大きな地殻変動があった中原生代。
多様化を支える環境が整いつつある中、地球上に生息している生命もそれに呼応するかのように新たな段階を迎えました。
有性生殖の発生です。
これによって生命は大きく進化、発展していくことになります。
無性生殖
生殖とは、自分の遺伝子を未来に残すために子孫を残すことです。
そして、この生殖には有性生殖と無性生殖という2つのタイプがあります。
無性生殖とは、1つの個体が単独で(他の個体と遺伝子のやり取りをすること無く)新しい個体を形成する方法です。つまり、親の体の一部が分離して、そのまま新しい個体になるということです。
そのため、新しい個体は親の遺伝子をすべてそのまま受け継いでおり、親と全く同じ形質(生物の持つ性質や特徴)を示します。
これはある意味、その生物にとってはリスクの高い繁殖法になります。
というのも、それぞれが全く同じ形質をもつということは環境が変化すると全滅する可能性があるからです。
特に、地球環境の変化が激しかったこの時代においては、常に全滅の危機と隣り合わせだったといっても過言ではないかもしれません。
無性生殖の種類
無性生殖には、分裂、出芽、胞子生殖、栄養生殖があります。
分裂は、体が2つ以上に分裂することで増える方法です。分裂をする生物には、ミドリムシやイソギンチャクなどがいます。
出芽は、新しい個体が親の個体に小さな形で形成され。次第に大きくなって分裂していく方法です。 出芽をする生物には、ヒドラやサンゴなどがいます。
胞子生殖は、キノコのように胞子をとばして繁殖をする方法です。胞子生殖をする生物には、菌類やコケ、シダ類などがいます。
栄養生殖は、植物の根や茎などの一部から、新しい個体が作られる方法です。栄養生殖をする生物には、じゃがいもなどがいます。
有性生殖
無性生殖が1つの個体が単独で(他の個体と遺伝子のやり取りをすること無く)新しい個体を形成するのに対し、有性生殖は2つの個体が協力することで新しい生命を生み出します。
多くの動物にはオスとメスが存在しており、それぞれが配偶子と呼ばれる生殖細胞をそれぞれの体内で作ります。ヒトでいうと精子や卵子が配偶子にあたります。この配偶子は、合体(接合)して新しい生命となるのです。
配偶子のタイプ
配偶子には、大きく分けて「同形配偶子」、「異形配偶子」、「卵、精子」という3つのタイプがあります。
同形配偶子とは、性質は異なるものの大きさや形が同じ配偶子のことを言います。同形配偶子を持つものには、クラミドモナス、アオミドロ、ヒトエグサなどがあります。
異形配偶子とは、性質にもその大きさや形にも違いがみられる配偶子のことを言います。異形配偶子をもつものには、カワリミズカビなどがあります。
卵、精子は、異形配偶子がさらに異なる形になったものを言います。
また、配偶子には、運動性を持つものと持たないものがあります。
運動性を持つ配偶子を動性配偶子、運動性を持たない配偶子を不動性配偶子と呼びます。
動性配偶子の例としては、精子や花粉(厳密には花粉管内の精核あるいはその前身の精細胞)があり、不動性配偶子の例としては、卵があります。
有性生殖のタイプ
有性生殖には、接合、受精、単為生殖といった3つの種類があります。
接合は、配偶子同士が合体することです。そのうち、精子と卵の合体を受精といいます。
単為生殖というのは、本来であれば接合によって新しい個体を作るはずの生物が接合することなく新しい個体を作ることを言います。単為生殖をする生物としては、セイヨウタンポポやミジンコ、ハチ、ハダニなどがいます。
有性生殖の特徴
このような有性生殖によってできる新たな生命の特徴としては、父親と母親といったような2つの生命体の遺伝子を受け継ぐため、種としての形質以外、両親とは異なった形質を持ちます。
そのため、多様な子どもができることになります。
たとえば、ヒトの場合、親の細胞には22対の常染色体と2本の性染色体、計46本(2n)あります。そのため、配偶子はこの半分の染色体を持つことになります。
つまり、単純に考えると配偶子の種類は、対になっている染色体のどちらを選ぶかで2通り。それを23本について考えると、223 通りの配偶子が形成されることになります。
これを計算すると、8388608通りにもなります。
さらに親は2人いるので、さらにその2乗、およそ 7×1013 通りとなるわけです。
しかし実際には、組み替えという現象もあるためその組み合わせはさらに大きくなってきます。
つまりは、それだけ多様性があるということです。
実際に兄弟姉妹をみてもわかるように同じ両親から生まれたとしてもそれぞれが違った性質をもつことになるわけです。
種という観点から長期的な視点でみてみると、このような多様性のある子孫の存在は環境が変化しても生き残る可能性を高くすることになります。
さらには、より環境に適応したものが生き残ることで、徐々に環境に適応した性質へと変化していく可能性があるのです。
有性生殖の起源
有性生殖は真核生物が誕生してから比較的早い時期に始まったとされています。
これは、有性生殖をおこなうために必要な減数分裂をするためには、真核生物である必要があることに加え、有性生殖を行う種は真核生物のかなり原始的なものから、ヒトに至るまできわめて広い範囲に分布していることから推察されています。
我々ヒトを含む多細胞生物は、多くの時間を2倍体として過ごしています。
ちなみに、2倍体というのは基本の染色体数の2倍の染色体をもっていることをいいます。これが減数分裂によって1倍体である配偶子となり、配偶子同士の接合によって再び2倍体となるわけです。
つまり、ヒトでは卵のみ、精子のみの状態のときだけが1倍体であり、それ以外は2倍体として過ごしていることになります。
ところが、イーストになると話は違ってきます。イ ース トのような単細胞生物の中には、ふだんは1倍体として生活し、環境が悪化すると接合して2倍体となり、その後すぐに減数分裂を行なって1倍体に戻るというような生活をおくっているものもいます。
つまり、生物の種類によって1倍体でいる時間と2倍体でいる時間の比率がちがっているわけです。
そして、原始的な種であるほど1倍体でいる時間の比率が高く、新しい種になるにつれ2倍体でいる割合が大きくなっています。
このことから、有性生殖が始まった初期の段階においては、ほとんどの時間を1倍体で過ごし、2倍体でいる時間は短く過渡的なものであったと考えられています。
現在見つかっている有性生殖を行っていた最古の生物は、紅藻です。
2000年に発表された論文によると、カナダの北極圏にあるサマセット島で、現在のウシケノリとほぼ同じ紅藻が性分化した化石記録が、中原生代と新原生代の境界線付近の地層で見つかったそうです。
つまり、12億年前にはすでに有性生殖が始まっていたということです。
未だどのようにして有性生殖が始まったのか結論は出ていません。
ただ研究者の中には、最古の有性生殖生物である紅藻が細胞核の細胞間移動を特徴として持っていることに注目し、たまたま同一細胞内に2つの細胞核を持ち2倍体となったことから始まったのではないかと考えている人もいます。
まとめ
生命の進化の大きな転換期となる有性生殖について、無性生殖の対比とともにまとめてみました。
無性生殖から有性生殖への進化は、同じゲノムを維持し続ける寿命のない生命の生殖から、ゲノムを多様化する寿命のある生命の生殖への進化ではなくて、突然変異などによっておこる他律的なゲノムの多様化と寿命設定から自律的なゲノムの多様化と寿命設定への進化であるといっている人もいます。
生命だけではなく、社会においても大きな進化のために必要なことは似ているのかもしれません。