人前で過剰に緊張しないためには

就職面接、仕事での説明・発表や結婚式のスピーチなど、人前に出る場面を迎えた際、緊張感を感じるのはごく自然なことです。

事前に思ったように振る舞えなかったことは誰しも経験があると思います。

しかし過剰に緊張してしまうことが続くようであれば、せっかくの機会を活かせないばかりか、自己否定感を強めてしまうことにもなりかねません。

人前で過剰に緊張しないためにはどうすればよいでしょうか?

緊張って何?

緊張って何?

そもそも緊張とは何でしょうか?

緊張(tension)は「気分が張りつめて、ゆるみのないこと。気を張り、からだをかたくすること」です。

人間を含め生き物には、危険から身を守るために、不安や恐怖を感じる本能が備わっています。

そして危険を回避するためには「戦う」「逃げる」「助けを求める」などの行動を起こす必要があります。

そのため心身の状態を「危機管理モード」にすることが緊張状態とも言えるでしょう。

現在の生活では生死に直結する場面はあまりないかもしれません。
しかし人前に立つ場面は「自我」が危険にさらされた状態だと認識し、同じような心身の反応が起こるのです。

緊張時の体の状態とメカニズム

緊張時の体の状態とメカニズム

人前に立つなど緊張する場面に遭遇した時、不安や恐れなどの感情が生まれます。
そして心・感情の状態に合わせて体も反応します。

汗をかいたり、胸がドキドキしたり、食欲が無くなったり。

この身体反応は自律神経の働きによるものです。

自律神経とは、自分で意識しなくても生命を維持できるように体を調整してくれる神経のことです。

腕や足の筋肉は意識することによって動かしますが、心臓や胃などの体の器官は意識しなくとも、運動、食事、睡眠など自身状況の変化に応じて自動的に制御できるようになっています。
これが自律神経の働きです。

自律神経には交感神経と副交感神経があります。
正常に機能している場合、この二つは、どちらか一方が優位なときは、もう一方は抑止される特徴があります。

この記事の目次

交感神経

交感神経が優位になる目的は「獲得と回避」です。

「獲得(戦う)」は生命を維持するのに必要な食物を得るための行動で一方の「回避」は敵から逃れる行動になります。

交感神経が優位な状態となる闘争や逃走時には「心臓の鼓動や呼吸が早くなる」「血圧が上昇する」などの生理現象が現れ、その状態のときは胃腸などの消化吸収器官の働きは抑制されるという特徴が見られます。

闘争や逃走時に起こるこれらの現象は、脳や筋肉に大量の血液を送り込み、十分な酸素とエネルギーを供給するために必要不可欠な現象で、興奮した状態で活動し、身体機能をフルに稼働させる「危機管理モード」と言えるものです

副交感神経

一方、副交感神経の目的(役割)は「修復と再生」や「保全」という働きを示し、呼吸や心臓の鼓動、血液やリンパの循環が安定し、胃腸などの消化吸収器官の働きが活発な状態を示します。

副交感神経が優位な状態は、食物(栄養)を消化吸収したり、それを分解し合成する作業が行われ、物質をエネルギーに変換して全身の細胞に行き渡らせ、細胞の修復・再生が行われます。
「修復と再生」や「保全」に起こるこれらの現象は、身体を休ませる「リラックスモード」と言えるものです。

緊張した時は不安や恐れなどの感情に反応して交感神経が大きく働いているのです。

なぜ過剰に緊張してしうのか

なぜ過剰に緊張してしうのか

不安や恐怖を感じることは自然なことです。
危険から身を守るためには備わった必要な機能とも言えるでしょう。

しかし過剰に緊張してしまうのであれば、どういった原因が考えられるでしょうか。

人前でのトラウマ体験

人前で過剰に緊張してしまう人の多くは、人前での恥ずかしい、嫌な体験を持っています。

例えば「小学生の時に授業中に教科書の音読を当てられたが、上手くできずみんなに笑われた。」といった出来事です。

その過去の体験がトラウマとなり、いざ人前に立つと過去の体験を無意識の内に想起してしまい、「またあんなことが起こったらどうしよう・・」と不安や恐怖が生まれるのです。

自己肯定感が低い

「自分は大丈夫」「自分は人から応援されている。」「(親などから)自分は守られている」といった感覚(自己肯定感)が強ければ強いほど、そもそも人前に立つことを恐れることは少なくなるでしょう。
また失敗したとしても、トラウマになりにくい。

しかし逆に自己肯定感が低いと、人前に立った時に「人からバカにされるかもしれない」といった思いが浮かびやすいため、その場面を自我の危険として捉えやすくなります。
そのため過剰な「危機管理モード」に入りやすく、また思うようにいかなかった時、失敗した時にも落ち込みやすく、トラウマになりやすくなります。

バーストラウマが強い

バーストラウマとは胎児期から生後3 ヶ月くらいまでの満たされなかった欲求と傷ついた経験によって形成されるもので、出生時には万人が持つものとされるものです。

同じ体験、境遇であってトラウマになりやすいかそうでないか、また自己肯定感が低くなりやすいかどうかは、バーストラウマの強さにもよります。

バーストラウマが強ければ強いほど、漠然とした不安感を頂きやすく、同じつらい出来事を体験したとしても傷つきやすくなってしまいます。

慣れの少なさ

慣れない場面では不安や恐怖が大きくなりがちです。
しかし慣れてくると特になんとも感じなくなるものもあります。

多くの人にとって車の運転はそうでしょう。
最初は慣れずに緊張したとしても、場数を踏み慣れてくると「車を運転する」場面に特段緊張しなくなります。

人・場面によっては場数をいくら踏んだとしても、どうしても慣れないものもあるでしょうが、慣れは大きな要素です。

緊張を和らげるには

緊張を和らげるには

事前準備を入念にする

可能であればその場所を事前に下見する、話す内容がある程度決まってきれば、話す内容を事前にキチン整理する、出来ればリハーサルをする。
また友人に頼んでロールプレイング練習を行い、相手役となった友人に向けて話しをしてみるのは非常に効果的です。

相手役の友人に感想や向上に向けたアドバイスも得られるとなお良いでしょう。

なかなか実行が難しい場合もありますが、特に慣れない場面であれば事前準備をしっかりやっておくことが緊張を和らげることにつながります。

呼吸を深くゆったりしたものにする

緊張時は交感神経が働いて呼吸が早く浅くなりがちです。

そこで逆に意識的に呼吸をゆったり深くすることによって、感情を安定させることで、副交感神経が優位な「リラックスモード」に入りやすくすることができます。

呼吸には大きく胸式呼吸と腹式呼吸があります。

・胸式呼吸 胸郭の肋骨(ろっこつ)についている肋間筋(ろっかんきん)によって行われる呼吸。
ラジオ体操の深呼吸のように肋骨を大きく広げて息を吸う方法。

・腹式呼吸 体の内部の横隔膜を動かし、お腹をへこませたり膨らませたりしながらゆっくり息をは居たり吸ったりする方法。

緊張時は胸式呼吸になりがちなため、敢えて意図的に腹式呼吸で深くゆったりしたものにすると、リラックスしやすくなります。

姿勢に意識を向ける

緊張は無意識の内に姿勢に現れることもあります。
普段よりも猫背になったり、身体が縮こまっていたり。

無意識に出る体の反応(姿勢)に気付くことは大事です。
緊張による姿勢のゆがみを認識することで、「自分はこんなに緊張しているのだ。」と我に返り、不安に飲み込まれた状態から外れやすくなります。

更に姿勢を正したり、軽いストレッチなどで体を緩ませることによって、不安感や恐怖が軽減されやすくなります。

コンディションを整える

人前に立つ前は、準備などで忙しくなって睡眠時間が短くなったり、不安のために眠れなかったり、眠れても睡眠が浅かったりすることもあると思います。

睡眠時間を削ってでも準備を万全にするのか、身体のコンディションを整えるために早めに寝るのか選択を迫られ、結局睡眠時間を削ることもあるでしょう。
しかしコンディションが悪ければ、精神・感情的にも安定しにくく、緊張も生まれやすい。

当然のことではありますが、忙しい時に後回しにされがちな「コンディションを整える」ことを敢えて意図しておくことも重要です。

過去の失敗・つらい体験の囚われをゆるめる

忘れられない人前での恥ずかしい体験、嫌な体験。
これがトラウマとなって人前で過剰に緊張するケースは非常に多い。

もしキッカケとなった体験が明確であれば、それを言葉にしてみる、誰かに話しをしてちゃんと受け止めてもらうのも有効です。
ある程度、精神・感情的に安定感のある友人にしっかり時間を作ってもらうのも良いですし、信頼できるカウンセラーなどに依頼をして対応してもらうのもいいでしょう。

またキッカケとなった原体験が不明だったり、もやもやしてよく分からない時は、無意識下にその記憶があることもあります。
それは思い出すことも嫌な出来事だったり、記憶そのものが定かでない小さい頃の記憶であることが考えられます。

この場合はご本人で扱うことができないため、第三者の専門家の力を借りた方が良いでしょう。
トラウマ軽減やトラウマ解消に関するスキル・経験をもった人に相談することも非常に有効です。

まとめ

まとめ

人前で感じる不安・恐怖は自然なものですが、過剰になると人前に出ることをつい避けてしまうようになり、結果的に社会生活が困難になるケースもあります。

ご自身が持っている能力を発揮しにくくなり、社会的な評価を得にくくなることもあるでしょう。

年齢を重ねっていっても、大きな要因となったトラウマ体験の影響力は変わらないため、いくつになっても過剰に緊張してしまうクセが続くことも多い。

もしお悩みに方がいれば一人で抱え込まず、是非友人や専門家の力も借りて、道を切り開いていけるといいですね。

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この記事を書いた人

アダルトチルドレン回復研究所 代表

高校1年の時、親子関係に悩みすぎて病気になり、胃の3分の2を摘出。その後小さな胃で生きる。
会社勤め(通信会社の営業、CSRコンサル)、病院勤務(心療内科の心理カウンセラー)を経て研究所を設立。
アダルトチルドレンからの回復に関する研究・啓発。カウンセリング、トラウマ解消ヒーリングの提供などを行なう。


HP:https://ac-recovery-lab.com

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