協を好まない
お金のことを大切に思っていても、行動が伴わない人も多くいるようです。行動する上でのポイントとしては、金額の大小に関係なく、同じように大切にすることです。
具体的には、「①請求をハッキリすること。②財布の中の金額を明確にしておくこと。③お金を貸すときは、自分の意思でハッキリとすること。」等が挙げられます。
その際の注意としては、周囲の意見に振り回されずに対応していくことです。
なかでも、見栄や世間体を気にして、周りに合わせているようでは、自分の主張をごまかすことにつながり、妥協することになります。こうしたことの繰り返しでは、お金に好まれるどころか、人間関係も悪くなりかねません。
たとえ相手から冷たく思われたとしても、自分自身の主張をハッキリとするところに、金銭や人との良好な関係を構築していくことができるのです。
3)流通する性質を持っている
お金というのは子供と同じで、ひとつのところにいつまでもじっとしていることがありません。昔からお金のことを“お足”というように、お金にあたかも足が生えているかのように行ったり来たりすることから、「足」に例えられたといわれるほどです。
つまり、お金には流通する性質があるので、無理に引き止めたりせずに流通させること(働かせること)に意識を持っておくことが大切になります。
具体的には、「①払う時にはアッサリと払うこと。②無駄遣いをしないこと。」等が挙げられます。中でも、「①払う時にはアッサリと払うこと。」では、払い渋ったり、無駄に支払い期限を延ばしたりすることなく、“喜んで”アッサリとし払うことが大切になります。
まとめ
以上のことから、「金銭はとても敏感な生き物」として捉えてみてはいかがでしょうか。もちろん、口を聞くわけでもなければ、態度をあらわにすることもありません。しかし、金銭にも生き物のような性質や本質があることを理解して、金銭を扱う私たちの心がけや行動を改めるところに、金銭に好まれる生活に入ることが可能となる道が拓けると考えられます。
人は、そのモノの性質・本質を知り、その性質・本質にしたがって動く時に、その人の能力を最大限に発揮することができるといわれています。こうしたことと同様で、金銭を大切にするということは、金銭の本質をよく知って、その性質を活かすことにあると考えられるでしょう。
金銭との関係性をより良いものに構築していくことは、これから先の人生において、金銭に困り悩まされることをなくす手立てのひとつです。もし、仮に金銭に悩まされるような時が来た時には、自分と金銭との関係を見直すいい機会がやってきたのだと、その現象を迎えてみてはいかがでしょう。
きっと、恐れ嫌うような出来事であったとしても、冷静に物事を見つめ、改善の方法を見出すことが必ずできることでしょう。
さて、最後に問いかけをしたいと思います。
私たちは、金銭に恵まれる(好まれる)生活を送れているでしょうか。