幸せになりたい、心の中でそう願いながら大切な人との関係性に苦しんだり悩んでいませんか?
一緒にいると苦しい、でも離れることができない
もしそう感じているなら、その関係性は共依存と呼ばれるものかもしれません。
共依存は、必ずしも当人が苦しいと感じるものばかりでもなく、表面的には居心地の良い関係性の中に潜んでいる場合もあります。
また当事者が気づかないうちに進行してしまい、関係性が深まれば深まるほどそこから出ることが難しくなってしまいます。
この記事では、愛情という名の支配によって人生から自由を奪ってしまう「共依存」の問題点と、共依存を解消して幸せな人間関係を築くするための方法について模索していきます。
共依存って、どんな関係?
共依存は「当事者同士がその関係性に無自覚に依存していて、離れたいと思っても無意識にその関係性を保つように力がかかっていて逃がれられない状態」とも言えます。
もともとはアルコール依存症の家族の中に起きる「患者である家族を世話したり看護する立場」と「サポートされる(アルコール依存症の)本人」の関係性の特徴を表す概念として生まれたことばです。
典型例としては、アルコール依存の夫は妻に多くの迷惑をかけるが、同時に妻は夫の飲酒問題の尻拭いに自分の価値を見出しているような状態である。
こういった共依存者は一見献身的・自己犠牲的に見えるが、しかし実際には患者を回復させるような活動を拒み、結果として患者が自立する機会を阻害しているという自己中心性を秘めている。
出典・ウィキペディア
現在の日本ではアルコール依存症だけでなく、以下のような関係性に共依存の関係が見られます。
- 親やパートナーからのモラハラやDVに耐える関係
- ギャンブルや買い物依存症の借金を穴埋めするパートナーや家族
- 過干渉な親と本音を言えない子供の親子関係
- 自己価値を証明したり、承認欲求を相手によって満たすことが目的の恋愛関係
共依存関係は、一見すると献身的に見え、共依存者は「だってあの人は私が見捨てたら生きていけません」などの発言をすることが多い。しかし行きすぎて他人の世話をすることは、当人の能力を奪い、無力化し、その人の生殺与奪を自分次第とする支配になり得る。愛情という名に「完璧に支配しているという快感」を得たいという自己中心性が隠されている。
出典・ウィキペディア
共依存は、両者が同時に苦しさを感じているわけでもなく、むしろ「離れたいのに離れられない」と片方が苦しんでいても、相手はむしろその関係性に居心地のよさを感じているということもあるかもしれません。
当事者が苦しみを感じている場合もそうでない場合も、「本来の自分を生きる」という自由をお互いに束縛してしまっているという意味で、同質の問題をはらんでいると言えます。
共依存になりやすい人の特徴 〜私の体験から〜
共依存の関係性になりやすい人の特徴はどんなものでしょうか?
- 他人の面倒見が良い
- 支配欲求がある
- 愛情に飢えていて、見捨てられ不安がある
- 自分と他人との境界線が曖昧で、同調しやすい
- 本音でのコミュニケーションが苦手
- 自分の都合が良いように周りをコントロールしがち
- 断ることが苦手で、引き受けてしまった後で後悔したり恨んだりすることがある
- 人に借りは作りたくないと強く思っている
- 自分のことより他人のことを優先するなど自己犠牲的
- たとえ相手の問題でも自分が悪いのかもと罪悪感を持ちやすい
- 他人からの(精神的、身体的な)侵入を許してしまう傾向がある
- 自分がしたことに見返りを強く求める気持ちがある
- 被害者意識が強い
- 人の感情に敏感で、波風を立てぬよう我慢してしまう
- 分離感への怖れが強く、好き嫌いの感情がわからなくなっていても相手にしがみついてしまう
上に挙げたものの中には、同じ性質の表と裏を表現しているものもあります。
たとえ一方に強くこのような傾向が出ているように感じられるとしても、根っこは同じもの(自己肯定感の欠如)を両者が持っていて共依存関係が成立しています。
自分を「犠牲者」と感じている場合などは認めづらいかもしれませんが、相手に見えていることは自分の内面にもあることに気づくことも大切です。
私自身、自他の境界線があいまいという生まれながらの性質もあり、幼少期から親を怒らせないようにと常に親の顔色をうかがうクセがありました。
自分の力で生きることができない小さい時は誰しも親に依存して生きているので、感受性の強いこどもの場合は親の感情を敏感にキャッチしてしまい、自分の身の安全を守るために常に親の機嫌を取って先回りして行動することを学習して育ちます。
幼少期の親子関係での振る舞いは大人になったからの恋愛においても同じパターンを繰り返すことが多く、自分の本音より相手の気持ちを優先してしまうという行動のクセから共依存を作りやすくなります。
私の場合は親からありのままの自分を認めてもらえていると感じる体験もあまりなかったので、親に認めてもらうために頑張らなければという生き方が身についてしまっていて、恋愛や結婚生活においても「誰かに自分を認めてほしい」という気もちがとても強く、苦しくてもとにかく頑張り続けるということをしていました。
共依存の関係の根っこにあるのは、「相手に認められることで自分の価値や愛されていることを感じたい」というもので、その裏には「自分の価値を自分では認められない」という苦しさがあります。
恋愛は同じ問題を持った相手と惹かれ合いやすく、互いにその苦しさを持った状態で親密な関係になると、最初は良いのですが潜在的にある「自分を認めてほしい」思いが、次第に相手に対する「自分の思うように行動してほしい」というコントロール欲求になったり、自分が犠牲になることで愛をもらおうとするような潜在的な’取引’によって成り立つ共依存の関係がはじまります。
そしてその取引が成立しないと相手を傷つけるという衝動的な行動をしたりするようになり(小さな子供が母親に駄々をこねているような状態ですね)その結果、関係性は破綻する方向に向かいます。
そういう典型的なプロセスをふんで、私の結婚生活も互いをひどく傷つける形で終わりを告げました。
上にあげた共依存になりやすい人の特徴のすべての項目も、共通して「根深い自己否定」という苦しみがベースになっていると言えると思います。
共依存の問題点
上に挙げたように、共依存であることで引き起こされてしまう問題には以下のようなものがあるでしょう。
・お互いに、無意識に自分の価値を苦しいはずの関係性の中に見出しているため、その関係t抜け出せず、両者ともに自分にとって本当に幸せな人生を生きることができなくなってしまう。
・無意識レベルで、相手をコントロールしようとしていることを「愛情」と思いそれによって込みそれによって 「愛情深い自分」と言う偽りの自分を肯定しているため、深層心理にある他人に認められたいという欲求や、本当の自分に対する自己肯定感の低さに気づけなくなる。
・ コントロールされている側も、その支配が愛情だと思い込み、拒絶すると相手を傷つけると感じてしまったり、どれだけ苦しくても、なぜ自分が苦しいのかわからないため、「愛情を素直に受け取れない自分」を否定してしまう。また、自分には自立して生きる能力がないと思い込んでしまって目に見えない支配から抜け出せなくなってしまう。
共依存によって起きている問題を、具体的にアルコール依存者の家族の例でそれぞれ分けて見ていきましょう。
患者を支えているという認識を持っている家族側は、自分自身で生きる価値を見出したり自分を満たすことの代わりに、相手の人生を幸せにすることや相手を助けることに自分の生きる価値を見出しています。
このため患者が本当に回復してしまうと「支えることによる自分の価値を見出せなくなる」ため、患者のアルコール依存を認める方向に無意識に言動を起こし、患者はアルコール飲酒をさらに深めてしまう・・。
これは心理学でenabling(可能にさせる)=イネーブリングと呼ばれる状態です。
上の場合は、無自覚にアルコール依存の家族に「お酒を飲み続ける行為をさせている」ということです。
一方患者側は、家族によって行われているイネーブリングによって自分の行動を変えられないことに「やっぱり自分はだめだ、自分にはできない」という否定的な思いをさらに強化していくという形で、悪循環になっていくわけです。
共依存になってしまう本当の原因
共依存を作ってしまう原因は、幼少時の養育者との関係や生育環境が大きく影響していると言われます。
幼い頃に「ありのままの自分」で受け入れられるなど、自分の存在価値を充分に感じる体験があまりないまま育ってしまった場合、他人に過度に愛情や承認を求める生き方となってしまう傾向があります。
バーストラウマと言われる出産前後の不安やショックからできてしまう「分離感」が大きい場合もまた、誰かに頼らず一人で生きることへの不安が強くなってしまうことがあります。
自分は生きる価値のある存在で充分に愛されているという自尊心や自己重要感が低ければ低いほど、他人に認められたり愛されたりすることでしか自分の存在意義を感じることができなくなってしまうのです。
また、親自身の自己肯定感が低い場合は親子関係が共依存となってしまい、気づかないうちに「子供の自立」を阻んでしまっているケースも多く見られます。
一般的に、子どもの(感情的・身体的な)欲求を汲み取って世話する親は良い養育者とされるが、共依存の親が行う世話は、効果性に乏しかったり有害であったりする。子どものニーズをくみ取ることは必要であるのだが、それは子供の成長において一定期間のみであり、共依存の親はそれを継続してしまう。
出典:ウィキペディア
アルコール依存者の家族のケースと同様に、親の認識としてはあくまでも愛情からやっているので、それが結果的に共依存となっていて子供の自立を妨げていることに気づくことは難しいようです。
大人になってからのパートナーシップなどの親密な人間関係は、実際には幼少時の親子関係の中で自然と培われていった人間関係の癖や習慣の影響が大きいので、親子関係を改善する取り組みをすることで、恋愛やパートナーシップの苦しい関係性が変化する場合もあります。
共依存を卒業する5つのステップ
具体的に共依存を克服するためのステップとしては、以下のようなものが重要となります。
1、共依存を認める
まずは自分が相手と共依存の関係であるということを認めて受け入れましょう。
「もしかしてこの関係って共依存?」から「私は相手と共依存となってしまっている」と心の中でではっきりと認めます。これが克服への最初の大きな一歩となります。
2、自分を誰より大切にする
共依存の関係においては自分を犠牲にしても相手を助ける立ち位置に立ちやすいので、まずは「自分を誰より大切にする」ことを心に決めて、これまでのパターン化された行動に少しずつ変化を起こしましょう。
3、自分の本音をいつも感じることを習慣にする
自分を誰より大切にするためには、自分の本音を常にわかっていることが必要です。共依存の関係では、相手の顔色を伺うがあまりに、自分が本当に感じていることがわからなくなっていることも多いので、日常の小さな一つ一つの選択のたびに、「私は本当はどうしたい?」と問いかけるなど、自分の本音に耳を傾けることを習慣にしていきます。
4、自分の本音を表現するトレーニング
自分の本音がキャッチできたら、少しずつでも相手に対して率直なコミュニケーションを取るよう意識してみましょう。最初は相手の反応にビクビクしながら、ということもあるかもしれませんが、簡単に引き下がらず頑張って少しずつでも行動にうつしてみてください。
はじめは慣れないことでも回数を重ねるうちに必ず慣れてより自然体でできるようになると信じて続けましょう。少しでも自分の気持ちが表現ができたら自分を褒めて認めるようにするなど、自己を肯定する小さな成功体験を積み重ねていくと良いでしょう。
5、共依存は一人で卒業する
共依存は必ずしも相手と同意して卒業するものではないことを覚えておきましょう。
一人になってしまうような怖さや不安、心細さを感じながら「まずは自分から手を離す(相手との関係性から出る)」と決め、自分の相手に対する言動を少しずつ変化させていきます。
自分が変わることで相手も自然と変わるというのが常ですが、そこは期待を手放してまずは自分のやるべき行動にのみフォーカスできると理想的です。
まとめ
共依存は相手を変えて繰り返されます。
親子関係で共依存だった場合、同様の関係性を恋愛や夫婦の間でも作ってしまう傾向にあります。
縛り合う関係に苦しみたとえ別れたとしても、結局はまた次の相手とも同じ関係性を作ってしまう・・というように。
共依存を本当にやめるのは、それなりに時間のかかる取り組みになるかもしれません。
苦しい関係性の連鎖をやめて本当に幸せになるためには、「これまでの生き方を根本から変える」という強い決意が必要です。
共依存体質を本当に卒業できる日まで心に留めて置きたいたった一つのことがあります。
それは、
共依存は、結局は誰も幸せにしない
という事実です。
自分と大切な人の本当の幸せのために、自分と相手の生きる力を信頼し、これまでの関係性を手放すと心に決めることから始めてみてはいかがでしょうか。