わたしは2017年に「せどり(転売)」をやめました。
当時は楽しくて、楽しくて。
ある程度の金額を簡単に稼ぐことができ、自分自身も楽しめていたビジネスの方法の一つだったのです。
しかし、2年半続けてきたせどり(転売)はやめることにしました。
「せどり」を始めた経緯とやめた理由から、わたしが「せどり」を通じて得た経験、失敗、学びを書こうかと思っています。
自分の失敗談をこの場で書くことには抵抗があります。
なんだかとっても恥ずかしいことのように感じてしまうからです。
しかし、経験から得たものを学びとしてより定着化させるためにも書いてみたいと思います。
これからビジネスを始める方、ビジネスで行き詰っている方、自分らしいビジネスをしたい方、そんな方たちのお役に立てれば嬉しいです。
「せどり(転売)」とは?
わたしは2015年の夏から「せどり」というものを始めました。
それまでは副業としてウェブサイトを運営し、主にサイトアフィリエイトでお小遣い稼ぎをしていたのですが、新たに「せどり」というビジネスの考え方に出会ってお試しで始めてみることにしました。
まずは「せどり」をご存知ない方のために「せどり」の仕組みについて簡単に解説をしていきます。
私は正直、「せどり」というものに一時期完全にハマっていました。
その時期はとにかく楽しくてしょうがない!という感じです。
外に出かけたらショッピングセンターや家電量販店へ立ち寄るのが楽しみで仕方なく、家に帰ったらネットショッピングで安い商品を探すのが楽しい。
仕入れとして商品を購入することでクレジットカードのポイントはどんどん貯まり、家電量販店のポイントも貯まって会員ステータスは最高レベルになります。
もともと「商品を安く買う」ということが好きだったわたしは、商品を安く買ってAmazonで高く売る。という「せどり」が非常に楽しくて仕方がありませんでした。
安く仕入れて高く売る
「せどり」は実に簡単なビジネスで、ネットで販売をする小売業です。商売の基本「安く仕入れて高く売る」を実践するだけ。
どんな方法であれ、まずはAmazonで売れそうな商品を安く仕入れます。そしてその商品をAmazonで販売する。という流れのAmazonせどりをしていました。
「Amazonで販売?」と思われるかもしれませんが、Amazonのサイトで商品を販売しているのは実はAmazonだけではありません。セラーと呼ばれる様々な企業、個人がAmazonでは販売をしています。
Amazonの商品ページでは3通りの販売方法があるのが分かると思います。
①この商品は、Amazonが販売、発送します。
②この商品は、●●●が販売し、Amazonが発送します。
③この商品は、●●●が販売、発送します。
●●●にはAmazon以外の企業名や個人名が入っています。
①はAmazonが販売主ですが、それ以外はAmazon以外の人が販売しています。あとは発送するのがAmazonの倉庫から発送されているのか、●●●さんが直接送っているのかの違いです。
わたしが実際に行っていた「Amazonせどり」のビジネスの流れは。
- 安い商品を店舗、ネットで見つける
- クレジットカードで購入する
- 梱包してAmazonの倉庫に商品を送る
- 管理画面で価格を管理する
- Amazonで商品が売れる
- Amazonから売上から手数料を引いた金額が振り込まれる
この流れを繰り返し継続することでより大きなお金の流れを作り出す。というビジネスでした。
「換金性」が高くて速い
「せどり」の大きな魅力の一つは換金性の高さと速さです。
仕入れた商品をAmazonの倉庫に送り、実際に自分の商品がAmazonの販売ページに表示されると、ある一定の基準のランキング以上の商品はあっという間に売り切ってしまいます。
Amazonの倉庫に入れてから1日とかからず、数時間で売り切れる商品もたくさんありました。
実際に商品が売れると半月後くらいには指定の口座にAmazonから「売上から各種手数料を引いた金額」が振り込まれます。(売上の計上は顧客の支払方法、Amazonとの契約プランによって異なります)
そのため、重要になってくるのが自分自身のお金の管理です。売上が順調であればクレジットカードの支払いを待たずにお金がどんどんとAmazonから入ってきます。そのお金を「自分のお金」のように錯覚してしまうのです。
しかし実際にはAmazonからの振込金額がそのまま利益となるのではなく、「売上-手数料-仕入れ原価」を引いた残りが手元に残るお金ですので、勘違いして使ってしまうと、クレジットカードの支払いができない。というとてつもなく痛い目に合ってしまいます。
小売業をしている人にとっては当たり前の考え方ですが、小売りを経験したことがない私には貴重な体験でした。
お金の管理が非常に重要ですが、すぐにお金を作る。という方法としては向いているのかもしれません。
せどりからの学び
やめてしまいましたが、せどりというビジネスを通じて学んだことは山ほどありました。
①インターネット小売業の世界
まずはインターネットの小売販売におけるAmazonの圧倒的なパワーと凄さを実感したことです。
Amazonの倉庫に商品を入れると自分の想定を超える速さで商品が売れていきます。
Amazonと内側から関わることでAmazonのビジネスの仕組みを知り、実態を垣間見ることができました。また、自分自身が仕入れと販売をおこなうことによりインターネット小売業の体系的な流れを体感的に知ることができます。
インターネット小売業の流れの中に自分自身が身を置くことで、Amazonを中心としたインターネットの小売ビジネスの流れの速さを知ることができたのです。
②管理の重要性
インターネットを使った小売業ですので、まずは商品管理ということが非常に重要です。商品自体を大切に扱うことができないとユーザーからの評価が一気に下がってしまいます。
価格管理という面においては、Amazonでは同じ商品であれば、とにかく「安い」価格設定をすることで売れます。しかし安い価格設定は同時に自分自身の首を絞めてしまうことにもなりかねません。「価格」を下げればAmazonで売れるスピードは速まりますが、仕入れ値よりも安い価格で販売することになってしまうと、売れれば売れる程「赤字」が広がるという事態になってしまいます。
そして何よりも重要なのが資金管理です。
先ほども書きましたが、しっかりとした資金管理ができていないと途端に行き詰ってしまいます。特に個人での小売りの場合は自分のお金と事業資金が一緒になってしまうことが多いです。私も個人で日常使っている口座にAmazonからお金が入ってきましたので、自分のお金と売り上げを一緒に捉えてしまっていたこともありました。
③自分でビジネスをするということ
「せどり」はAmazonのシステムを使ったビジネスですが、完全なる自己責任の世界です。
仕入れた商品が売れなければ、Amazonからの入金は無く、クレジットカードの支払いだけが残ってしまいます。
例えば、
全国展開の家電量販店で大規模なセールが開催されていたとします。
Amazonよりも安くて人気のある商品が多数セール商品として出てきたので、これはチャンスと大量に仕入れます。
購入した商品をAmazonの倉庫に送り、管理画面で売れていくのを見守ります。ところが、実際には商品が売れることなくAmazonでの販売価格はどんどんと下がっていきます。
最終的には自分が仕入れた価格よりも低い価格にAmazonの価格が下がってしまった。というようなことが起こります。
これは家電量販店で開催されていたセールに全国の各店舗で同じように「せどり」をする人がセール品を購入し、Amazon上で価格競争が起こって価格崩壊が起こり供給過剰に陥ったという事例です。
これらはすべて誰のせいでもなく、自己責任です。
「せどり」が自分らしく稼げない理由
「せどり」をやめた理由、それはとても簡単な理由でした。
「自分らしく稼げていない」という自分に気付いたのです。
【理由①】他者への依存度が大きい
Amazonを使った「せどり」というビジネスは自己責任ではありますが、Amazonと仕入れ先に大きく依存したビジネスでもあります。
まず、Amazonの規制はどんどんと厳しくなってきました。そのためAmazonで売ることができる商品がどんどんと狭まってきたのです。
また、近年の配送費、人件費の高騰によってAmazonの販売手数料は値上がりし続けています。
結果的に同じ商品を同じように仕入れて売ったとしても利益率は下がってしまいます。
さらに仕入先はいつも同じ商品をセール価格で売っているわけではありません。
私の場合は、家電量販店やネットショップで商品を購入して、販売していましたが安定的に同じ商品を低価格で仕入れることができなくなってきました。
ビジネスを自分自身でコントロールできる範囲がどんどんと狭まっていくような感じです。
売れているときは、Amazonの仕組みに乗っかることで売り上げ、利益も上がってきますが、Amazonに見放されてしまうと一気にビジネスが狭まってしまいます。
【理由②】継続しても身にならない
ビジネスを継続することで自分自身をさらに高めることができる。わたしにとってはそのようなビジネスではありませんでした。
単純作業、同じことの繰り返しと感じたからです。
身についたのは「商品を安く買うための情報力」くらいでしょうか。続ければ続けるほど、自分自身が消耗していくと感じました。
【理由③】資金管理と在庫管理
人気のある商品は本当にあっという間に売り切れてしまいますが、販売者が多い商品、人気の無い商品はAmazonでも確実に売れるわけではありません。さらにAmazonは価格が何よりの優位性です。簡単に価格競争に巻き込まれてしまいます。
FBAというシステムを利用するので、在庫自体は手元になくAmazonの倉庫に送ってしまいますが、手元に無いだけで在庫は倉庫にありますので、数字上の在庫のプレッシャーが重くのしかかってきます。
商品を仕入れて、想定以上の金額で期限までに売り切らないと、次はクレジットカードの支払い期限に間に合わなくなってしまいます。
資金繰りに余裕があればいいですが、高額商品であるほどプレッシャーは大きくなります。
【理由④】苦情を受けるプレッシャー
苦情の種類にもよりますが、商品に関する苦情は販売者が受けるようになっています。
実際には自分自身が製造した商品では無いのですが初期不良など商品に不備があった場合には返品などの対応をする必要があります。
また、私の場合はありませんでしたが商品を購入後、中身を抜き取って返品するというような迷惑行為もあるようです。
【理由⑤】自分らしくない
規制が厳しくなって始めた頃よりも稼ぎにくくなった。
単純作業の繰り返しで面白みを感じなくなった。
というように、ビジネス自体を楽しめなくなってきたという要因がありますが、結果的にはこのようなビジネスは自分らしさとはかけ離れているし、向いていないと考えてやめることにしました。
「せどり」で儲かったのは誰?
私自身は「せどり」が副業として成功したとはとても言えず、お金だけではなく時間の消費まで考えると撤退して成功だったと思っています。
もちろん世の中には「せどり」ビジネスがうまくいっている人もたくさんいるでしょう。
しかし、私が考えるに「せどり」で最も儲かっているのは、次の2者ではないかと思っています。
①Amazon(システム提供者)
仕入れた商品をAmazonで販売するのは無料ではありません。販売手数料がかかります。
当然ながら、Amazonで販売すればするほどAmazonには販売手数料が入ってきます。
Amazonは以前のようなネットの本屋さんではなく、販売する場所を提供するECモールの一つなのです。
Amazonは販売が容易にできる場を提供することでシステム利用料を稼ぐビジネスでもあるのです。
②「せどり」のやり方を売る人
最近では少なくなってきましたが書籍や情報商材、セミナー、コンサル等を通じて「せどりで儲ける方法」を売る人がたくさん出ていました。
自分自身の経験を商材にすることでビジネスにする方法です。
ビジネスモデルとしては
①せどりの始め方を売る
↓
②せどりの利益の出し方を売る
↓
③せどりでより大きく儲ける方法を売る
↓
④儲けたお金をさらに大きくする方法を売る
というように、とめどなくお金が流れていく仕組みを作ることができます。
やめることも選択の一つ
わたしは「せどり」というビジネスをある時点で綺麗にやめることができましたが、人によっては自分で始めたことをなかなかやめられない。手を引くことができない。と思っている人も多いかもしれません。
- 本当はやめたいけれど、儲かっているからもったいない。
- ここまでお金を入れこんだから、いまさら手を引くことができない。
- 他の人もやっているから、自分だけ止める訳にはいかない。
様々な理由があるかもしれませんが、原点に立ち戻ってそのビジネスが
「自分らしいかどうか?」という視点で判断してみるのも一つかもしれません。