現代は、悩み多き時代と言えるでしょう。自分自身を省みる能力を持つ人で、何も悩みを待たないという人は、いないといっても過言ではありません。
社会的な悩みを挙げれば、物価の上昇や交通被害、騒音や煤煙などに悩まされる人もいることでしょう。また、個人的な悩みを取り上げてみると「心を許せる友人がいない」、「勉強がうまくできない」、「仕事がうまくできない」等の悩みごとがあります。
“社会的な悩み”と“個人的な悩み”について考えを深めてみると、「①社会的悩み=受身的、日常生活的悩み」と「②個人的悩み=主体的、自分自身の自我に関わる悩み」というように置き換える事ができるでしょう。
分類した悩みに共通していえることは、これまでの人生経験によって、悩みの深度が違うことがわかります。さらに、個々人の成長度合いによっても、抱える悩みの質が変化していきます。
時間の経過と共に変化する悩みを解消するには、とても険しい道のりを歩まなければならないと考えられるかもしれませんが、実はそうでもありません。考え方・捉え方の転換を行うことで、悩みごとは「飛躍への踏み台」へと変わり、自分自身をさらに輝かせるための指標へと変化させることが可能となります。
今回は、自分が、なんらかの点で他人より劣っていると思い込む(悩む)ことでおこる感情の反応…“劣等感”に注目して展開していきます。
劣等感とは、過去に周囲から「低い評価」を受け、その苦しみに耐えられなくなり、自分自身もその評価に賛同することで作られます。つまり「どうせ私は〇〇だよ」と認めた瞬間に、劣等感が完成するということになります。
また、劣等感とは「あなたに言われなくても、自分が◯◯なのは分かっている」という、外部からの攻撃に対する自己防衛機能とも言えるでしょう。
こうした「劣等感の塊」が作られてしまうメカニズムを知り、回避する事が、劣等感の改善や克服につながります。
1、劣等感には“3種類”あることを知ることから始めましょう。
劣等感は大きく分けて3種類あることを知っておくことが必要です。その種類は「攻撃、自慢話、不幸アピール」となります。残念ながら、劣等感を持つ人のほとんどは、日々の言動に劣等感が現れていることに気づいていません。
しかし、私たちの言動を客観的に見ている他の人には、劣等感が確実に伝わっていきます。結果的に他の人は、私たちに「低い評価」を下すことになり、劣等感をますます強めるという負のスパイラルに入っていきます。
これらのことから、まずは「3種類の劣等感」を知り、自分自身の言動にそれらが顔を出していないか自覚することが大切です。
1)攻撃性の劣等感
攻撃性の劣等感を持っている場合、高い評価を受ける人に対して、妬みや嫉みを持ち、それが批判的な言動として表面化します。
例えば、お金持ちに対して「悪いことをしているに違いない」と一方的に批判したり、成功者の転落劇を見て「ザマーミロ!」と蔑んだりしてしまうタイプがこれに該当します。
攻撃性の劣等感が強くなると、評価してくれない人や、社会に対して刃を向けるようになり、犯罪につながるケースもあるので注意しなくてはなりません。
2)自慢話による劣等感
自慢話ばかりする劣等感は「優越コンプレックス」ともいわれ、劣等感を隠すために表れる態度です。
例えば、貧乏という劣等感を隠すために、自分の知識をひけらかせる人。仕事で評価されない劣等感を隠すために、高学歴を自慢する人などがそうです。
自慢や優越感は「劣等感の裏返し」だということです。本当に自信や実績があれば、決して自慢や優越感をだすことはないでしょう。
3)不幸アピールによる劣等感
劣等感を打ち明けることで「自分は全然気にしていない」と思わせることや、または慰めて欲しい気持ちを表す人をみたことはありませんか。これが“不幸アピール”です。要は、自分自身を不幸にすることで劣等感を解消しようとしている様ですが、これは他の人にとって「ありがた迷惑」で不愉快なものです。
人間には、「ミラーニューロン」という神経細胞があり、目にした情報が、自分自身に起こったかのように錯覚してしまうメカニズムを持っています。
そのため、他の人はネガティブな情報(不幸アピール)に不快感を持ち、あなたを避けるようになります。また、不幸ばかり起こる人が高い評価をされるわけがなく、ますます劣等感が強くなることでしょう。
2、劣等感は、克服することができる
私たちが住む世界には、「完全なるプラス」も「完全なるマイナス」も存在していません。全ての物事には、「プラスとマイナス」「光と闇」「陰と陽」というような両面をもって存在しています。
例えば、大金持ちの家に生まれ、何不自由なく生きている人がいるとしましょう。一見すると、とても羨ましい運命に恵まれた人だと思うかもしれません。
しかし、何もしなくても衣食住が保証されて、面倒ごとは全て他の人がやってくれる環境にいては、努力することを知らず、自分自身を高める機会がないために、少しの困難でも生きる力を失いがちです。
また、周囲からは「親のおかげで生きてられる」や「何もできないバカ息子」などと陰口を言われている2世や3世の多くが悩んでいることでしょう。
「隣の芝は青い」と言いますが、私たちは他の人に関しては「プラスな側面ばかり」を見て羨む傾向が非常に高いです。しかし、自分自身のことになると「マイナスな側面」を見て劣等感を持つことがとても高いのです。
どのような場面においても「“与えられたもの”と“与えられなかったもの”」の両面をもって生きているということですから、光と闇のどちらに焦点を合わせるかで、人生の味わい方は変化してくると考えられます。
劣等感は「マイナスな側面ばかり」を見た結果の産物です。劣等感が強い状態は、「全ての物事には光と闇がある」ということを理解し、焦点を改めることから克服への道が開かれていくのです。
1)劣等感の自覚
劣等感を克服・解消するためには「劣等感の原因」を自覚することから始めます。例えば、「身長が低い」という劣等感があるとします。この劣等感に対して、「だから…」という言葉を付け加えて、原因を掘り下げていきましょう。すると、「身長が低い。だから…他の人から見下されて、自信が持てない」というような見方をすることができるかもしれません。
こうした見方をするのであれば、「他の人から見下されて、自信が持てない」というところに原因があります。この原因を解消するために“実行可能な解決策”を考えていくことが大切です。
今回の場合だと、見下されないような“知識”をつけることや、“武術”を習うことで身体的な磨きをかける等と考えることができます。つまり、“原因”に焦点を当てて考えを深めることができるので、これまで思いもつかなかったことに気がつきやすくなります。
「だから…」を使った考え方を身につけ、自分自身が抱えている劣等感の原因を自覚することからはじめてみてはいかがでしょうか。
2)自己受容を高める
劣等感は「他の人との比較」から作られます。そのため、劣等感とは、社会(共同体)のなかで生きる私たちにとって、切っても切り離せないものなのかもしれません。
その、劣等感を根本的に解消するためには、誰かのために尽くした働きをすることで解消するという構造にあるともいえます。つまり「社会貢献」をすることが劣等感の具体的な対策となるといえるのです。
繰り返しになりますが、劣等感は「他の人(社会)との比較」で発生するものですから、自分自身が地域社会に貢献している実感を得ることによって「自己受容」を高め、自己価値を認識しやすくすることにつながります。
劣等感は、一人ではなかなか克服することが難しいものです。さらに、自分の心の中に閉じこもってしまえば、劣等感はさらに強化されてしまうことから「地域社会とのつながり」を大切にすることで、自己評価を高めていくことができるのです。
3、最後に
考え方・捉え方の転換を行うことで、悩みごとは「飛躍への踏み台」へと変わり、自分自身をさらに輝かせるための指標へと変化させることが可能となります。
劣等感という「自分は他の人よりも劣っている」という思い込みが、自分自身の持っている優れた個性を閉じ込め、枯らしてしまいます。さらに劣等感が増幅することによって、自分自身の魅力を無くすだけでなく、良心までもが崩壊してしまう可能性があります。
他の人の悪口や批判をする人を、私たちは悪人のように捉えがちですが、日常では誠実に生きている“ごく普通の人々”が大半でしょう。そうした方々も違った場面では、人に優しく、家族を支え、真面目に生きている「魅力的な側面」を持っています。
問題となるのは、劣等感による「自分はつまらない人間だから、このままでいい」というような開き直りや恨みです。これが、自分自身のみならず周囲にいる人たちの「魅力」を奪い取ることにもなってしまうことです。
だからこそ、「“与えられたもの”と“与えられなかったもの”」の両面で生きているという感覚を持ち、光と闇の両面で生きていることを理解して、プラスの側面に焦点を合わせて、行動していくことがとても大切になってくるのです。
考え方・捉え方を変化させつつ生活を送ることは、劣等感と上手に付き合っていくのみか、自分自身を成長させてくれる「飛躍への踏み台」となり、私たちをさらに成長させてくれることでしょう。