子育て中の方を見回してみると、母親としての今の自分を否定し、理想の母親像を追及してしまう傾向がある方が多いように思います。
インナーチャイルドの観点からその理由を探り、理想の母親像を手放す5ステップをお伝えします。
理想の母親像って?
理想の母親、と聞いてどんな人物を思い浮かべるでしょうか。
・ キレイで穏やか、いつもニコニコしているお母さん
・ 子どもに寄り添い、子どものよき理解者であるお母さん
・ 家事や片付けが完璧なお母さん
そんな意見が多く出そうに思います。
有名人では「黒木瞳」さんが理想の母親ランキング一位とのこと(2014年ナチュラルグラッセアンケートより)。
エイジレスな美しさで、仕事もプライベートも手抜きがないような感じは、確かに理想の母親のイメージですね。
ここ日本では特に、理想の母親とは夫や子どものことを優先して考え、家族の幸せのために生きる人、という幻想が根底にあるような気がします。
また理想の母親、ときっちりしたイメージではなくても、無意識に「母親とはこうあるべきだ」と、自分を律している人も多いのではないでしょうか。
理想の母親を目指す危険性
理想の母親を目指すことは必ずしも悪いことではありません。
理想を目指して日々努力して、理想が現実になる達成感は素晴らしいものでしょう。
しかし子育てにおいて、理想の母親像を過剰に追い求めるのは危険なように思います。
なぜなら、子どもは親の理想通りに動かないことも多いからです。
いやいやと泣きわめく、やれと言ったことをやらない、ものは散らかす、ぼーっとして上の空。
イライラしたり、心配したりで、つい声を荒げてしまったり、心にもないことを言ってしまったりする。
ニコニコ穏やかなお母さんでいたいのに、子どもがそうさせてくれない。
そうやって子どもに振り回され続けると、家事や片付けに充分手が回らなくなったり、子どもに寄り添う気力も失われていく。
そういう場合、理想の母親を追い求めれば追い求めるだけ、現実とのギャップがストレスとなってのしかかってきます。
またストレスは蓄積されると、体調や感情が不安定になります。そうなるとますます理想の母親から遠ざかっていきます。
それでもなぜ、理想の母親になりたがってしまうのでしょうか。
理想の母親像とインナーチャイルドの関係
自分以外のものになろうとする
理想の母親になりたがる原因のひとつに、母親自身のインナーチャイルドがあります。
インナーチャイルドとは幼少期から成人するまでの間についた、心の傷、満たされなかった想いのことを指します。
小さいころありのままの自分を親から認められなかった場合、ありのままの自分ではだめだというインナーチャイルドが形成されます。
例えば、母親と離れるのが寂しくて保育園に行きたくないと泣き喚いたとします。母親はイライラして怒鳴りつけるか、困った顔をします。
泣き喚く度に、母親に怒鳴られるか、困った顔をされ続けると、泣きわめく自分はダメで、母親に愛されない、とインプットされます。
そして愛されるためには、寂しい気持ちを抑えて、母親の求める行動(この場合素直に保育園に行くこと)をする必要があると学んでいきます。
そうして成長して大人になると、愛されるためには・認められるためには、他者が求める自分以外の何者かにならなければならないような感覚に支配されるのです。
その感覚が、過剰に理想を追い求めさせる原因となります。
どんな母親を理想とするかもインナーチャイルドの影響
子どもを自由にさせてあげる母親を理想とする人は、自分が小さいころ、親から自由にさせてもらえなかったインナーチャイルドを持つかもしれません。
そういう人は、自分を犠牲にしても子どもの欲求を満たすべきだ!、という理想を追い求めてしまいます。
しかし、子どもの欲求を満たそうとすればするだけ、子どもは親の限界を超えた欲求をしてくることも多いのですが。
また反対に、厳しく親からしつけられて、それが正しいと思い込んで育った人は、しっかりしつけができる母親を理想とする可能性があります。
そういう人はいくら子どもをしつけても、まだまだしつけ足りない私はダメな母親だ、という気持ちになることが多いかもしれません。
なぜなら「ありのままの自分ではだめだ」というインナーチャイルドをベースとして理想の母親が設定されていると、何をやってもどうせダメな自分、という現実が繰り返されてしまうからです。
理想の母親像を手放す5ステップ
過剰に理想の母親像を目指すことがインナーチャイルドの影響だとしたら、理想の母親像は手放してよいものかもしれません。
もしあなたが理想の母親になれない自分に大きなストレスを感じているのなら、今が手放すタイミングでしょう。
さて、では理想の母親像を手放す5ステップをお伝えします。
ステップ① 理想の母親像を書き出す。
自分の思う理想の母親像、もしくは「母親とは〇〇であるべき」「母親とは〇〇であるべきではない」と思うものを書き出してください。
例えば・・・
母親は穏やかであるべき
母親はイライラすべきではない
母親は子どもの言うことをよく聞くべき
などなど
ステップ② ①で書き出したものを、反対にする。
①で書き出したものを、以下のように反対にして書いてみてください。
母親は〇〇であるべき → 母親は〇〇でなくてもよい
母親は〇〇であるべきではない → 母親は〇〇であってもよい
例えば
母親は穏やかであるべき → 母親は穏やかでなくてもよい
母親はイライラすべきではない → 母親はイライラしてもよい
母親は子どもの言うことをよく聞くべき → 母親は子どもの言うことをよく聞かなくてもよい
ステップ③ ②の反対にすることで出てくる想いを書き出す。
②を書いたものを眺めながら出てくる想いを書き出してください。
例えば、母親はイライラしてもよい としたときに、こんな想いが出てくるかもしれません。
「イライラなんてしていいはずない」
「イライラして怒鳴ったら子どもが傷ついてかわいそう」
「イライラしたら人間関係が崩れる」
キレイに文章にしなくてもかまいません。出てくる想いをそのまま書き出してみましょう。
ステップ④ 想いとともに出てくる感情や感覚をそのまま感じる。
③で書き出した想いとともに出てくる感情や感覚を否定せずにありのまま感じてください。
「イライラして怒鳴ったら子どもが傷ついてかわいそう」という想いとともに悲しみの感情が出てくるなら、幼少期に親にイライラして怒鳴られて傷ついた経験があるのかもしれません。
そんな経験が思い浮かんだら、その時の自分の気持ちもそのまま受け止めてあげましょう。
幼いころの傷ついた気持ちをそのまま受け止めてあげることで、インナーチャイルドが癒されてくるかもしれません。
ステップ⑤ ②の反対の要素があっても幸せかも、と想像してみる。
②で出てきた反対の要素があっても、いやむしろあるからこそ、家族仲良く幸せな可能性もあるかもしれない、と想像してみてみましょう。
例えば、イライラしてもよい、と心から認められていれば、イライラしてもすぐ切り替えられるかもしれない。
子どもの言うことも、聞きたければ聞く、聞きたくないときは聞かなくてよい、としていれば、却ってストレスがたまらず、安定していられるのかもしれない。
などなど。
あくまで軽い感じで、いろんな観点から可能性を探ってみてください。
深刻になりすぎず、気楽な感じでやってみてください。
うまくいけば④でインナーチャイルドが癒され、⑤で理想の母親像がゆるんで手放しやすくなってくるでしょう。
理想の母親像を手放し、ありのままの自分へ
ステップ①→⑤をやってみていかがでしたでしょうか。
理想の母親像はすぐには手放せるものではないかもしれません。
理想の母親になろうとして力んでる自分を見つけたら、そのたびにステップをやってみることをおすすめします。
理想の母親像が徐々に手放せるようになって、ありのままの自分が母親でいいんだ、と思えるようになってくるでしょう。
するといつの間にか余計な力が抜け、自然体で子育てしている自分に気づくかもしれません。
また、自分の理想を手放すことで、人に理想を押し付けることも少なくなってくる可能性もあります。
理想の子ども、理想の夫、理想のママ友・・・
自分の理想を手放し、ありのままの自分を受け入れることは、ありのままの他者を受け入れることとつながっているのです。
他の何者でもなく、ありのままの自分で、自分らしく幸せに生きること。
そういう母親に育てられた子どもは、やはりありのままの自分で幸せに生きることが当たり前になるのかもしれません。
お読みいただきありがとうございました。