「なんでこの子はこんな風なんだろう?」
子育てしながらそう、悩んだことはありませんか?
子どもの性質や性格を方向付ける要素はいくつかあります。
今回は、多くの人はあまり認識していない、しかし子どもの人生の初めに関わる非常に大切な要素、バーストラウマについてお話ししましょう。
バーストラウマって何?
日本語に訳すと、出生時心的外傷、となります。
無意識であると思われている胎児や新生児でも、出産前後の出来事によって、トラウマを受けることがあるという考え方です。
現代心理学の父フロイトの弟子のオットーランク氏はその著書の中で、人間の様々な神経症症状や精神病症状の原型はほとんがバーストラウマに起因している、と書いているそうです。
どうしてバーストラウマがつくの?
バーストラウマの発生する要因についてお話ししましょう。
①胎児期
妊娠中に、母親が強い肉体的・精神的苦痛を受けていると、バーストラウマになりやすいと言われています。
しかし最近では、母親のお腹の中にいるときの記憶を語った胎内記憶が本や映画で扱われたりして、胎児には鮮明な感覚や意識があるのではないか、と認識されつつあります。
医学研究的にも、
妊娠中にストレスをかかえていた母親の子どもは、穏やかな気持ちで過ごした母親の子どもに比べると、多動、運動性の問題、注意力欠陥を持つリスクがはるかに高くなる、
などの報告がされていたり、
母親の感情や気分はホルモンなどに影響し、それが血液で子宮に運ばれ、胎児の脳に届く
ということがわかってきています。
②出生時
出生時は以下の理由でバーストラウマが発生すると言われています。
・陣痛促進剤などをもちいていること。
・帝王切開・吸引分娩などで生まれていること。
・陣痛や出産が始まることにより、へその緒からの酸素と血液が途絶え、赤ん坊が酸欠状態になり、死の恐怖を覚えること。
・難産などで、赤ん坊が蘇生処置を受けていること。
・笑気ガスやモルヒネを出産時に用いていること。
地球上で生きる人間、誰しもが経験する母親のお腹から出る経験、出生。
出生がバーストラウマの要因になるなんて、と驚かれる方もいるかもしれません。
しかし実は、出生が一番バーストラウマの要因になりやすいと言われています。
ここで赤ちゃんの立場にたって出生を考えてみましょう。
母親のお腹の中で、羊水にぷかぷか浮かび、外界の刺激を羊水を通して穏やかに感じながら、過ごしてきました。
それが出生のプロセスで一変します。
狭い産道を通るときは、赤ちゃんにとっても死をも意識する相当な苦痛だと言われています。
母親が出産中に呼吸を止めると、赤ちゃんも酸欠状態になってしまいます。
そうやって苦労して生まれてたところはまぶしい光に機械音、見知らぬ人がたくさんいる分娩室。初めて経験する重力と乾いた空気。
出生のプロセスを
「のどかな田園からいきなり車と機械のひしめくニューヨーク市のど真ん中に連れていかれるようなものだ」
と表現した産科医もいます。
もし赤ちゃんに意識があれば、心の傷になってもおかしくないのではないでしょうか。
※こういった出産をしたから、子どもの人格が決まってしまう、というのではなく、そうなりやすい要因を持っている、というように捉えてください。
無痛分娩
陣痛誘発剤・陣痛促進剤を用いた分娩
胎児の生まれるタイミングやリズムが狂う可能性があり、混乱したり恐怖を感じたり、侵略された支配されたと感じるようになるとされている。
のちの人生ではストレスを受けると、怒りや憤りを感じやすくなる。
鉗子分娩
この方法で生まれた人は、スキンシップをキライ、撫でられたり抱きしめられたりすることに恐怖心を持つ傾向がある。
またストレスが、頭、首、肩の痛みとなって現れる傾向もある。
帝王切開
③出生後
出生後は主に以下の理由でバーストラウマが発生すると言われています。
・生後から3ヶ月間、母親があまり抱いてやらないこと。
・母親の心音を聞かせてやらない形で赤ん坊を抱き続けること。
・母乳をあまり飲ませなかったこと
母親とお腹の中でずっと一緒にいたのに、出生によって今までと一変した環境に置かれた上に、母親と離れなければならなくなったら・・・
多くの場合、見捨てられたような印象を受けバーストラウマも大きくなりやすいようです。
一番の理想は生後すぐ、母親の心音が聞こえる状態で赤ちゃんを母親が抱き続けること。
そうすることで生まれてきた新しい世界に安心感を覚えるようです。
また、母親とのきずながしっかり結ばれることで、さらにこの世界を安心して歩んでいけるベースが作られていくようです。
バーストラウマの症状とは
胎児期、出生時、出生後に死の恐怖や疎外感を経験しバーストラウマになると、
「自分は生まれてきてはいけなかったのではないか」
「生きていてはいけないのではないか?」
などという自分自身を否定する情報を心の奥底に持つようになります。
赤ちゃんは頻繁に泣くもの、と誰もが思っていますが、バーストラウマが少ない赤ちゃんは、泣いてもせいぜい1日20分くらい、という説もあるようです。
バーストラウマは恒常的に微妙に心の揺れを生み出しているとも考えられています。
自分を否定する情報が心の奥底にあるので、ものごとの見方も否定的なものになりがちです。
否定的にとらえがちになると、些細なことでも心の傷が増えていき、インナーチャイルド(乳幼児期から成人するまでの間の心の傷)になっていきます。
バーストラウマ・インナーチャイルドの影響を受けると、感情の波や情緒不安定を生み出し、聞き分けの悪い子どものような思考パターンやふるまいをさせます。
そして成長するにつれて、人間関係・健康・お金などの現実的な問題や、精神的な問題となって影響が出てくるようです。
子どもにバーストラウマがありそうと思ったら
ここまでお読みいただき、自分の子どもにも当てはまりそうだ、と思われた方はいらっしゃったでしょうか。
(あんな出産だったんだから、自分の子どもはバーストラウマが大きいかもしれない)
と思われたとしても、ご自身を責める必要はありません。
とくに現代の出産方法については、バーストラウマを大きくしている側面が否定できない反面、出産の安全性を高めてきたのも事実です。
あくまでも子どもを理解するひとつの要素としてバーストラウマを捉えていただくことをお勧めします。
バーストラウマが大きくても、そのあとの愛情のこもった育児で克服できる、と強調している研究者たちもいます。
大切なのは、もし子どもが感情的になったり、ものごとを否定的に捉えていたりしても、ありのままの子どもを受け入れ、子どもへの愛情をたんたんと注ぎ続けること。
そうすることで、バーストラウマがあったとしても、それが不必要にインナーチャイルドを増やし続けることを抑えられ、子どもはイキイキと楽しく自分の人生を生きる土台を築いていけるでしょう。
まとめ
バーストラウマ、という概念を知っていかがでしたでしょうか。
子どもを理解する一要素として心にとめていただければと思います。
ただ、これから出産の予定があるなら、自然なお産を無理なくサポートしてくれるような病院や産院、助産師さんを探してみるのはおすすめです。
しかしあまりに理想の出産にこだわりすぎても、それはそれでバーストラウマになる可能性もあります。
また、どんなに理想の出産をしたとしても、バーストラウマがゼロになることは今のところないようです。
適正量のバーストラウマは人間を人間たらしめるのに必要、という説もあるようです。
そして、ありのままの子どもを受け入れるのに難しさを感じているとしたら、あなた自身がバーストラウマ・インナーチャイルドの影響を受けている可能性があります。
ご自身がどのように生まれたか、どのように育ったか、を振り返ってみることで、子どもへの理解がより深まるかもしれません。
子どものこころを理解することは、自分のこころを理解することにつながっています。