ジュラ紀から続く中生代最後の時代、白亜紀。
石灰岩の地層から設定されたこの時代は、隕石の衝突が引き金となって幕を閉じたと考えられています。
隕石の衝突が原因と推察されている大量絶滅は、地球史のうえでは5回目、ペルム紀末の大量絶滅につぐ大規模なものでした。
陸上生物の約50%、海洋生物の約75%、生物全体の約70%が絶滅したとされています。
概要
白亜紀は、今から約1億4500万年前から6500万円前の時代で、生物誕生以降もっとも温暖な気候だったとされています。
「白堊」の「堊」という文字には粘土質な土という意味があります。
つまり、「白堊」は、この時代の地質の特徴である石灰岩を意味しています。
白亜紀を終わらせたとされる隕石の衝突ですが、その痕跡は、メキシコのユカタン半島北部に残っています。
約6604万年前にできたとされるこのクレーターは、チクシュループ・クレーターと呼ばれ、マヤ語で「悪魔のしっぽ」という意味があるそうです。
クレーターの直径は約160kmで、地球上で現在知られているクレーターの中では3番目の大きさになります。
当然、その衝突による衝撃は大きく、衝突したときのエネルギーは広島型原子爆弾の約10億倍と推測されています。
ちなみに、衝突した小惑星の大きさは直径10-15km、衝突速度は約20km/sだと考えられています。
余談になりますが、最大のクレーターはヨハネスブルグの南西120kmにあるフレデフォート・ドーム。
隕石の直径は約190kmで、今から約20億2300万年前の古原生代にできたとされています。
大陸
白亜紀に、今現在みられる大陸の原型ができあがりました。
ほぼすべての大陸が地続きとなってできたパンゲア超大陸は、この時代の前のジュラ紀に北のローラシア大陸と南のゴンドワナ大陸の2つに分かれ、更に白亜紀の終わりにかけて、完全に分裂したのです。
分裂してできたそれぞれの大陸は、その配置自体は現在とは異なるものの、その構成は同じになりました。
ローラシア大陸は、北アメリカとヨーロッパとに分かれて大西洋が広がりました。
そして、ゴンドワナ大陸は、南極大陸、オーストラリア大陸、アフリカ大陸、南アメリカ大陸に分割されたのです。
インドやマダガスカルは,まだアフリカと陸続きでしたが、末期には分裂し、島大陸となっていました。
北アメリカ大陸に食い込むようにして形成されていた浅い海は、石炭層に挟まれて陸地となり、海の堆積物を多く残しました。
気候
この時代は、長期にわたり温暖で湿潤な気候が続きました。
生物の誕生以降、最も温暖な気候だったともいわれています。
前期白亜紀において、一時的な寒冷化がみられたものの、同時期の表層海水温に関する研究では、低緯度地域で32 ℃、中緯度地域で26 ℃と現在より高い海水温で安定していたことがわかっています。
二酸化炭素濃度は現在の4~10倍も高く、植物が繁茂しました。
そのおかげで植物を食べる草食恐竜が増え、草食恐竜をえさとする肉食恐竜も増えたのです。
植物
ジュラ紀までは主流であった原始的な裸子植物(種子植物のうち胚珠がむきだしになったもの)やシダなどは、白亜紀になるとその数を減らしていきました。
裸子植物に代わり、この時代の主流になったのは、被子植物です。
被子植物は、種子植物のうち、一般に花と呼ばれる生殖器官の特殊化が進み、胚珠が心皮にくるまれ子房のなかにおさまったもので、現在では全世界の植物の約9割を占めています。
この時代に被子植物は進化、繁栄し、杉などの針葉樹やイチジク、スズカケノキ、モクレンなどが現在とほぼ同じ形となりました。
この被子植物の繁栄を担ったのが、その受粉方法です。
裸子植物が受粉を風に任せていたのに対し、被子植物は他の動物に花粉を運んでもらうという手法を編み出し、より確実に子孫を残すことに成功したのです。
動物
パンゲア超大陸の分裂が進んだことにより、この時代の陸上動物はさらに多様化を極めることになります。
この時代は、ジュラ紀に続き、恐竜や爬虫類が全盛を極めました。
ただ、その種類はジュラ紀とは変わり、白亜紀後期にはジュラ紀に栄えていたアロサウルス類、ディプロドクス類、ステゴザウルス類などの系統の恐竜は姿を消します。
ちなみに、有名なステゴザウルスですが、1億5500万年前に登場し、1億4900万年前には絶滅したといわれています。
それらに変わって台頭してきたのが、ティラノサウルス、トリケラトプス、プテラノドンなどです。
白亜紀を代表する恐竜 ティラノサウルス
その中でもっとも有名な恐竜といえばティラノサウルスです。
大型の肉食恐竜で、生息していたのは約6850万年前~6550万年前になります。
太くて長い歯、頑丈で大きなアゴを使い、獲物の肉を食いちぎり、噛み砕くように進化していました。
ただ、ティラノサウルスの生態については未だ研究が続いています。
一時期、ティラノサウルスの化石が発見された当初に考えられていた形態とは違い、全身が羽毛に覆われていたのではないかということが言われていました。
というのも、ティラノサウルスの祖先であるディロングやユウティラヌスで羽毛化石が発見されたのです。
しかし、2017年に大型肉食恐竜ティラノサウルス・レックスは鳥類のような羽毛ではなく、爬虫類に見られるうろこに覆われていたとする研究結果が英国王立協会の専門誌Biology Lettersで発表されました。
羽毛を持つ恐竜ディロング
ディロングの化石が発見されたのは、中国の遼寧省(りょうねいしょう)にある義県層(ぎけんそう)。
現在見つかっている羽毛恐竜の化石のほとんどが、同じ義県層で発掘されています。
ディロングの羽毛は現代に生息している鳥類の羽毛とは異なり、中心の軸を欠く単純な糸状の構造でした。
飛行に適した骨格ではないことから、羽は飛ぶためのものではなく、保温のために存在していたと考えられています。
長い首と前肢を持ち、地上で生活する小型の動物を捕らえて食べていたのではないかと推測されています。
隕石衝突により起こった生物大量絶滅
全盛を誇った恐竜ですが、6550万年前の白亜紀末におこった大量絶滅によって姿を消すことになります。
大量絶滅は、陸上だけではなく、温度変化が起こりにくい海洋にまで及んでいたことから、単なる環境変動が原因ではないのではないかと考えられていました。
そして、1980年になって絶滅の原因として隕石衝突がクローズアップされてきたのです。
現時点ではこの仮説が広く支持されていますが、なぜ大量絶滅に至ったかについては未だ議論が続いています。
しかし、2014年に発表された研究によって、その議論の決着に光明がさしてきました。
宇宙速度での衝突蒸発・ガス分析実験の結果から、以前に想定されていた二酸化硫黄ではなく、硫酸になりやすい三酸化硫黄が隕石衝突によって放出されたことが分かったのです。
つまり、隕石衝突による三酸化硫黄の放出によって、衝突から数日以内に地球全体に酸性雨が降り注ぎ、深刻な海洋酸性化が起こったことが推測されるのです。
まとめ
中生代最後の時代である白亜紀についてまとめてみました。
当時、全盛を誇っていた恐竜も隕石衝突という予期せぬ一瞬の出来事によって絶滅に至ります。
とはいっても、この大量絶滅があったからこそ、これを境に、次の時代になると地上では哺乳類が、海洋では魚類が次の時代の主役を担うべく、進化するようになったのです。
これも何か大きく変化するために必要なプロセスだったのかもしれません。