令和元年の幕開けは「人間とお金の関係」に対する新たな時代の幕開けかもしれません。
「お金」というキーワードで最近話題になっているものが2つあります。
- 2024年上半期の新紙幣発行
- キャッシュレス決済・スマホ決済
リアルなお金「キャッシュ」での変化と
ネット上でのお金の取扱い「キャッシュレス」での新しい流れです。
新紙幣の発行はまだ先ですのでデザイン発表後は話題が途絶えてしまいました。
もう一つ、今年になって急速に広がりを見せているのがキャッシュレス決済とスマホ決済です。
既に使いこなしている。という方もいれば、
気にはなっている。でも、なんとなくよく分からないので「不安」という方も多いかもしれません。
これから日本でも導入の流れが速まりそうなキャッシュレス決済。
実は世界から見ると日本はキャッシュレス決済後進国なのです。
国を挙げてのキャッシュレス決済導入とポイント還元
2019年は「キャッシュレス決済」、特にスマートフォンを使った『スマホ決済』が話題になっています。
昨年末は「PayPay」(ペイペイ)が実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」が記憶に新しいところです。わたしの職場でも、よく分からないけど「なんかお得らしい」と話題になっていました。
このキャンペーン自体は10日間で終了しました。
いろいろな問題点も指摘されていましたが、圧倒的な浸透力で今までスマホ決済を知らなかった多くの日本人に注目され、興味を持つ人が増えたのではないでしょうか。
キャッシュレス決済「消費税5%ポイント還元制度」
そして令和元年に実施予定の大注目キャンペーンが消費税増税に合わせて導入される「2,800億円の山分けキャンペーン」です。
国が消費税の増税に合せて実施する施策の一つで、消費者にとっては最大の目玉となっているのが「消費税5%ポイント還元制度」です。
この制度を利用できるのは、クレジットカードや電子マネーなどいわゆる「キャッシュレス決済」で商品を買う。という決済方法に限定されているのが特長です。
条件等はありますが、キャッシュレス決済を利用することで最大で5%相当がポイントとして返ってくるという仕組みになっています。
まさに国を挙げての大キャンペーン。
開催期間は、令和元年10月1日から令和2年6月30日までの9ヵ月間。
期間限定で開催される予定となっています。
消費税5%ポイント還元キャンペーンの詳細は経済産業省のホームページで公開されています。
現時点(令和元年5月)では、キャッシュレス決済を導入する事業者向けの情報が公開されていますが、今後は消費者向けの案内も公開予定となっています。
「キャッシュレス・消費者還元事業」(経済産業省)
お金は信頼という幻想の上に成立している
「お金」ってなんでしょうか?
最近、放映された三井住友カードのテレビCM(YouTube)が非常に印象的です。
小栗旬さんが「お金ってなんなんだろう?」と、視聴者に疑問を投げかけています。
多くの人は、お金という不確実性の高いものに信頼を置いて、絶対的なものとして大切に抱え込んでいます。
ところが、テレビCMでもあるようにお金ほど不確実なものもありません。特に「現金」というモノで考えた時に、それはもしかすると幻想の上に成り立っているだけのモノかもしれません。
皆さんもご存知のようにお金の起源は物々交換です。
海で獲った魚と山で獲れた動物を交換することで、お互いの地域にとって必要なモノ、不足しているモノとを交換する。
ところがモノでの交換に限界を感じ始めた時、代替手段として「お金」を人間は開発します。
保存ができ、より多くの人が同じ価値を認識でき、持ち運びができる。
人類にとって最大の発明は「お金」かもしれません。
スマートフォンがキャッシュレス社会の中心に
キャッシュレス決済ということに話を戻しましょう。
以前から多くの人はキャッシュレス決済を使っているのではないでしょうか。
クレジットカードや電子マネーは日常的に使っている人も多いでしょう。
お金を使わずに信用で事前決済ができるのがクレジットカード。暗証番号やサイン、金額によってはカードだけで買い物ができます。
事前にお金を入金して利用するのが電子マネー(Suica、ICOCA、nanaco等)です。最近では電子マネーをクレジットカード決済と連携させて現金の入金無しでクレジット決済を利用する方法も増えてきました。
そして、2019年以降話題になっているのがスマホ決済です。最初にご紹介したPayPayを始めとして、楽天ペイ、LinePay、d払い、auPAY、Origami Pay、Kyashなど様々なサービスが登場し、各社はポイント還元のキャンペーンを随時実施することで顧客の囲い込みを狙っています。
以前はTポイント、dポイント、楽天ポイント、ポンタカード等のポイントカード争いが壮絶でしたが、最近ではスマホ決済が話題の中心になってきました。
スマホが中心の社会
スマートフォンが登場した当初、携帯電話と音楽プレイヤーの融合といったレベルの存在でした。
その後、アプリとインターネット機能が充実し、インターネットブラウザ、メール機能、ナビゲーション、ゲーム、書籍といったように、今までは個別に存在していたサービスや機能が「スマートフォン」一か所に機能が集約され、集中し始めています。
そして、現在ではお財布「お金・決済」を新たな機能としてスマートフォンに持たせるようになってきました。
キャッシュレス社会は国の政策
スマホ決済やキャッシュレス決済という言葉が話題になっているものの、日本自体は世界の先進国からみるとキャッシュレス後進国です。
先日は、プロ野球の試合会場(球場)で現金が使えないキャッシュレス化を試みた所、使い方が分からない高年齢層のファンからの不満の声が話題になっていました。
経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(2018年4月)【PDF】では、世界各国のキャッシュレス化比率が紹介されています。
韓国の 89.1%を筆頭にキャッシュレス化が進展している国では軒並み 40%~60%台に到達しています。その中で日本のキャッシュレス化は 18.4%にとどまっているような状況です。
- 韓国 89.1%
- 中国 60.0%
- カナダ 55.4%
- イギリス 54.9%
- オーストラリア 51.0%
- スウェーデン 48.6%
- アメリカ 45.0%
- フランス 39.1%
- インド 38.4%
- 日本 18.4%
- ドイツ 14.9%
経済産業省がキャッシュレス化に取り組む目的
【なぜキャッシュレスに取組むのか】
今後我が国は、少子高齢化や人口減少に伴う労働者人口減少の時代を迎え、国の生産性向上は喫緊の課題といえる。キャッシュレス推進は、実店舗等の無人化省力化、不透明な現金資産の見える化、流動性向上と、不透明な現金流通の抑止による税収向上につながると共に、さらには支払データの利活用による消費の利便性向上や消費の活性化等、国力強化につながる様々なメリットが期待される。
*経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(2018年4月)より抜粋
今後、労働人口が減少する中でも生産性を向上させるためには「お金(現金)を扱うだけの人」はなるべく減らす。そして、現金という不透明な資産をキャッシュレス化によって、国はデータとしてお金を管理し、把握がしやすいものにするということです。
現金に関わる手間や労働力が省ける分だけ、より有益な仕事に労働力を投入できるということにもなります。
つまり、シンプルな作業はコンピューター(AI)に任せ、人間としての能力がより発揮できる仕事に労働力をシフトさせていきたい。という方針だと考えられます。
キャッシュレス社会が生み出す働き方改革
最近話題のキーワードの一つに「働き方改革」があります。
「働き方改革」という言葉からは「休み・休暇」を中心とした「働きやすい環境」という印象を強く受けますが、私は人間としての労働の在り方、働き方をより問われるような時代になってきているのではないかと考えています。
キャッシュレス化が進み、経済産業省が想像するような社会が到来すると、現金を扱うだけの仕事には人間が必要とされなくなります。現金自体の存在が無くなってしまうからです。
現金を扱う仕事だけではなく、機械・コンピューター・AIが置き換わってできる仕事が増えることは容易に想像ができる社会になってきました。産業技術の発達によって、今まで作業を中心に行ってきた人間は必要とされなくなってしまいます。
置き換わられてしまう作業の内容は、単純な作業だけではなく、さらに高度な作業、処理までもAIに置き換わってしまうことでしょう。
少し前までは、工場等の作業現場において人間からロボットに作業が置き換わるということが起こっていました。ところが最近では、工場だけではなく、オフィスや店舗等といった、消費者に近い産業でも置き換わりが起こりつつあるのは実感されていることではないでしょうか。
自分で考えて行動できる人が必要とされる
単純作業だけではなく、人間にはできない高度な作業や処理もAIが入ってくるとなると、どのような人間が必要とされ、残っていくことができるのでしょうか?
それは「クリエイティブな人」です。
自らが生み出し、考え、そして創り出し、行動ができる人。
今までは、親から与えられた環境に育ち、学校教育の方針に従って学び、より大きくて安定した会社に入り、教えられたことを教えられたとおりに、人の顔色を見ながら、より正確にできるように仕事をする人間が必要とされてきました。
ところが、AIが発達することで、人間よりも正確な仕事を人間関係といった複雑な感情とは関係無しに忠実に再現、実行してくれるようになります。
今までの価値観を持った人間は徐々に必要とされなくなってくる可能性があるのです。
時代の流れの速さへの対応が求められる
令和を迎えて感じるのは「時代の流れの速さ」です。2019年の初め頃から急速に変化が始まっているような感覚がありましたが、さらに加速が進んでいるような印象を受けています。
今まで通り、言われた通り、みんなと同じようにやっていては、もしかするといつの間にか流れに取り残されていることになるかもしれません。
難しいことは何もありません。
しっかりと自分自身と向き合い、あなた個人が「個」としてしっかりと自立することが求められる。そんな時代に入ってきているのではないでしょうか。