人の一生は人間の力ではどうにもできない、運命は全て決まっているという考え方があります。もしそうであるなら、人の努力は全て否定されてしまうでしょう。そうなるとどんなに練習しても、努力しても無駄なことだと考えて「どうせダメなんだ」というニヒリズムに繋がってしまいます。すると、夢も希望も、生きがいさえもなくなってしまうことでしょう。
今回注目する「運命」は、何処かの誰かに決定してもらうものではないということをテーマにしました。幸不幸は自分自身で切り拓くことができるということを感じていただければと思います。
もし自分自身が今、不遇な境遇にあると感じているのであれば、本日を転換期として心を転換してみてはいかがでしょう。
全てのスタート地点は、何事も受け入れることから始まります。現象化した物事を主体的に捉え、心を整えて“運命を切り拓く3ステップ”を踏みながら次の段階へと進んでいかれることを願っています。
1運命と宿命
一般的に「運命観」ということを取り上げると、世界では様々な見方や考え方があるようです。例えば「人生諸般の出来事は、人間の力を超えた大きな力によって引き起こされ、人はその力に支配されている」とする思いは、多くの人々の心中に根付いています。失敗した時「なんて運が悪いんだ」と嘆くのも、運命決定論者に影響を受けていると言ってよいでしょう。
姓名判断や四柱推命のような気学を全面的に否定しようというのではありません。大自然の中に存在している人間は、人の力を超えたさまざまなパワーやエネルギーの影響を多分に受けていることは否めないからです。また手相や人相にしてもその道の達人にかかれば、多くの情報を掴みとり、事実を言い当てることが不可能ではないことも言えるからです。
しかし、将来の全てが決まっていると思い込んだり、占い師があたかも全てお見通しであるように宣伝するのは度がすぎているのではないでしょうか。
運命決定論者に支配されてしまうと、人間は怠惰で無気力な動物と化してしまします。それは「もうとっくに決まっているのだから仕方がない」と自らの努力を放棄してしまうからです。
「自分は運命決定論者などではない!」という人でも、何かうまくいかないことがあると、すぐに他者のせいにしたり、場所のせいにしたり、時期のせいにしてしまえば、運命決定論者と変わらない捉え方となってしまします。
では、知らず知らずに蝕まれた私たちの心は、どうしたら次のステップに進めるのでしょうか。それには冒頭にも示したように“現象化した物事を主体的に捉え、心を整える”ことが最初の大切なステップになります。心を整える意味でもまずは「宿命」と「運命」の定義を捉えておきましょう。
1−1宿命
【宿命】…本人の意思や欲求にかかわりなく、置かれた環境や状況に逆らうことが出来ないものととらえられる定め。
その物事の存在を認めようとする以上は、構造上避けることが不可能だととらえられる欠点や弱点。
(『新明解国語辞典第6版』)
宿命という文字から「宿す命」と読むことができます。どうあがいても仕方のないことがあります。それが宿命と言えるでしょう。
自分の意思で、生れた国、民族、性別、両親を選ぶことはできません。また死を避けることもできません。生まれながらに宿っているものですから変えることができないのです。
1−2運命
【運命】…その人にとってそのことが以後の人生を左右する上で決定的な役割を果たしたこととらえられるものであることを表す。
(『新明解国語辞典第6版』)
文中にある“その人にとってそのことが…”の“そのこと”が、今後の人生を左右していく。つまり変わっていくのです。運命との文字が「運ぶ命」と読むことができるように「運」という文字には、動き、移り、巡り、変わるとの意味が込められています。これからどのようにもめぐり変わっていくものであり、変えることができるのが“運命”なのです。
以上のことから「宿命」と「運命」は異なるものと捉えることができます。参考までにポイントとして抜き出しておくことにしましょう。
【宿命】は「宿る命」。生まれる前に決まる。変えることができない。避けることができないもの
【運命】は「運ぶ命」。生まれた後に決まる。変えることができる。避けることができるもの
二つの言葉の違いを捉えることが出来たなら、私の人生は「今ここ」にいる私が作るものとして受け止めていただけるでしょう。運命は決められているものではありません。今ここにいる私たちが作り上げていくものと意識して、行動してみてはいかがでしょうか。
2運命を切り拓くステップ
“志のあるところに道は拓ける”との言葉は、数多くの書籍に登場する文章です。理解していてもなかなか前向きな心を作りだすことは難しいものです。ならばまずは行動を起こしてみてはいかがでしょう。
例えば「仕事がない」と嘆き、悶々としているだけであれば何も変わりません。であれば家の前を掃除したり、ゴミ拾いをするといった行動を起こしてみてはいかがでしょう。すると私たちの心には、変化がやってきます。その変化を見逃さずに次の手を打っていくことが環境を変える起点となるのです。
また、苦しい出来事に「仕方がない」と嘆くのではなく、違う見方を考えてみませんか。“仕方”は命の数だけあります。今は辛い境遇にある人も悲観的にならずに「何かできることがあるのではないか」と可能性を探ってみてはいかがでしょう。
もしかすると、小さいことと感じるかもしれません。それでも何かひとつ動いてみましょう。そうした日々の積み重ねが“運”を運び、境遇を変え、うねりとなり、奇跡と呼ばれるような現象を引き寄せるのです。
是非ひとりひとりがそうした“奇跡”を掴み取っていただきたいのです。以下「運命を切り拓くステップ」を記していきます。現在の自分に何が足りないのかがわかるので、今後の指標の一つとして活用して見てはいかがでしょうか。
2−1決意を固める
自分のとるべき行動、態度などをはっきりさせ、その通りに実行しようと決めること。困難や反対があっても、最後までやり抜こう、または絶対にしないという心を持つことです。
そのためにも具体的で明確なビジョンを持つことが大切となります。イメージを鮮明にさせ、白黒セピアのような映像ではなくカラー映像のような明確なイメージを描き、心を整えましょう。
2−2チャンスを掴む
チャンスを掴む人は世間に溢れる情報をそのまま鵜呑みにはしません。先に記した“決意”を固めた人間にこそ明確に掴み取ることができるのです。物事を始める理由や根拠が明確になっているからこそ、色々な可能性を感じて手を伸ばすことができるものです。
目の前の出来事や情報について考えられる人が、チャンスを逃さずチャンスを掴む人となるのです。もし掴むことに苦戦しているのであれば、決意が弱いのかもしれません。いかなる状況においても揺るがない心の強さを、しっかりと磨いておきたいものです。
2−3貫き通す
最初の考えや態度を変えることなく最後まで持ち続けることをいいます。よく耳にする言葉として「信念を貫き通す」という言葉があります。これは勝手気ままを通す“我儘”とは意味合いが違います。
我儘とは、いわゆる「自己中心的」である状態をさします。周囲の人々や相手のことを考えず、自分だけが良ければいいと考え、なんでも自分の思い通りにならなければ気が済まないということですから、意味が全く違うのです。
「運命を切り拓く3ステップ」の段階は「①決意を固める→②チャンスを掴む→③貫き通す」の3ステップです。しかし段階を踏まえてもうまく物事が進まないケースもあるようです。そうした現象が起こるのは、行動とともに心の強さと方向性が関係しています。
私たちの心の状態は変動しやすいものです。それが自分の勝手気ままのためにのみに設定されていると、奇跡のような物事は訪れないので確認してみるといいでしょう。
最後に
運命を自分の力で招こうとしても「今ここ」にある自分と、その境遇を否定していては、臨んでいることは実現しません。まず全てを受け入れる姿勢に立ってこそ、運命を切り拓く力は発揮されていきます。
そして今自分がおそれている場所に意識を向けることです。私たちは常に場所を変えながら生活し、業務に精励しています。しかしその場その場での立ち位置はどうでしょうか。
個人として、家庭人として、職場人として、地域人として、その時と場合によって立ち位置が違うように、明確な位置を意識して参画しなくては、物事はちぐはぐになってしまいます。しっかりと位置確認を行い、焦らず着実な一歩を踏み出せば確実に運命は拓けてくるのです。
運命は誰かに決められたものではありません。今ここにいる私たちが創り、引き寄せる現象だということを念頭に置いて、3ステップを踏んで行かれてみてはいかがでしょうか。