はじめに
「終活」という言葉とともに、終活を支えるものとして定着している「エンディングノート」の誕生は、2003年頃だったといわれています。それから15年以上が経過した現在では、様々なタイプのエンディングノートが書店や文具店に並ぶようになりました。
このノートの便利な点は、終活の準備に必要な内容が一冊にほどよくまとめられていることでしょう。その内容は、資産に関するものから、亡くなった時に連絡してほしい友人等の連絡先、自分の人生における印象的な出来事まで多岐にわたります。この膨大な情報を書込み式で、1ページずつ進めていくような形態になっています。
エンディングノートの記入を進める人の中には、「終活の概要をつかめて、今後のウォーミングアップにつながった」という声も聞こえてくるほどですから、何から手をつけたらいいのかわからない…という人にとってエンディングノートは、終活を始める人の指南書であり、良き伴走者となるのかもしれません。
数多く市販されているエンディングノートから、自分にあったノートを選び、記入を進めることで、これまでの人生を棚卸しするとともに、今後の人生に役立つエンディングノートの活用法を発見してみてはいかがでしょうか。
最近では、終活は早く始めるほどいいといわれており、20代からノートの作成を始める人や、毎年ノートを見直して内容を更新する30代、40代の方もいるほどです。
幅広いノートの有用性を実感しながら、自分らしい終活の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
1、メリットとデメリット、注意点
エンディングノートは、自分の「もしも…」の際に必要な情報を書き記しておくノートです。「自分の人生の歩み」、「終末期医療の意思表示」、「葬儀・お墓・供養」等に関する希望や、残していく家族、身近な人々へのメッセージ等を記入していくようなものになります。
選んだエンディングノートによって、内容は多岐にわたりますが、ノートを書き進めるメリットとしては、次の3点が考えられるでしょう。
①いざという時に必要な情報がまとまっていて家族の負担軽減になる。
②自分や家族の歩みを振り返られる。
③普段は話せないようなメッセージも伝えられるので、残された家族の悲しみを癒す効果につながる。
エンディングノートの作成を行うと、おざなりになりがちな資産情報を確認する必要が出てくるので、「資産情報」の把握に役立ちます。そして、「自分に関すること」や、「終末期に関する要望の整理」を行うことになるので、嫌でも自分自身の心に向き合わざるを得ない場面が出てきます。
向き合うことは大変なのでデメリットに見えるかもしれませんが、「自分の歩みを振り返ることで、忘れかけていた大切なことを思い出した。そして、新たな発見があった」など、多くの経験者から「取り組んでよかった」との声が聞こえており、メリットの方が大きいといえます。終活の準備に必要な内容がコンパクトにまとめられているので、やってみると意外とすいすい進む人が多いのも事実です。
しかし、気をつけなければならないことがあります。それは、遺言書とは異なり、エンディングノートには法的拘束力がないという点です。
家族や親族の精神面において一定の効力は期待できそうですが、強制力が必要なものについては別途作成が必要になりますので、ご注意ください。
元気なうちからノートや書面の存在を家族に知らせて、緊急事態に備えておきましょう。
2、自分の性格に合ったノートを選びましょう!
現在、市販されているエンディングノートは多岐にわたり、色々な出版社から発売されていることから、その内容やデザインの幅は急増しています。実際に書店で手に取っても、どれにしようか迷ったという人も多いようです。
ここでは、自分に合った一冊を選ぶポイントを紹介していきたいと思います。
(1)目的と自分の関心を定める
数の多さから「どれでもいいや」となってしまうかもしれませんが、それではいけません。目的が明確だとノートを仕上げる気力も続きます。いろいろ見比べて、書きたい内容とボリュームで検討をしてみるといいでしょう。
(2)自分の性格を考える
大雑把な人には、記入欄にゆとりがあり、シンプルなものがおすすめです。几帳面で完璧主義な方は、書きたいことがより具体的に落とし込まれているものを選ぶとよいでしょう。
(3)用紙の質もチェック
直接書き込む形になりますので、紙質や筆記具の検討も大切です。自分が書きやすいと感じる質やサイズのものを選ぶと良いでしょう。「エンディングノートを購入したが、そのままなにもしてないです」という人も多いので、自分に合った一冊を選んで、納得のいくエンディングノートを仕上げていくといいでしょう。
3、ノートは何度も書き直してOK!
「自分の想いの整理やメッセージづくりに、予想以上に時間がかかった」これは、エンディングノートを実際に書いたことがある人の感想です。
苦労の一因は、いきなり書き出そうとすることにあります。そこで活躍するのが付箋です。「書きたい要素を付箋に書き出す。→並べ換えるなどして、よく吟味する。→文章に仕上げる。」この3ステップで仕上げていくと思考の整理にも役立ちます。
加えて、思い出の整理でおすすめなのが「ベスト10方式」です。「いままで楽しかったこと&つらかったことベスト10」、「自分の心を育ててくれた本&映画ベスト10」といった具合に、ひとことコメントを添えてまとめておきます。作業をするあなた自身も、これを読む人も楽しくなることでしょう。
エンディングノートは何度書き直しても構いません。書き足した用紙を貼り付けることも可能ですし、パソコンの得意な方は別冊版をつくるのもよいでしょう。大切なのは、ノートづくりのプロセスを自分なりに楽しむことなのです。
(1)時間をかけて書いていこう
エンディングノートに締め切りはありません。また、決まりもありませんので焦らずにリラックスして、じっくりと取り組んでいきましょう。
そして、どこの項目から記入しても構いません。はじめのページから順番に書く必要はないので、書きたいページから書いてみましょう。お好みの音楽でも聴きながら書き進めていくと気分が上がって、楽しいと思います。
(2)緊急時に必要なことから書き始める
どこから書いても問題はありませんが、「持病・既住症・常用薬の詳細」「貴重品の保管場所」「加入保険の情報整理」「親族・友人知人の連絡先の整理」などは、優先順位を高めに設定して進めましょう。
(3)手書きがおすすめ
パソコンだと保存先がわからなくなったり、操作ミスで消去してしまったり、緊急時に電源が入らず、内容確認ができないことがあります。気が向いたときにさっとかける手書きがおすすめです。
(4)記入内容の変更もOK
エンディングノートは何度書き直してもOK。記入内容を更新できるよう鉛筆書きで始めてもいでしょう。訂正箇所には日付の記入も忘れずに。記入欄がなくなったときは、別紙に書いて貼り付けておくとよいでしょう。付箋も便利です。
(5)保管場所には注意も必要
「資産情報」なども重要な個人情報もあるため、ノートの保管先や共有する相手の設定には十分な注意が必要です。
このような状況を踏まえ、最近は、用途に応じて分冊タイプのエンディングノートも出始めているので、探してみてはいかがでしょう。
4、個性を出せる「自分史作成」の魅力
エンディングノートは、“自分史作成”として、自分がこの世に生まれてからこれまでのことを、主な出来事や当時のエピソードとともに振り返るツールでもあります。
今まで精一杯生きてきた人生の歩みを振り返ることで、
「自分自身との対話を深めるきっかけになった」
「記憶を掘り起こす作業を通して、家族とのコミュニケーションが深まった」
「自分の人生を客観的に振り返ることができた」
「やり残したこと、やりたいことが見つかった」
「感謝の気持ちがわいてきた」
など、自分史づくりに取り組んだ経験のある方は誰もが「いいことづくめ」だと話します。
「自分史」に決まったスタイルはありません。ノートに手書き記入して仕上げる方、パソコンでまとめた文章を冊子や書籍に仕上げる方など様々です。写真とコメントでアルバム風の編集物にするなど、好みに合わせて仕上げてみましょう。「自分史」の作成方法には、自分自身の個性を発揮できることが最大の魅力でもあります。ここでは「自分史作成」のポイントを紹介していきましょう。
(1)時系列で表をつくる
縦軸に「時間(年月)」、横軸に「主な出来事」「エピソード」の欄を設定。パソコンを使える方は、エクセルや専用ソフトの活用もおすすめです。
(2)エピソードには当時の想いも添える
「県大会で準優勝。甲子園ならず。ショックのあまり翌日寝込む」など、思い出せる範囲で構いません。
(3)家族に関する情報も加える
横軸に「家族」の項目を追加して、家族の変化に関する主な出来事を記入。個々の出来事の関連性に気づくなど、歩んできた道のりが絵巻物のように見えてきます。
(4)世の中の変化に関する情報を添える
横軸に「話題になった事件やニュース」「当時の流行りもの情報」といった項目を追加すると、時代の流れのなかで自分の人生を俯瞰できます。読みものとしても面白いものになります。
最後に
エンディングノートが示す「終わり」というのは、その人の“死”を連想させます。そのためエンディングノートを“死の際に準備するモノ”と定義している人もいるかと思いますが、実際にはそれだけではありません。
エンディングノートは、自分自身に「もしも…」のことがあった場合、遺族へのメッセージや遺族に残しておくべきことを書き記しておくノートになります。記載する内容は明確に示されているわけではないので、日々のことを記録しておくことも可能です。
日々のことを記録するというと日記をイメージする人も多いかと思いますが、日記帳をエンディングノートとして活用している人もいます。重要なことは自分で見返すことで、大切なことに気がつくようになるというメリットです。
もちろん、後々遺族が困らないように何らかの番号やパスワードなどの情報を記しておいたり、死後はどうして欲しいかという希望を残したりという一般に知られている活用法も重要になりますが、直接伝えることが恥ずかしい感謝の気持ちや激励の言葉などを、遺族が見返すことができる形で残しておくことができるのがエンディングノートの魅力でしょう。
自分しか知らない情報などをしっかりと記入して、残された遺族の助けとなるノート作成を通して、家族への思いをきちんと残す活動から、終活をスタートしてみてはいかがでしょうか。