家族の幸福を願って、汗を流し、我が身を犠牲にする程の働きをしている人が「幸福になれない」と感じてしまうのはどうしてでしょうか。こういった悩みを持つ人は少なくないようです。
なぜこのような矛盾したことが起こるかというと、不幸だと思う人には、必ず共通した盲点があるからです。さらに、細心の注意を払ったつもりでも、見落とされがちな不都合な部分が、固定化・固着化される時に、物事の全体を公平かつはっきり見る能力に欠けてしまうからでしょう。
今回は、盲点といわれるものをはっきりと自覚し、自らが努力を重ねてきたことを無駄にしないようにするためのポイントに注目していきます。
読者の中には、男性、女性、親、夫、妻、姑と色々な立場を持っている方々があるかと思いますが、今回は家庭内の「妻の盲点」ということを切り口に進めていきますので、文中の「妻」を自身の立場に置き換えながら読み進めていただければ幸いです。
1、わがままの愛情と錯覚
人はみな自分の尺度を持って、それぞれ人を推し量る癖を持っているようです。これまでの体験、経験、常識、育ち、しつけ、環境等々の自分では良かれと思うことであっても、様々なことに囚われ、押し付け、独善的になり、相手の真意を知ろうとせずに、嫌がられ、仲が悪くなる元となっています。しかも、相手が思うようにならないことが、相手に対する不足、不満、果てには責め心となって、悪い方への連鎖反応が起こってくるでしょう。
日々の生活の中で自然に身についた直観力や洞察力によって、身構えずとも相手の心を如何に見抜くかという点が大切です。
相手の心を知らぬままであれば、自分の判断だけで《相手のために尽くそう》と懸命に努力しても、その努力がことごとく水の泡となるのは、当然のことと言えるかもしれません。
まして、自分の思いが、相手にとって迷惑なことであれば、その努力が強ければ強いほど、惨めな結果を引き寄せているとも表すことができます。さらに極端に言えば、自分のわがままを相手に押し付けて、それが愛情だと錯覚している状態とも言うことができるのです。
家庭での出来事で例えるなら、熱いお茶が欲しい夫に冷たい水を持っていったり、冷たい水を望んでいる夫に熱いお茶を持っていったりといった状況でしょう。これでは、どうにもなりません。
愛情を注ぎ、相手のために尽くそうと思うのであれば、相手の心をしっかり知り、喜んでもらえるような尽くし方をしたいもの。その為には、常日頃から直観力を磨いておくと良いでしょう。
直観力を身につけるためには、「気づいたらすぐにおこなう」行動を起こすことから始めると効果的です。具体的な例としては、やらなくてはならない仕事を後に伸ばすことなく、さっさと片付けていくことや、お歳暮・お中元などの贈り物に対するお礼状や手紙の返事をすぐに出すこと。さらに、朝、目が覚めたらすぐに起きるなどの行動を積み重ねていくと効果が現れやすいことでしょう。
こうした日常の行動に徹していくとき、人の直観力は自然と鋭くなり、頭の回転も速くなることでしょう。そして、この直観力に洞察力が加わり、さらに愛情がプラスされて、初めて真の幸福に繋がる行動がとれるようになるのです。
2、誤った母性愛
細心の注意を払ったつもりでも見落としやすい盲点に、『“誤った母性愛”』があります。母性愛とは、女性が自分の生んだ子を守り育てようとする、母親としての本能的性質のことを言います。
しかし、この母性愛の捉え方を間違うことで子供に悪影響となって、病弱になったり、悪い遊びや行動に時間を潰す素行不良の状態になったりしてしまうこともあるようです。
望んでいないことが現実に起こることで、苦しみ、泣いている女性が、この世の中にはどれだけ多いことでしょう。そうした悩みを払拭するためにも“真の母性愛”というものに意識を向けてみてはいかがでしょうか。
真の母性愛とは、妻が夫の愛情を全面的に受けて、父親の愛情と、母親の愛情とがひとつに溶け合って、大きな意味での調和が保たれた愛情を、子供に注いでいくことに他なりません。
それには、子供ばかりに心が奪われていて、他のことを顧みる余裕がなない状態では本末転倒です。多く家庭内で見かける状態では、夫をないがしろにし、夫の身の回りの世話もろくにせず、子供にばかり愛情を注いでいる状態のことをいいます。こうした状態では、偏った愛情になってしまいますので、強くなれば強くなるほど、子供の体質も性格も偏り、歪んでいくものと肝に銘じておく必要があります。
つまり、子供を立派に育てるためには、その子供の生命の源である親夫婦が、互いに上手く一致した生活にはまらなければ不可能といえます。そのためにも、自分自身の家庭環境はどのような状態なのか、まずそこから自覚するとよいでしょう。
加えて、嫁姑の間においても同様です。子供や孫が可愛いのであるならば、そして、立派な人間になってもらいたいと願うのであれば、姑を心から尊敬して大切にしていくことです。そして、嫁に対しては孫以上に愛情をかけるべきでしょう。
それぞれの立場や仕事が山積みの中では、どうしても立場関係と優先順位がちぐはぐになってしまいがちです。一度その問題から離れて客観的に見直すことで、これまで見ることができなかったことや、目をそらしてきたことに気がつくことができます。
そうした気づきのようなものが見えた時は、決して見逃さないようにしてください。そのことに気がついた時が最大のチャンスです。真の母性愛を傾けられる女性を目指してみてはいかがでしょうか。
3、物事を暗く受け止める
心配性は、幸福になれない人の最たる共通点と言えるでしょう。どうしても暗く最悪なことばかり考えてしまい、心配を重ね、取り越し苦労をする傾向にあるようです。さらに、こうした心の流れは、時として人の肉体に強く悪い影響を与えます。
また、人間関係においては知らず知らずのうちに、不信感の念へと反転し、いつしか取り返しのつかない大きな溝をつくり、深めることになるのです。
そして、心配性は病にまで、悪影響を与えていきます。例えば、何かいったん病気になると、その病気のことを考えずにはいられなくなり、しまいには他の病まで重なってしまうことも多く、病気がこじれてしまうのです。
「考えすぎは体に毒」と言われますが、まさに典型のパターンでしょう。しかしながら、わかっていてもついついはまってしまうのが、この心配性のパターンで、こういった人々は、数限りなくいることでしょう。
そして、こうした人物に限って、心配することや取り越し苦労を重ねることが“愛情”であると思い込んでいる人が少なくないのです。
もし、そのような状況であれば、普段の生活を客観的に観察し、気づいた点を書き出し、自ら眺めてみてください。「自分の身体と心との関係」や「自分の心の状態と、相手との関係」、そして「親である自分の心と子供との関係」をじっくりと観察することで、自分の心一つで状況が刻一刻と変化していることを感じることができるでしょう。
全てを暗く受け止めてしまう状態では、いくら努力や苦労を重ねていても、実際の幸福を掴むことは非常に難しい状態にあるといえます。反対に、明るく受け止めるように心を転換していくことで、困難に思うことでさえ、解決の糸口を掴むことができ、幸福への道筋を開くことができるのです。
4、幸福な人生を送るために出来ること
今回は、家庭内における妻の盲点という角度で取り上げて展開してきました。それぞれの立場において、様々な捉え方があると思いますが、家庭内において、妻の立場にある多くの女性が、それぞれの家庭環境の中で、家のため、夫のため、子供のためにと、それらの幸福を願って並々ならぬ努力をしていることでしょう。
中には、「自分を犠牲にしてでも…」と、涙ぐましい苦労に苦労を重ねている女性もまだまだ数多く存在している世の中と言えるのかもしれません。それにもかかわらず、幸福な人生を送ることのできる妻と、どうしても幸福になれない妻と、明暗二つに別れてしまうのは一体どういうことなのでしょう。
こうした疑問を持ちながら「わがままな愛情と錯覚」「誤った愛情」「ものごとを暗く受け止める」といったテーマで、3つの盲点について取り上げてきました。
端的にいえば、これまでの内容を基に、自ら気がついた点について、意識を改めていけばいいということになります。しかし、意識改革を上手くできるような意志の強い人はいないと言えるでしょう。
そこで、日常的に行動できる内容を3点ご紹介したいと思います。是非挑戦してみてください。
1)真の愛情の持ち主となりましょう
真の愛情の持ち主になるためには、日常生活の中で“気づいたらすぐする”行動に徹して直観力を磨くことから始まります。
行動を重ねていくうちに、通常見抜くことができないようなことを観察力によって見抜き、洞察力を身につけることにつながるでしょう。同時に、常に相手に自らの心を向けていくことがポイントです。
《直観力+洞察力+愛情》で、息の合った家庭となっていくでしょう。
2)夫婦和合の家庭づくり、真の母性愛に目覚めましょう
大切なのは、「互いの欠点を指摘し合ったりなどしないで、うまくやっていくこと」ですが、うまくやっていくということは、我慢をすることではありません。相手の美点、長所を見て讃えることや、お互いに「おかげさま」と感謝し合う生活をすることです。
そして、夫の愛情をそのままに受け取り、姑を大切にして、子供には“真の愛情”を注いでいけるような基盤、家庭づくりに力を尽くしていきましょう。
3)心配を捨て、明るく朗らかな生活に徹しましょう
“心配するな”といったところで、心配は消えるものではないでしょう。しかし、心配の連鎖を断ち切ることはできます。その方法は、心配をする暇がないほど“すぐに行動する”ことに加えて、ひとつひとつの区切りをつけてしっかりと後始末していくことです。
5、最後に
日常的に行動できることを3つご紹介しましたが、もうすでに取り組んでいるのであれば、行動した時に動く“心の様子を観察”してみてはどうでしょう。私たちは何か行動した時に、必ず心が動くものです。そうした心の変化を客観的に観察することで、『次に何をしたらいいのか』という問いの答えを発見することができるのです。
実際の「行動」と「心の動き」に注目しながら、見落としていたところを発見し、幸福を掴んでいってはいかがでしょうか。