時代が流れるにつれて、私たちの生活は豊かに便利になってきています。しかし、生活を送るために必要となる公共料金の値上げや物価の高騰は私たちにとって悩みのタネになっているのではないでしょうか。
物を購入するにも、食事をするにも、乗り物に乗るにも、すべての行動にお金は必要不可欠な要素として存在しています。
つきつめると、お金が幸福のバロメーターとなり、豊かな生活の指標のように思われている傾向はないでしょうか。実は、このような考え方が定着することは恐ろしい側面を持っている場合があります。
経験したことのある方もいるかもしれませんが、「お金ができるといい気になり、反対になくなると寂しくなって失望感を味わう」という点です。すなわち私たちの心の中は「お金のあるなしで、心が揺れ動いてしまう日常生活の考え方」になっているということなのです。
どこかの時点でこうした考え方を転換しなければ、お金に恵まれた生活を送ることができないばかりか、欲望のために、人生の正しい判断を見誤ってしまう可能性があることを意識しておかなければならないでしょう。
さらに、お金に困る人、執着の強い人は、お金の本当の性質を知らないために、お金に振り回されている可能性があります。その現象は、私たちの周囲で起こる様々なトラブルと関連性があるという見方や考え方ができます。
例えば「お金が無くなっていた」との現象が起こるとしましょう。お金は使えばなくなるものですから、何かを購入したから、お財布からなくなったと考えるのが普通かもしれません。しかし、当事者はどこで使ったのか見当もつきません。
すると、次は「気にしない人」と「気になって仕方ない人」に分かれていきます。前者であれば、気に留めることなく、さっぱりと過ごすことでしょう。しかし、後者の場合どんどんと心が不安定になっていきます。そうした不安は、更なる不安要素や現象まで引き寄せてしまいます。
ほんの一例を取り上げましたが、人の心と金銭との間には、何か不思議な繋がりがあるように思えます。使う人の心次第で金銭は増えたり、減ったりする構造には、私たちの心の動きが大きく影響を及ぼし、明るい生活になったり、暗い生活になったりする傾向があるのでしょう。
今回は、物を活かすことをテーマに掲げました。なかでもお金を取り上げて、その本質と活かし方についてについて考えてみたいと思います。
1、お金の本質
本質とは「そのものの特徴」のことをいいます。さらに、それ抜きでは、その存在が考えられないことを指しています。さて、「お金の本質」について考えるとき、どういったことを意識すれば良いのでしょうか。
そもそも、お金そのものに値打ちがあるわけではありません。お金によって現存する物質と交換することができるところにお金の価値があるのでしょう。そして、お金によって大体のことが決着するところに、お金を大切にしようとする心が出てきたと考えられるのではないでしょうか。
しかし、私たちは本当にお金を大切にしているでしょうか。自分自身を見つめ直すきっかけとして、お金の本質について考えを深めてみましょう。
1)お金は大切にされれば喜ぶ
生き物は何に限らず大切にされ、可愛がられると喜ぶものです。さらに可愛がってくれる人には、よくなつき、恩返しをしてくれます。お金も生き物同様に、大切に可愛がることが大切です。これまでの私生活を振り返りながら、お金とどのように生活してきたか振り返ってみましょう。
・お札の向きを揃えずに財布に投げ込む
・面倒で、つい小銭はポケットに入れてしまう
・少額になると確認もせずに財布にしまう
・部屋のいたるところに小銭が転がっている 等々
上記は極端な例かもしれませんが、お金を扱っている場面を思い返すと、案外、粗末な扱いをしている瞬間があるかもしれません。もしそうであっても、思い悩む必要はありません。その想いに至った時から、お金を大切にしていけば良いのです。
しかし、思っただけでは不十分です。きちんと行動に起こして、お金と仲良くなれるような生活を始めましょう。
2)お金は妥協を好まない
金銭関係の問題を妥協してはいけません。妥協することは、自分の主張をごまかすことになります。そして、自分の予想と反したことになることから、自然と暗い感情に支配されていきます。さらに、お金にまつわる妥協は、これまでにない現象を引き寄せる可能性も秘めているものですから、いかなる時も妥協することは避けたいものです。
日常生活においては、請求すべきものを遠慮して言わなかったり、集金に行かなかったりする場面があるかもしれません。また、本心では貸したくないにも関わらず、自分の本心を曲げてお金を貸してしまうこともあるでしょう。
このような安易な妥協は、結果的に自分自身が苦しむことになります。人間関係が悪くなってしまったり、自分の生活が不安定になったりと、様々な形で現象化してくるので、慎重に検討し、妥協のない選択を行っていく必要があるでしょう。
3)お金は流通する性質をもっている
空気や水が他の空間に流れるように、お金にも広く世間に流通する性質を持っています。そのため、なるべく早い段階で流していくことが求められます。
貯金をすることは結構なことですが、目的もなくお金を溜め込む人も少なくありません。タンスの奥や、本棚の隅に自分の秘密の場所を作り、お金をしまいこむようなことをしては、お金を死蔵しているといっていいでしょう。
人間もジッとさせられていることほど辛いことはありません。お金も同じで、そのものの性質や特性を無視して、しまいこんでしまうことは、活躍できる場所を奪い取り、お金を殺してしまうことになりかねません。
やみくもにお金を溜め込むのではなく、目的のある貯蓄を行い、その他は出来る限り前向きな意識で使って行くとよいでしょう。
2、お金の正しい使い方
お金の本質を確認したところで浮かび上がってくるのは「では、どうすればいいのか」という日常生活上での、取り扱い方についての疑問です。
お金は、私たちのように意見を述べたりしてくれません。ですから、お金の本質を参考にして、具体化していく必要があります。これから紹介する3点は、ほんの一部です。参考までに活用してみてはいかがでしょうか。
1)大きい、小さいに関係なく大切に扱う
私たちは日頃から、大金ほど喜び、小銭は粗末にしてしまいがちではないでしょうか。古くから「一銭を笑うものは一銭に泣く」と言われます。わずかなお金だからといって軽視する人は、そのわずかな金額に困ることになるという諺で、たとえわずかな金銭でも軽んじてはいけないという戒めとして使われています。
現在では「一円を笑うものは一円に泣く」との言葉で、我々は意識していることと思いますが、私たちは本当に一円硬貨を大切に活用できているでしょうか。
たかが一円と思う人もいるでしょうが、一円が足らなければ電車に乗ることもできなければ、食事もできないことになります。また◯万円との大きなお金であっても、それは一円の集積であります。つまり、一円無くして万はない、ということを忘れてはいけないのです。
1円も10円のお金も、大金と同じように大切に扱うことに意識を改め、必要な時は思い切って使い、不要なことには1円も無駄に使わないような生活をしてみてはいかがでしょうか。
2)金銭の請求をハキハキする
お金の本質でも触れましたが、お金は妥協を好みません。なかでも商売をしている方々にとって、取るべきお金を請求することは、当然と言えるでしょう。
しかし、色々な想いからついつい金銭の請求を遠慮してしまったり、金銭の貸借や連帯保証等、危ないと思いながら、印鑑を押してしまうことがないでしょうか。こうした妥協をしてしまうことは、自分のみならず相手の首も締めてしまうことになってしまいます。
普段の生活においても「自分の思うことをはっきりと言う」、「人の喜ばないことでも、言うべきことはあっさりと気軽にいう」といったことは、自分にとっても相手にとっても必要なことです。
反対に気兼ねや遠慮をすることは、結果的に相手を困らせてしまうことになることを覚えておくといいでしょう。すると、生活に区切りをつけることになり、物事がひとつずつ、着実に進む現象が現れてきます。
3)金銭の出し入れは、あっさりとズバリとする
必要があって出すお金は、惜しげも無くサッと出すことです。お金に未練を持って出すことは、本当に出したことにはなりません。「あとを引く」との言葉がありますが、いつもまでも決まりがつかずに心が残っていて、出てはいっても出ていないようにさえ感じられることです。
このような状態であっては、お金を活かして使っていることにはなりません。払うべきお金は一刻も早く、あっさりと支払う。大胆に、そして喜んで支払うことです。こうした心持ちがお金を活かすことに繋がり、お金を働かせることになることを意識しておけると良いでしょう。
3、豊かな生活を送るために
お金の本質を知り、正しい活用方法ができるようになるということは、生活の基盤を確立することに繋がります。しかし、お金を扱うときの心境がどのように働いたかという点を疎かにすると、豊かな生活には決して繋がってきません。
ここでは、お金を活用するときに意識する心の働かせ方をとりあげます。
1)感謝する心
私たちは、定期的・継続的に支払われる労働に対する対価、お金をどのように受け取っているでしょうか。どんなに少ない収入であったとしても、一ヶ月の汗水垂らして懸命に働いて手にした結晶が給与です。
大切に使わせていただくという感謝の心で受け取り、神仏に供え、親祖先に報告するなどの感謝する心を形に表すことは決して、大げさではありません。
同時に、会社の得意先やお客様のおかげであることを意識しておきましょう。
2)家庭を楽しむ
現在共働きの家庭も増えています。しかし、中には夫または妻の片方が仕事に出かけ、もう一方が家庭を守るとの形態で生活している家もあるでしょう。
一ヶ月に一度入る収入を感謝して受け入れるところに、家庭の繁栄があります。少ない収入であったとしても、これでやると決心すれば、やれる工夫も自然と生まれてくることでしょう。そして、お金を生かして使う知恵も湧いてくるものです。喜んで働いている夫婦の家庭を楽しむ姿が、家を明るく照らしていくことでしょう。
3)夫婦円満が鍵
お金に恵まれるひとつに、“働き方”があります。喜んで、進んで、かげひなたなく働き続ける姿が結果として、給与に結びつきます。その働きの源は、夫婦円満の家庭にあります。その繋がりには、外に出て働く人を尊ぶ心と、帰ってきた家人を感謝の心で迎える心とが互いに交流することで、豊かな家庭を築きあげていくと意識していくことが大切になることでしょう。
最後に
経済生活を送っている私たちにとって、1日たりとも離れることが出来ないものが、お金というパートナーではないでしょうか。日常生活において、物品購入、外食費、乗車費用等々、全てにおいてお金が必要な日常です。
しかし、意識をお金にばかり取られていると、自分ではなくお金に人生の主役の座が奪われてしまうことを忘れてはなりません。
もしお金に主役の座を奪われてしまうと、お金が幸福のバロメーターとなり、豊かな生活の指標のようになってしまうので、目の前の大切な幸せをみすみす逃してしまうことになります。もしこうした考え方を持っているのであれば、それは危険信号です。
なぜならば、お金ができていればいい気になり、無くなれば失望するといったように、お金次第で、目の前の幸せとは関係なく不幸になる生活だからです。
人生はいろいろとあります。お金がなくなり窮地に立つこともあるでしょう。そういった時の力は「お金」ではなく、「人」であり、「つながり」であり、「希望」なのです。
今回を良い機会と捉え、日常的に携わるお金とのより良い距離感を掴みつつ、互いにより良い関係を築いていってはいかがでしょうか。