うちの子はわがままで困っている
なんてことはありませんか。
どうしてこんなにわがままなんだろうか?
もともとの性格・性質なんだろうか?
色々考えるものの、答えが出なくてぐるぐるしてしまうかもしれません。
子どもなんてそんなものよ、という年長者のアドバイスをもらうものの、わがままを言う我が子を前にすると、そんなものなんてとても思えないこともあるでしょう。
どうして子どもはわがままになるのでしょうか。
脳と心の視点から探ってみたいと思います。
わがままとは
まず「わがまま」とはどういうものなのか、掘り下げてみたいと思います。
辞典には以下のように書かれています。
自分の思いどおりに振る舞うこと。また、そのさま。気まま。ほしいまま。自分勝手。
- デジタル大辞泉
また、「自分勝手」とは、精選版 日本国語大辞典では以下のように定義されています。
自分の好きなように図って、他人の都合は考えないこと。自分の都合だけを考えること。
そして、「わがまま」は人との関りにおいて生まれる概念です。
一人きりで無人島に暮らしている人に対しては、自分の思い通りにふるまったところで、わがままだ、とはならないでしょう。
また思いどおりにふるまっている人を見て、その人のことをわがままだ、と思う人もいれば、自由だね、などと肯定的に捉える人もいます。
何をわがままと捉えるかは、人それぞれとも言えそうですが、一般的にはどんな人に対し「わがまま」と形容するのでしょうか。
一般的に「わがまま」と形容される人とは
大人に対して、「わがまま」な人、という言葉を使うときは、子どもっぽいところがあるような人に対し使うように思います。
本当は相手の都合をわかっているはずなのに、わかろうと思えばわかるはずなのに、自分勝手にふるまう人。
例えば、幼稚園の保護者会でお祭りの出店の話し合いをしていて、みんなの意見が「わたあめ」でまとまりかけているときに、「あたしりんご飴が食べたいから絶対りんご飴がいいですー」なんて自分の意見を押し通そうとしたり、「わたあめなんていや!」とぷくっとむくれてしまうような人は、「わがまま」な人、と言えるかもしれません。
これが、りんご飴がいかに素晴らしいかを語り、徐々に賛成者を増やしていくような人は、自分の意見を押し通そうとしているところは変わりなくても、「わがまま」な人とは言われにくいでしょう。
自分の欲求に正直、かつ短絡的で、感情的で、一緒にいる人が不快になるような人が「わがまま」なのかもしれません。
「わがまま」という言葉には、人を不快にさせる人、人に迷惑をかける人というネガティブな意味が内在されているように思います。
人はいつから「わがまま」になるのか
では、人はいつから「わがまま」と表現されるようになるのでしょうか。
赤ちゃんは自分の思いどおりにふるまいます。
自分の欲求を正直に表現します。
欲求が満たされない時も素直に表現します。
でも、普通は「わがまま」とも、「自分勝手」、ともみなされないでしょう。
何をしても泣き止まない赤ちゃんを前に、「この赤ちゃんはなんてわがままなんでしょう」などという人は、めったにいないでしょう。
(いるかもしれませんが 笑)
なぜなら、赤ちゃんは他人の都合を想像できるほど意識が広くないことは、ほとんどの人がわかっているからです。
ではいつから子どもに対し「わがまま」という言葉を使い始めるのでしょうか。
子どもに自我が芽生え始めると同時に、子どもがこちらの都合もなんとなくわかり始めた感じがする頃なのだと思います。
特にイヤイヤ期には「わがまま言わないで!」など、頻繁に使われるようになるでしょう。
イヤイヤ期の子どもの「わがまま」
イヤイヤ期は、歩けるようにって、体も動かしやすくなってくる時期、「こうありたい」「こうしたい」というような欲求が沢山出てきます。
周りの人がしているようなことを自分もしてみたい、それは自立への一歩でしょう。
この色じゃなく、あの色がいい、など、自分らしさの発現の一歩でもあるでしょう。
今まで親にされるがままになっていたようなことに対しても、自我が出てきます。
「イヤッ、自分で靴はくー!」
しかし親としては、されるがままになっていてくれていた方が都合がいい時もあるわけです。
朝の時間がない時に、うまく靴がはけないもどかしさで泣きわめきだされたりなんてしたら、「なんてわがままなの!」と表現したくなるでしょう。
また、反対に、自分でやれるのに、やってもらいたがる場合もあるでしょう。
親に対する自分の欲求を満たしてほしいという期待や甘えです。
特に下に弟や妹が生まれたときには、そうなりやすいかもしれません。
親としては下の子の世話で忙しいのに、「あーんしてー(食べさせて)」なんて勝手に期待されていい迷惑です。
「忙しいので今は自分で食べてね」と親の都合を考えるように促しても、理解されずに、むくれたりだだをこねられたり、泣き出したりされたら、「わがままはよしてちょうだい!」と叫びたくなるでしょう。
「わがまま」に関わる前頭前野
イヤイヤ期は、脳の前頭前野が未発達なせいで欲求や衝動を抑える「抑制機能」が働かないために起こると言われています。
NHKスペシャル『ママたちが非常事態!? 最新科学で迫るニッポンの子育て』のホームページには以下のように書かれています。
その(イヤイヤ行動の)原因は、脳の表層にある「前頭前野」と呼ばれる部分が、まだ機能し始めていないことにあります。
前頭前野は、目標達成のために衝動的な欲求を抑える脳機能の中枢。
これが未発達なうちは、脳の中心付近からわき起こる本能的な欲求を抑えることが出来ず、イヤイヤ行動が引き起こされてしまうのです。
また前頭前野は、他人のこころの理解、社会性、モラルなどに深く関係しています。
沸き起こる本能的な欲求を抑えられない、感情コントロールができない、他人のこころが理解できない、のが前頭前野未発達の子どもの特徴だとしたら、その行動や態度を、他人の都合を考えない「わがまま」とするのは、子どもの都合を考えていない大人の都合のようにも思われます。
また前頭前野が成熟するのは大人になってからと言われています。
成人するまでの子どもが「わがまま」とみなされる行動や態度をするのは、脳の発達の視点から考えると、ごく自然なことなのかもしれません。
しかし、脳の発達の視点だけみると、成長するにつれて、わがままは収まってくるはずなのに、かえってわがままが複雑化したり巧妙になっていく場合があります。
また同じイヤイヤ期の子どもでも、ものすごく手のかかる子どもと、そうでない子がいます。
もちろん、子どもの元々の性質や性格にもよるのかもしれませんが、それだけではなさそうです。
次にお伝えしたいのは、「わがまま」と思われる行動や態度を刺激する、大きな心理的要因、それはトラウマ~バーストラウマとインナーチャイルド~です。
「わがまま」の大きな心の要因のひとつ、トラウマ
トラウマは形成された時期により、二つに分類されます。
胎児期~新生児期についた心の傷のことをバーストラウマ、乳幼児期から成人するまでについた心の傷のことをインナーチャイルドと呼びます。
詳しくはこちらを参照してください。
[blogcard url=”https://www.yagamieiko.com/mind-emotion/kodomo-birthtrauma-innerchild/”]
特に出生が子どもにとって辛くて苦しいものだった場合、バーストラウマは大きくなる傾向にあります。
バーストラウマが大きければ大きいほど、「自分は生まれてきてはいけない人間だ」「無価値な人間だ」「誰にも必要とされない人間だ」というような自分自身を否定するネガティブな情報を心の底に持つことになります。
ネガティブな情報を心の底に持っているので、些細なことでも自分が否定されたと感じ、ネガティブな感情が揺れやすい傾向にあります。
(バーストラウマが少なくうまれた赤ちゃんは、必要以上に泣くことはとても少ないと言われています。)
バーストラウマが大きい子どもは満たされない想いを常に抱えているので、他人への欲求や期待も大きくなり、それが裏切られた時の反応も大きくなりやすいです。
そして、自分の欲求や反応を親に受け入れてもらえず、「わがまま」などと言われ、否定されたりダメ出しされたりすると、トラウマはインナーチャイルドとなり、更に大きく、複雑になっていきます。
そして、どんどん「自分はダメな人間だ」「どうせ愛されない」「わがままで迷惑をかける存在だ」などのネガティブな情報を心の底に積み重ねていきます。
そして、ただ自分の欲求を表現するだけでなく、「これだけやっても愛してるよね?」「愛してるならこれしてくれるよね?」というような親を試す行動や態度、「どうせ自分はダメなんだ」ということを証明するような行動や態度をとるようになっていきます。
たいして欲しくもないおもちゃやお菓子をねだったり、到底無理な要求をしてきたり、ストレートではなくひねくれた言い方をしてきたりします。
でもわがままを聞き入れてあげても、満足するのは一時的。
再びトラウマがうずきだすと、またわがままを繰り返します。
感情の表現も、ただ泣く、というような単純なものから、ものに当たる、たたく、すねる、むくれる、黙る、無視する、などと複雑なものになっていきます。
まとめ
脳と心の観点から子どもの「わがまま」を探ってきましたが、どうやら子どもは「わがまま」になりたくてなっているというよりは、何かに突き動かされて結果的に親にとって「わがまま」に思えるような行動や態度をしてしまっている、と言えそうです。
私も、親から「わがまま」と言われて育ちました。
しかしどうして「わがまま」になってしまうのか全然わからず、「わがまま」をやめようと思ってもやめられず、「わがまま」で親を困らせる自分がとても嫌いでした。
そしてバーストラウマとインナーチャイルドを取り扱うヒーリングを受けて、自分の「わがまま」にはトラウマがかなり影響したことを実感すると同時に、夫に対するわがままが減っていきました。
子どもの「わがまま」に困っている、という方は、子どもも「わがまま」になりたくてなっているわけではないのかも、という視点を持ってみませんか。
その視点を持つだけでも、子どもを客観的に見ることができて、心に余裕が持てるかもしれません。
心の余裕を持てると、こどもの「わがまま」にネガティブに反応することが減っていくでしょう。
親が心の余裕をもって子どもと接することができれば、子どもの「わがまま」も落ち着いてきやすくなります。
なぜなら親のネガティブな反応が、「わがまま」を更に刺激するからです。
「わがまま」で感情的な子どもを前に心の余裕を保つために、具体的にはどんなことをしたらいいのかは、こちらの記事が参考になると思います。
[blogcard url=”https://www.yagamieiko.com/mind-emotion/child-emotion/”]
脳の観点から見ると、子どもはみーんな「わがまま」なのかもしれません。
子どもの「わがまま」を心の余裕をもって受け入れる大人が増えれば、「わがまま」はネガティブな言葉でなくなり、幸せな親子関係が増えていくように思いませんか。
もし子どもの「わがまま」に心の余裕がなく、どうにかしたいという場合は、ご相談くださいね。