はじめに
人の一生は、長くもあり短くもあります。本人の感じ方によって如何様にも捉えることができますが、客観的に眺めてみれば、医学の発展により、適切な検診や治療を受ければ延ばせるようになってきたと捉えることができるでしょう。
しかし、人間の寿命は運命で定められているものだというような説もあり、“寿命”について確実なものは存在していないようです。
東洋医学でも「運命は生まれながら定まっている」と主張する説と、「努力によって人の運命は改善される」とする説が対立しているようです。2000年以上にわたり延々と論争が繰り返されているそうですが、未だ結論が出ていないのが現状です。
長生きをしたいと願い、努力をしても叶わない人もいます。しかし、もうダメだと思っても、奇跡的に一命を留める人もいます。つまり、現時点では“寿命”に関する説明はできないのです。だからこそ“人生は永い”と表すことができ、自分が死んだ後に思いを馳せられる側面があるのではないでしょうか。
すると、「死」は恐れるものではないと考えられ、ひとつの通過点に過ぎないと捉えることができるでしょう。ともすると、今を精一杯に生きる意味が見えてくるのではないでしょうか。
というものの、精一杯生きているつもりでも、生きている期間には色々なことが起こり、良くなったり悪くなったりと、浮き沈みの多い日常を感じるのも人生と片付けてしまっては、少々もったいなく感じます。
どちらかといえば、自分の望むような人生を送りたいと願っている人が多く、成功者になりたいと感じていることでしょう。では、その成功者の共通点には何があるのでしょう。
それは、色々な出来事に対して、前向きに対処していく人ということが浮かんできますが、一番は“原点”に繋がることを忘れないことなのです。
様々な出来事をチャンスに原点にかえり、元に繋がる生活をして、自分の能力を高め、個性を発揮して真の成功を掴み、生を全うして歩んでいくからこそ、目標を達成し、成功をつかむことになったと考えられます。
今回のテーマは“原点”に焦点をあてて進めていきます。現在抱えている様々な問題を解消するキッカケを掴むとともに、更なる飛躍に役立つ内容として活用してみてはいかがでしょう。
1、原点を知る
“原点”という言葉を改めて調べてみると、その問題の根源をなすととらえられる要素のことを“原点”としています。「その問題の根源…」としているところには、物事を成り立たせている一番の大本のことをいいますので、仕事やスポーツなどに置き換えると、そのものの“基礎”にあたるところを掴むことが大切です。
また、仕事やスポーツ等に限らず、何にでも原点はあります。原点にあたる“基礎”をしっかりと身につけることが、本当の実力を養うことになります。基礎的なことは、地味で飽きやすいかもしれません。しかし、建築物に例えれば、構造物の本体を載せて支えるために、下部に定置するものを“基礎”と呼称するように、しっかりしていなければ、少しの地震にもぐらついて崩れてしまうことが連想されます。つまり、重要な“もの”なのです。
また、新しい発想や閃きにもしっかりとした基礎知識を学んでおくことが大切です。そのためにも“基礎理論”をじっくり学んでいけば少しずつ世の中の現象の道理が見えてくることにつながります。
少しでも多く、深く理論を勉強し、その理論について考えてみてはいかがでしょうか。すると、努力をすることの結果として、新しい理論提案に至るかもしれません。または、様々な理論を駆使した新たな発想に至るかもしれないでしょう。
2、創業の精神
事業を起こす際にも、仕事をする際においても、初めてことを起こす時に感じたことや、心に誓ったことがあることでしょう。そうした、創業精神を忘れてしまっては、現在の事業や仕事に支障が現れてしまうものです。
永きにわたり継承されてきた事業においては、“創業精神”を忘れることなく貫き通されてきたからこそ、継承されてきたのでしょう。しかし、変わらないものがあるという反面、変えていかなくては継続することができなかった中には、その時々で“やり方”や“方法”を時勢に合わせなければ、周囲から取り残され衰退をしてしまったことがあるのではないでしょうか。
「創業の精神」を大切にすることは、多くの人が認識していることでしょうが、形のないもの、目に見えないもの、人の中にあるというようなものは、ことごとく理解することが難しいものです。さらに、難しいことこそ大切なものが多く、大切なことほど、易しい言葉に変えていく必要があります。
目に見えないことを言語化する難しさは「企業理念」を作成する時に現れてきます。そして、言語の選び方には細心の注意を払う必要があります。なぜなら、その言葉の中に、その企業のトップの思いや哲学が全く感じられなければ、対外的にも、対内的な社員の心に響くことがない“意味のない言葉”に成り下がってしまい、作成の意味すらなくなってしまいます。
そもそも、何を社会に提供し、何を大事にして仕事をするのかを考えずに会社を興す人は少ないでしょうし、継続していくことは難しいと考えられることから「創業の精神」というものは必ず存在していると推察できます。では、どこに存在しているのでしょう。それは、創設者の“心の中”にあるのです。
創設者がどのような気持ちで、その事業を始めたのか、どのような理念を持って継続してきたのかということは、頭や心の中に刻まれ、体に染み付いたものですから、いつになっても忘れることはなく、記憶されているものです。
規模の小さい会社であれば、創設者や社長から直接感じることもできますし、その想いを吸収することもできるでしょう。すると、とってつけたような他社のモノマネ理念を打ち立てることなく、元々から存在している「創業の精神」を溶け込ませた「企業理念」を創り上げることが可能となります。
創業時の精神である“原点”を失ってしまっては、別の企業体になってしまいかねません。ついつい忘れてしまったり、横道に逸れそうになったりしたときこそ、注意して進めていかねければなりません。
事業や団体でも「創立記念日」を実施したり、「周年行事」を開催したりしています。こうした行事は、権威を示すために開催するのではありません。区切りとなる時に「創業精神」を思い起こし、創立当時の燃えるような気持ちに立ち返るとともに、その時の苦労を自負し、お世話になった方々への“感謝”を忘れないために開催されるものです。
こうした行事は、国でいえば、「建国記念日」であり、会社でいえば「創立記念日」であり、個人でいえば「誕生日」になります。自分の誕生に、生命の源である親祖先を思い出し、その恩を偲び、今日あることに感謝することが大切になるのです。
3、1日の創業
長い年月を積み重ね、弛まぬ努力と知恵を蓄積させたところに、企業や地域の発展があります。振り返って考えてみると「ここまでよくやってこれたものだ」と、省みることもあるでしょう。しかし、このような振り返りができるのは、地道な積み重ねがあったからこそ出てくる言葉として受け止めることができます。
長い年月を積み重ねる元のモトはどこにあるのでしょう。企業や地域ということを考えれば、創業時の志や地域の歴史に端を発していることは一目瞭然のことといえるでしょう。では、私たちの元はどこにあるのでしょうか。
私たちの生命の元は、生まれた時にスタートされ、現在も積み重ねられています。ただ、この積み重ねは、自分の意思で積み重ねられたものかと問われると疑問が残るものではないでしょうか。
周囲からの影響や、環境によって、勝手に積み上げる経験は、自分の意思とは関係なく勝手に積み上げられていきます。もちろん、生まれたばかりの赤ん坊や幼児、さらに成長を重ねた児童の期間においては、周囲からの影響や環境から経験値を伸ばしていくことは重要なことです。しかし、“自分”という意思を持ち始めた時に、幼い時のままでは、些か心配になります。
「自分の意思を持って行動する」ということは簡単なことのようですが、実際のところ、とても難しいことのようにも感じられます。自分の描いたように物事が進むようであれば問題はないかもしれませんが、問題のない人生は無いと言い切れるように、日常においてそうした問題は次から次に発生してしまいます。
では、そのような日常の問題と向き合いながら、人生を謳歌していくにはどうしたらいいのでしょう。それが“今日1日”のスタートにあるのです。
日常をおろそかにしていると、積み重なって人生もおろそかになります。ですから、全ての原点が日常にあるといってもいいでしょう。
例えば、私たちは朝起きて夜眠るまで、家族や近所の人、仕事関係者や趣味やサークルの人たちなど、たくさんの人に出会います。そうした出会いを大切に、一人一人と如何に真剣に、心を込めて向き合うかが大切なことは誰もが感じていることでしょう。
相手に敬意を払う。礼儀をわきまえる。思いやりの言葉をかけていく。そういったささやかな心がけが、やがて自分自身の財産になっていきます。しかし、こうした心を発揮できないのはどうしてなのでしょうか。色々なことが考えられますが、ひとつとして“朝の迎え方”に問題の一端があるのではないでしょうか。
1日を24時間という区切りを持って考える時に、1日の始めは“朝起き”から始まります。朝起きがスムーズにいかないと、1日全ての調子が乱れてしまいます。目が覚めたらサッと起き、サッと顔を洗い、サッと挨拶を交わし、1日のスタートを切ることで、朝の清々しさとともに、澄み切った。張り切った心を持つことができます。
こうしたことを実現させるには、夜更かしを止め、用事が終わったら、サッと布団に入り休むことです。いつまでもテレビや携帯電話を見て、雑談に更けっていれば翌朝のスタートが乱れてしまいます。
昔から「早寝早起きは健康のモト」といわれるように、肉体の健康だけでなく、精神的にも、家庭的にも、事業商売も健全になっていくモトが“ここ”にあります。自分の心を磨き、積み重ねていくスタートとしての“朝起き”に挑戦してはどうでしょう。
最後に
成功者や目的達成者の共通点として“原点”に繋がることを忘れることなく行動しているからだということを前提に進めてきましたが、自分自身のこれまでの生活や仕事を振り返って考える時に、物事の解決や打開策の案となるきっかけを掴んだ瞬間には、原点に立ち返る瞬間があったのではないでしょうか。
また、個人が集合した企業体においても同じようなことがいえます。企業内の事業を、“既存事業”と“新規事業”の2種類に分けて考えてみると、この2つの事業体は異なるプロセスを持ち、目指している方向も異なります。
既存事業においては、改善に改善を重ねて効率化を進めていくことに対して、新規事業は、経営資源を将来の成長事業に投資し、新たな市場を創ることになります。つまり、目指す方向やプロセスが異なる二つの事業は“対立関係”にあります。
そして、“対立”している事業体を切り離して統治しようとする動きは、企業体においては少ないことかもしれませんが、切り離すことで失われるものが多いことに気づくべきなのです。それは、互いが互いの良さを知り、活かすことで練磨され、新たな発想と閃きが両者に生まれてくるという点です。
対立関係にあるもの同士は、協調しようとすることはしない可能性もあります。しかし、両者の共通点がひとつあるのです、それが“原点”です。何かしら問題が派生した時こそ、あらためて“原点”に立ち返り、目標を省みてはいかがでしょう。すると、これまでにない視野が開けるだけでなく、新たな発想の源泉となることでしょう。